第16話シェパードの過去 ダンジョン攻略再開
晃は沙羅を助けに向かい、クランノストラの三天王のひとりである黒のシェパードを見事に撃破したのであった。
ガルブレイン戦士長が「アキラ殿! これまたお手柄をあげてくれたな、俺たち王国の兵士もこいつらクランノストラには手を焼いてたんだ、特にこの黒のシェパードをはじめとした三天王にはずっと手こずらされていたんだ! 本当に助かる、またギルバート陛下から招待が……」
「それはもう満腹なので勘弁してよー、クランノストラの事は知ってたのね」
思わず泣きつく晃でありました。
「ああもちろん知ってるさ、王国やその領地で暗躍する勢力で何度か討伐に向かうが、三天王という、かなりな使い手がいて、なかなか駆逐出来ないでいたところだ。三天王の一人を捕まえてくれてありがとう」
その時、縄に縛られた黒のシェパードが「アキラとやら、次に会うときは必ずやっつけるのですわ、あと私以外の三天王の二人も強いのですわよー! ホーホッホ」脱獄する気満々ですな……。
沙羅が「晃君、もう夜中の2時過ぎよ! 明日学校に遅刻しちゃうわよ!」
「本当だ、テントに戻ってログアウトしなきゃ!」
晃は後処理をガルブレイン兵士長、ルーク、アリシアに任せ、沙羅と二人で砦をあとにした。
夜風を浴びながら、浴衣姿の沙羅さんと2ショットで歩きつつ晃は、
「奴らに拐われた時、不安じゃなかった?」
と沙羅に質問をする。
「晃君が必ず助けるってメールくれてたから、安心していられたわ」
「でもあの女、予想以上に速くて本当は苦戦してしてたんだ……」
「見てれば解るわよ、でも必死で頑張る晃君の気持ちは伝わったわ、ありがとう」
やべ! 赤くなってしまった……夜で良かった。
そしてテントに戻り
「お休みなさい」
「お休みー」
ログアウトした晃と沙羅であった。
翌日、眠たそうな沙羅と教室で挨拶を交わした晃でありました。
授業も終わり自宅マンションで少し仮眠を取ってから遅めのログインをすると……。
ゲーム内時間は、朝というには遅めの昼前の時間である、テントには誰もいなかったので外に出てみると、葵と桜が待っていた「晃君やっと起きたのですわーおはようでございますですわ」と葵が迎えの言葉を掛けてくれる。
桜が「聞いたよ、お師匠大活躍だったでござるな、沙羅姉が喜んでいたでござるよ」
「おはよう! 他のみんなは?」
葵が指差す方向を見やると沙羅とアリシアが剣で打ち合っている。
ルークはその近くの草原に寝転がりアニメの鑑賞中、しかも中身は女子高生日常系の『ぶいある』ですな……。イケメン青年と日常系アニメの組み合わせはなかなか希少かも。
「なんで沙羅とアリシアさん打ち合ってるの?」
「なんでもあっさり敵に気絶させられたのが余程悔しかったみたいですわ、アリシアさんに剣術を教えて欲しいと頼み込んでましたわ」葵が答える。
「なるほど沙羅にも思うところがあったのだな……よし昼食は僕が用意してあげよう」
アイテムBOXから昨日の焼肉の残りのカルビとご飯、鶏ガラスープに卵を使いカルビクッパを作った。
「さあ皆さん昼食できたよー」
待ってましたーとばかりみんな集まってきた。
食事しながらルークがガルブレイン戦士長から聞かされた話をしてくれた。
ダンジョンは王国領土内にあり、王国の国民の収入源でもあり安定した税収を得るためにも今後、入り口に見張りを置き、王国の国民および友好国、ならびにアース大陸、エルフの冒険者以外が侵入するのを取り締まるとのこと。
これで安心して野営できるな……。
また黒のシェパードについても触れてくれたらしい、彼女は王国でも由緒ある貴族でありながら有能な剣士である父に持ち、小さい頃から剣のスパルタ教育を受けて育ったエリート剣士だった。
しかし彼女の父親は、王位継承争いの際にギルバート陛下の弟の側についたため、陛下の継承が決まった際に謀反側として、没落貴族となってしまい、彼女は娼婦宿の雑用係として売られてしまったらしい。
それから彼女は剣の腕前を武器に裏社会のトップ3にまで這い上がりを成し遂げたらしい。
「へぇー! 僕はそんな剣の達人に勝てたんだな、剣術の達人アリシアさんから見てシェパードの剣術どうだった?」
アリシアは「この牛肉雑炊おいしいではないか! ん? あの女の剣術か……たしかに私も剣を60年間毎日振るって鍛えてきたが、いい勝負になりそうなくらいの達人だった! でもアキラはそれに勝ったのだから凄いとしかいいようがないではないか……? なんなら食事後、模擬戦闘してみるか?」
「お願いします」
そんな過程もあり昼食後、アリシアと相対する晃であった。
本来ゲーム内での剣技は技スキルが自動発生する仕組みになっている。
だからこそ晃みたいなこのゲームを始めて2年しか経っていない人間でも達人になれた。
試しに技スキルをオフにしてみた。
今の晃はスピードこそあるが、剣術2年歴のほぼ見習い卒業したくらいのレベルだと改めて思い知らされた。
「アキラー、昨日の素敵な剣さばきはどこに行ってしまったのじゃ? まるで素人じゃない」
アリシアの目のフェイントからの素早い連撃に回避スキルのおかげで回避こそ出来るが全く攻撃が当たる気がしない。簡単に予測されて、跳ね返される。
そりゃそうだ10年以上剣を振るって、技を鍛えてきた達人に追いつくにはやはり同じだけの年月が必要か……。
技スキルをオンにする、晃の剣さばきが明らかに変わり始めアリシアと一進一退の攻防へと変わっていった……。
「お! アキラらしい動きに変わったな、楽しいぞ!」アリシアがうれしそうに剣を振るう。
晃は忘れかけていたことを思い出した。
だからゲームって楽しいんだな、誰でも頑張れば達人になれる。
「よーしここまで! ダンジョン攻略再開だ!」
「おー!」みんなやる気満々だ!
