第15話 和洋剣術対決の行方

クランノストラの三天王のひとり黒のシェパードと対峙する晃であったが、自信のあるスピードに対応して来た初めての相手に戸惑いを隠せないでいた。

「エルフさん達や沙羅を拐ってどうするつもりだったんだ?」と晃が問う。

「そりゃ奴隷として売るに決まってるじゃない! あなた馬鹿なの? 沙羅ってアース大陸の女子のことかしら、彼女も美人だから高く売れそう。貴方達が乗り込んできたおかげで、エルフがさらに2人増えたわ!」晃の頭に血がのぼる。

「俺達3人と戦って勝つつもりか?」

「当たり前じゃない!」なんという自信家、

 こうなりゃ女だからって容赦はしない、全力で攻撃してやる。

晃はすかさず火炎瓶を投擲、彼女が傘を開いて防御している間に、足元に撒びしを撒いていく、忍者ならではの攻撃だ、しかし彼女は、

「ミエミエの手ね! オホホホ、風の精霊よ……」傘を広げたまま風魔法をかけて5メートルはある天井付近まで飛んで行き、そして空中から火魔法であるファイヤーボールをガンガン撃ってきた。

 晃はなんとかかわしていく、すると空中から傘を閉じたシェパードが急降下しながら傘を横殴りに振ってきた。


 晃は突きを予測していたので反応が遅れ、よけられず腕に装備していたオリハルコンの小手でかろうじて防いだ。


 一瞬だが意識が飛びかけた、その隙をつかれシェパードの突きの連打が晃を襲う!


 なんとか急所は外したが3発は浴びてしまった。

ジャンプして離れながら、晃の脳裏には、こいつ強い、しかもさっきの技はなんだ?意識が……。


 とその時、沙羅が「晃くん、彼女の技には人を気絶させる能力あるの、気をつけて!」

スタンスキルか! まともに浴びたらヤバイな。


 そしてすっかり敵を片付けて縛り上げてしまっているルークとアリシアさんが観戦モードになっていた。

「その女、風魔法で空中に浮きながら火魔法のファイヤーボール放ってきたぞ! 二重詠唱出来るみたいだ、気をつけろよ!」ルークが叫ぶと、

アリシアさんがすかさず「なんなら私の精霊であるリヴァイアサンで助太刀するぞー!」

「それはやめて!」

「それはやめろ!」沙羅とルークがハモる。

 こんなにたくさんの人を救うにはちくわが何本必要になるかわからん……、そんな数の在庫は用意してない。


 シェパードが「随分と余裕をかましてくれるのですわね! まとめてかかってきていいのよ」とまた傘を広げ風魔法で空中ホバリングをしながらファイヤーボールを放ってくる。


 ファイヤーボールを避けながら、晃も負けじと弓を構え弓矢を放つが彼女の傘に防がれた。


「ほほほ、飛べないお前達など敵ではありませんわ!」なるほど彼女は飛べることがあの自信につながっているのか……。ならばその鼻をへし折ってやろう。

「出でよ精霊!」光が晃の前に輝き、晃固有の精霊であるグリフォンが現れた。

 そして晃を乗せて飛び上がり空中でホバリングする。


「なにーそんなペットありなの? 聞いてないわ!」焦るシェパードに向けて猛スピードでグリフォンが襲いかかり、晃が妖刀イザナギ改で何度も切りつけて行く、まるでジェット戦闘機対ヘリコプターだ、シェパードはたまらんといった表情で、地上に逃げるように降り立つ。そして活動限界時間が来てグリフォンは消えていった。


「ちょっと焦ったわ、まさかあんたにあんなペットがいたなんて、こうなったら私のスピードと剣術と魔法で勝負のようですわね!」

 じつは精霊召喚はインターバルに時間がかかり、一戦につき一回しか出せない仕様になっていたが、黙ってようっと。


 あとはあのスピードをなんとかしないと……。

 晃はレベルが上がるたびに手に入る強化ポイント10の大部分を回避やスピード項目に振り分けており、プレイヤーの中では最も回避力、スピードに長けており、それが晃の自信の源であった。

 彼女のスピードは晃と互角かそれ以上に感じた、 また2重魔法詠唱とスタンスキルも気になるところである。


 不安に感じながらも、妖刀を構える。

 スピードに対応するためにも二刀流は取らない、二刀流は片手剣になるためどうしてもスピードと正確性に欠けるためである。


 フェンシングのように傘型レイピアを構えたシェパードが踏み込み怒涛の攻撃が始まった、晃も剣術スキルを使いながら、一歩も引かずに打ち合っていたが、やはり速い! 彼女のスピードに押され始める、一旦大ジャンプて後方回避を行い!

