第13話バーベキュー 奴隷密売組織クランノストラ
ダンジョン10階層のフロアボスを精霊召喚魔法で瞬殺し、11階層の野営ポイントにたどり着いた風のドラプリ御一行であります。
東京ドーム10個はありそうな大草原エリアで、見渡すと、20ヶ所は他のパーティーがキャンプを行っている、となりのキャンプ地から100メートルは距離の空いた場所にテントを張ることにした。
さて8人用の大型テントの設営も終わり、ルークとアリシアさんにお風呂の湯を火魔法で順調に沸かしてもらっている。
晃はバーベキュー用の炭を置いて金網を設置していく、ちょうどその時玄関のチャイムが鳴り、神戸牛のバーベキューセットが自宅に届けられた、自宅の方はホットプレートにしよう。
沙羅が「私の家にも神戸牛届けられたわよ!」
葵も「同じく届けられましたわ」
桜も「今、龍ヶ崎家メイドさん7人衆の1人であるアッコちゃんが私の入院してる個室に潜入成功、肉とホットプレートをお忍びでもって来たでござるよ、アッコちゃん私にも食べさせてって涙目だから一緒に食べるでござる、ちなみにアッコちゃんは7人衆の中でも一番若い21才メガネっ子、ドジっ子属性でござる」
ルーク、アリシアさんにも食べられるように、AIの味覚用の食材に神戸牛のデータを購入してある。AI味覚用のデータとは、NPCさんと仲良くなったプレイヤーが、NPCさんにご馳走してあげたいというリクエストから生まれた食材データのことで、龍ヶ崎スイーツをギルバート陛下に食べさせたのも同じく食材データを調理させたものである。
沙羅が「私たちの演奏が動画チャンネルで100万再生超えて、その報酬で買った肉だから遠慮することないわよね?」
晃が「もちろんだとも、ゲームプラスの岩田さんにチクった雷太への報酬もしっかり召し上げといた、さすがに配信元のゲームプラスとは報酬折半になるけど、充分な量の神戸牛を確保したぜ」
火魔法が込められたマジックアイテムを取り出し炭に火をつけて行く、実はこのアイテムがあれば湯沸かしも簡単なのだが……ルークには黙っておこうっと。
そこにルークとアリシアが戻って来て、
「新鮮な野菜と肉だな美味しそうだ」
桜が思い出したように「そういえばエルフの双子のカーヤちゃん、マーヤちゃんは肉が食べられなかったでござるよ、おふたりは大丈夫なのでござるか?」
晃が焦りながら「しまった! そうだった、エルフの肉嫌いはテンプレだったのを忘れていた」
こうなったら命の恩人ではあるが、ちくわを提供するしかないか……、
ルークが「大丈夫だ、俺たち兄妹はハーフエルフで本能的に肉が好物だ」
アリシアが「むしろ肉こそ生きがいと言っていい」
葵が「それでおふたりとも、他のエルフが金髪なのに、綺麗な白髪ですのね? 前から不思議に思ってましたわ、お父さんかお母さんが人間ですの?」
アリシアさんが「父はエルフで現役バリバリのエルフの守り神にして、有事の際は将軍を務めている、母親はヒューマンではなさそうなのだが……」
晃が「とりあえずバーベキュー始めようぜ!」
「おー!」皆一斉に掛け声を挙げた。
ドリンクは晃、沙羅達にはウーロン茶を配り、
65才のルーク、64才のアリシア(見た目は20才そこそこだが)にはビールのAI用データを手に入れていたので、ジョッキに注いで渡した。
「では、お疲れ様カンパーイ!」
ルークが「最初は苦いが、この酒うまいな! プハー! そういえばこの前のオーガとの戦争祝賀会の時、王国の兵士たちは、麦を使った酒を飲むと言ってた な」
アリシアも「このシュワシュワ感最強だ!」
「エルフが普段飲む酒は、何ですの?」葵が尋ねると、
「葡萄酒か、葡萄を原料に蒸留した強い酒だ」ルークが言うと、
「ワインに、ブランデーかしら?」さっすが葵さん酒まで詳しい。
「さしずめ王国はビールやウイスキーの盛んな英国で、エルフの里はフランスってとこですわね」