さて地下12回層からスタートだ、例のごとく桜と晃以外は松明に火を灯し岩の洞窟を進んで行く。
沙羅がなんか張り切って先行している、
「おいおい大丈夫か? 僕とアリシアが先行でルークと沙羅達のフォーメーションだったはずだろ」
と声をかける。
「大丈夫よ! アリシアさんに指南を受けて、スキルアップした技を試したいのよ! それにヤバそうな敵が来たら、真っ先に逃げて晃くんの後ろに隠れるわ!」逃げる気も満々なわけね、はは……。
最初に現れたのは単体のゾンビウルフでそんなに強敵ではない。
沙羅がロンギヌスの槍で攻撃を仕掛けるが当然だが相手も避ける、そして噛みつき攻撃をしてくるが、沙羅も巧みなステップでかわす、これがアリシアさんに教わった部分だな……。
「犬系4本足は横からの攻撃に弱いよ!」
そこで沙羅は横にジャンプステップしロンギヌスを見事、ゾンビウルフの横腹に突き刺し致命傷を負わせることに成功した。
「おおお! やるなぁ」桜と葵にとどめを刺すよう指示しながら、感心していると。
「どう? 私もやるでしょふふん」と自慢気なドヤ顔して来た、なかなか可愛いですよ。
「沙羅姉やるでござるな」
「沙羅ちゃんすごいですわ」
桜と葵もうれしそうだ。
その時晃はふと思った、彼女たちはまだまだゲーム初心者でゲーム本来の楽しさを知らないんだったなと、今度もっと初心者でも単独で楽しめる場所で気楽に狩りをさせてあげようかな……。
その横で僕は釣りでもしながら、ゲーム内でのスローライフを満喫するのもいい。
さて調子に乗った沙羅が先々進んで行く、すると前方から沙羅の悲鳴が、走って行くとダンジョンの罠に引っかかった沙羅が逆さ宙吊りに、じっくり鑑賞するまもなく桜に目をふさがれると同時にルークも葵にふさがれたようだ、なんというチームワークさすが双子だな。
アリシアが沙羅を助けたようである。
「調子にのるから罠に引っかかるのですよ、ダンジョンにはこれがあるから気をつけないと、わかりましたか?」
沙羅もしょんぼりと「はいわかりました。晃先生」
ということでこれから先は晃の盗賊スキルの出番のようだ。
盗賊スキルには「遠視」「夜視」「罠発見」「罠解除」「鍵開け」「忍び足」「隠密」「危険察知」などある程度、忍者スキルと重なっているので晃はかなり高いレベルに達していた。
習得職業を増やすとレベルが上がりにくくなる上にスキルレベルも多種多様なため上がりにくくなる特性があるが、晃は忍者、アサシン、盗賊と似たような職業を習得しているので、この方面の第一人者といえる。
罠発見スキルで罠を巧みに見つけ解除して行く。
そして危険察知スキルで、
「天井から何かくる!」
3メートルの高さのダンジョンの天井を1メートル大の黒蜘蛛が3匹カサカサと音を立てて急接近中、
「きゃー! 気持ち悪い! メガフレア!」アリシアさん虫嫌いのようで爆裂魔法を全力でぶっ放した。
またか! 晃もルークも全力疾走で葵の大盾の後ろに避難する。
メガフレアが黒蜘蛛を一瞬のうちに消し炭に変えた後、12回層内を駆け巡り反射して晃達の方に跳ね返って来た。
葵さんの大盾の後ろで皆んな縮こまり爆炎が去るのをただ待つばかりであった。
ふと見るとアリシアも一緒に縮こまっている。
ルークが怖い顔で「アリシアてめえ! 何度やれば学ぶんだ!」
苦笑いを浮かべたアリシアが「……てへぺろ!」
皆さんアニメ用語上達してますな。
さてさて彼らはまだダンジョンのほんの序盤です。これからどんな試練が待ち受けてるのやら……。
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