「風の精霊よ、疾風の刃を以て殲滅せよ!」

 風魔法の詠唱を行い、かまいたちの刃がシェパードに襲いかかるも、彼女から放たれた風魔法に相殺されてしまう。晃の詠唱時間、いわゆるゲームとしてアイコンをセレクトしてから魔法が発動するタイムを彼女は凌駕してくるのである。すなわち無詠唱に近い速度で魔法を放ってくる。

 それも火魔法、風魔法を混成して攻撃してくるので、かなり押され気味の晃であった。


 ルークが大声で「ははは! アキラ押されてるぞ、交代してやってもいいぞ?」

 沙羅さんまで「晃くーん! 私のロンギヌスの槍の必殺スキルの呪い効果で彼女のスピードを抑えようか?」

 ぐぬぬ……ランカーとして負けてられるか!

 考えるんだ、奴の速さの秘訣を!


 黒のシェパードの猛烈なまでの迅速な突きを、理に適った武術系足捌きでなんとか凌ぎながら、彼女の動きを観察していた晃は、ある違和感に気付いた、彼女の履いている靴がゴスロリドレスに合わせたヒールであることに……。


 甲賀忍者用の足袋を履いている晃に比べて戦闘向きとは言えない、それなのにスケートのように滑るような、まるでホバークラフトのような動きで真っ直ぐ滑って攻撃を仕掛けてくる。


 地面と接地していないのか、ほんの少しだけ浮いている……。


 風魔法を下に向けて射出しているのか、晃も試しに弓矢などを防ぐのに使う風魔法であるウインドウォールを下に向けて唱えてみた。

少しだけ体が浮いた……。


「隙だらけよ!」シェパードの攻撃に吹っ飛ばされながら、なるほど地面を蹴ってから使わないとダメなのか。

 何度か練習しながら自分のものにして行く。

 そして大ジャンプをしながら、MP回復薬を飲んで精霊召喚魔法で消費したMPを回復する。


 ウインドウォールに下半身にまとった晃の動きが明らかに速くなった。

 滑るような動きで、シェパードに攻撃をしかけ、離れぎわに火炎瓶を投げつけて、隙をつくらない。

「くそいまいましいガキね、まさか私のスピードについてくるとは、剣術で正々堂々と勝負しなさい!」とシェパードは言い放ち、傘部分の鞘を抜きなかから、オーラを放つ細身の西洋剣が出てきた。


 それを見た晃は、まさかこれって西洋剣VS和式剣術の対決? とワクワクしてきたのである。

 昔TV企画で剣道の元全国大会覇者とフェンシングの現役全日本代表の戦いをやっていたのを動画ちゃんねるで見たことがあるが、その時は胴にフェンシングの突きが一瞬速く決まり、その直後に竹刀の面が入っていた。


 先に胴が決まったということで、フェンシングの勝ち判定であったが、もし真剣であったら……? と考えずにはいられない。

 またこういう異種交流戦はルールによって結果が左右されやすいのもまた事実である。

 例えば格闘技でキックボクシングルールだと、やはり空手家も他の格闘家もだんだんキックボクシングスタイルの戦い方になって行く。

 なんでもありルールだと、柔術の戦い方を理解した上で戦う格闘家ばかりになる。

 ひとことで剣術と言っても昔の日本の剣術決闘は蹴りや投げ、奇声による威嚇さえも利用していたと云われる、一撃必殺ゆえにいかに相手に隙を作り出すかが勝利につながる……。


 真剣勝負による和洋剣術対決か面白い、

「よし、剣術勝負だ!」


 真正面から向き合う晃とシェパードに、

「晃くん頑張ってー!」

「アキラ頑張れー!」沙羅やエルフさん達の声援が響き渡る。

 かたや「シェパードの姉さんそんなガキに負けるなよー!」と縄に繋がれたクランノストラのメンバー達が叫んでる。


 構えたシェパードに対し、晃は武蔵流自然体の構えをとる、そして予想通り突き込んで来た相手に対し柳生新陰流兵法剣術「斬釘截鉄(ざんていせってつ)」を放つ……。


相手の突きを半身でかわしカウンターの小手を放つ地味な技ではあるが効果覿面、彼女の右腕は使えなくなった。


 シェパードが悔し顔を浮かべながら「やるわねならば私の8連突きをかわせるかしら」

 そして左手に持ち替えた剣ですごい速さの突きが晃を襲って来た、それを下がりながら佐々木小次郎の奥義「燕返し」で跳ねのけ、そして妖刀イザナギ改の必殺スキル20連撃が決まった……。


 ドサリと音を立てて崩れるシェパード……、死んではいない、峰打ちだからだ。


 アリシア、沙羅、ルークが駆け寄ってきた。

アリシアが「アキラ、なかなかの剣術だったぞ今度、模擬戦闘してくれ」

「晃くん助けに来てくれてありがとう」沙羅が礼を言う。

「かっこよかったぜアキラ!」とルークが晃にグータッチしてきた。


 ちょうどその時、ガルブレイン戦士長を筆頭に王国の兵士が多数なだれ込んできた。


 ガルブレイン戦士長にはメールで連絡していたのだ、クランノストラのメンバーの逮捕やら後処理はガルブレイン戦士長に任せるつもりである。

































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