「おー! さっきのアニメに出てきたアーサー王とジャンヌだな! はっはっは」
エルフの記憶力恐るべし……。
そして網にまずは牛タンをジュージュー焼いてレモン汁で頂く、
「まじうめぇー!」
「最高でござる、となりのアッコちゃんもうまいうまいって連発中」
「しかし個室とはいえ病院で焼き肉ジュージューはまずいのでは……」
葵が「それに関しては大丈夫ですわ、桜の入院先の病院には龍ヶ崎グループの資本が入ってますわ」さすがである、沙羅やルーク、アリシアもとろけるようなタンの味を堪能している。
「で、先程言いかけたルークとアリシアさんのお母さんって?」
アリシアさんが「あまりよく覚えてないが、真っ白な肌と髪を持つ綺麗な人だったがエルフでもヒューマンではないと親父が断言してた。私達が最後に会ったのは、私が3才の物心がつくかつかないかの頃であまり覚えていない、その時4才だった兄者はどうだ?」
ルークが「俺も4才が最後だからはっきり覚えてないが、母はエルフの里には来れなくて、洞窟の様なところに住んでいた……1年に1度は親父がアリシアと俺を抱えて連れて行ってくれたらしいが、母親と会うために親父は沢山の敵と戦っていたような記憶がかすかだがある、ただ最後の日を境に親父は母ともう会えない、これからは母の事を聞かれても答えないの一点張りでな……、詳しい事はわからんのだ」
沙羅が「お母さんに再び会えるといいね!」
ルーク「さあ、どうだろうエルフの様に長命種なら良いがな……」
「そうか中世だもんな、人間なら人生50年って感じかなー、でもヒューマンじゃないって言ってたのなら可能性はあるね、気を取り直して、ハラミ、カルビ、ロースいくよ!」
「おー!」全員ノリノリである。
肉汁のポタポタしたたるカルビをレタスに巻いて、焼き肉のタレで食べる。
「舌がとろけるとはまさしくこのことだな! 噛んでしまうのがもったいないくらいだ」
アリシアさんが覚えたてのハシを使ってガンガン食べて行く、ルークも負けていない!
「これがカルビか、柔らかくてうまいぜ、このタレも絶品だ、ハラミやロースも最高だな」
とガツガツと食べて行く。
晃も両親が海外に行って一人暮らしになってからというもの、ひたすらガチャのために自炊で節制に努めてきたから、こんなご馳走は久しぶりだ。
皆と食べるバーベキューは本当に楽しくておいしい。しかも美女や美少女に囲まれてなんて最高である。
沙羅さんもか「ちょ! この味なんなのよ、やばいくらい美味しい」と満足そうにつついている。
「次ホルモン行くよ、テッチャンにミノだ!」
テッチャン投入、その脂で火が高く舞い上がる。
「おおおお! 火魔法だー」
「キャハハハ!」
「はっはっは!」
皆んなすっかりバーベキューを満喫した晃達でありました。
後片付けも終えて、「じゃあ僕とルークはテントに入ってるから、女性陣は風呂入って来たら?」
「ええそうしますわ」と葵さん、
「晃君、もしのぞいたら桜ちゃんに弓で眼を射抜くようお願いしといたからね!」
「なんて信用がないんだ僕は紳士ですよ、ははは」
「お師匠、私の魔弓那須与一の命中率は100パーセントでござるよ!」
「わかってる、わかってるルークと大人しくアニメでもテントで見てるから」
ルークとテントに入ってしばらくアニメを見てたが、よりによってアニメには必ず1話はある温泉サービス回だった、しかも主人公と仲間が、ヒロイン達をのぞこうとして、失敗する回だった。
「ヒューマンものぞきとかやるのか?」
「まさかエルフもやるの?」
「そりゃ男の浪漫さ! 弓で撃たれた仲間も多いがな、ははは」
「命がけですね、はは」
「で、晃は行かないのか?」
「ルークさんそんな御冗談を、僕は武の道を究めようとしている求道者の身ですよ、まさかルークさん……」
「まさか俺だって軍神と呼ばれる身だ、そんな世俗的なエルフと同じような事はしないさ」
「……」
「ただこの辺りには魔物がこないとは言っていたがやはり見廻りは必要な気がするなぁ!」
「11階層は結界が張られてるから、その心配無いけど、ルークが行くっていうなら、仕方ないなぁ、付き合いますよ」
「もちろん風呂の方向は見ないさ!」
「もちろんですよ」
とすっかり意気投合した晃とルークが外に出ると……。
「やられた……」晃がポツリ一言、
「やられたな、アリシアの土魔法ウォールだ」
風呂の周りは5メートルはあろう高さの土のフェンスで囲まれていた……。
しばらくして沙羅達が浴衣姿で帰って来た、アリシアさんの浴衣姿も外国人女性のコスプレみたいで決まっている。
「いい湯だったわよ、晃君、ルークさんも入ってきたら?」沙羅に言われ、
「はーい」と力無く答えた晃だった。
ルークと肩を落としがら風呂に向かう……。
とはいえ、露天風呂はいいもんだ、湯船に浸かりながら、ありとあらゆるアニメの温泉回を見せてると、ルークが、
「アキラ、萌えというものがわかってきたぜ、お前達は明日は1日学校にいかなければならないのだろう? その間はアリシアと2人でキャンプを続けながら、アニメざんまいするのでたくさんのデータをくれ」
そうなのだ、VR時間は現実の2倍のスピードなので、僕らがログアウトして、学校に行って戻ってきて、ログインする時には翌々日の朝になってしまうのである。
そのことは前からルーク達に説明してあった。
「もちろんですよ、たくさんのアニメデータ渡しとくね、あと桜は明日の夕方には合流できるのでよろしくね」
入院中でVR学校に通っている桜は、時間軸がルークと同じなのだ……。
「助かる、お前達と接してから俺の生活が一変したようだ、ではテントに戻るとしよう」
テントに戻ると「お帰りなさいー!」と沙羅達が迎えてくれた。それから皆んなでアニメ鑑賞して頃合いを見て、大きなテントの端に男性区画をつくり、ルークと入って行きログアウトした晃であった。
沙羅はふと目が覚めた、周りを見渡すと隣にアリシアさん、葵、桜が寝ている。テントの中だ、楽しさと疲れでログインしたまま、うたた寝していたみたい……。
すぐに寝付けそうにもないので、外に出て夜風に当たることにした。
空に輝く夜光虫の光がまるで銀河の渦巻き部分である満天の天の川みたいに綺麗である。
眺めていると、微かだが「キャー誰か助けてー」
「やめろよコラァ」などの悲鳴と怒声が聞こえてきた。
声のする方角を見ると100メートル離れた隣のテントの方だ、そっと近づいてみることに決めた沙羅はアイテムストレージから、レイピアを取り出した、刺突専用の武器であるそれは沙羅の持つ槍のスキルがそのまま使えるので、頼りになる。
服は浴衣のままだ……
40メートル位まで近づいたところで、20名位の男達がグリモア含む各4名の男女エルフを縄で縛っているところであった。
男達の風貌は人相は悪そうだが、明らかに欧米人であり、冒険者ではなくNPCであった。
その時背後に気配を感じた沙羅が振り返ると、真っ白な肌に黒い髪の黒いドレス、ゴスロリ? を着た20才位の美形の女性が佇んでいた、先の鋭利な傘を持っている。
「あら、アース大陸の女子が一人でいるなんて珍しいわね」
「あなたは何者、奴らの仲間なの? エルフさん達をどうするつもりなの?」
「そりゃエルフは奴隷として高く売れるからね! 私達は、奴隷密売や貴族の誘拐専門の秘密組織『クランノストラ』のメンバーさ、私は組織の3天王がひとり『黒のシェパード』よ、あなた私ほどじゃないけど美人ね、奴隷として高く売れそうだわ、ほほほ!」と傘を構えている。
「ちょ!」慌ててレイピアを構えようとした沙羅だったが一瞬で後ろを取られ後頭部を強打され崩れ落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます