第12話ダンジョン突入 キャンプだ風呂だ
ダンジョン……それはRPGゲームの華であり、これの出来次第でそのゲームがクソゲーか良ゲーかが決まると言いきっても良い!
日本の有力ゲーム会社が共同で運営している、ハンティングワールドオンラインだけに、晃の期待も高鳴っていた。
大きな洞窟を思わせる、ダンジョン入り口には冒険者のパーティが一攫千金を夢見て続々と集結しつつあった。
入り口に入ると少し大きな広場があり、屋台や出店が軒を並べていた。
「はいはい、いらっしゃい! ダンジョンで必要なポーション、毒消し薬、MP回復薬あるよー! おっ桜ちゃんじゃねえかぁ久しぶりだねぇ、ダンジョン潜るのかい? 頑張れよー」
桜が「道具屋のおじさん、こんなところで店開いているのでござるか?」
「あたぼうよ、街の道具屋より、2倍の値付けでも売れるから、大儲けさ! はっはは」
「さすが商売人でござるな、ちゃっかりしてるでござるな」
晃が「おじさん、命の精霊石あるかい?」
「もちろんあるけどかなり高いよ!」
「大丈夫さ、一個売ってもらえるかい」
「金持ちだねぇ、金貨2枚だよ、はい毎度あり」
晃は裏ルート攻略などでゲーム内通貨を有り余りるほど持っていた。
それにアイテムは普通にプレゼント出来るのだ、
「エルフのアリシアさんは死に戻り出来ないので、死に至る攻撃を食らっても身代わりになって割れるこの石をプレゼントします」と渡してあげると大喜びしてくれた。
「ありがとう、アキラは優しいのだな」
やりとりを見ていた葵さんが「オホホホ、晃くん鼻の下が伸びてますわよ」
その時、後ろからただならぬ気配を察知、振り返るとルークが拗ねている……
「アキラ俺にはくれんのか?」
「イヤイヤ……ルークはなんぼなんでも死なんでしょ、それに欲しいのなら自分で買えば? 軍神って呼ばれるくらいだから金持ちっしょ?」
「エルフの里は自給自足農業主体で金貨なんてとてもとても、里を守る代わりに食い扶持には困らんが……」とルークが弱々しく言う、
「分かった、分かった買ってあげるよ、おっちゃんもう一個、あと野営用のキャンプセットとバーベキューセットも」
道具屋が「ありがたい、今日は店仕舞いしてラウンジエルフで豪遊だ!」いいなぁ……早く僕も20才にならないかな、
桜が「お師匠羽振りが良いでござるな?」
晃が自慢気に「ランカーはゲーム内通貨においては大金持ちなのさ、はっはは!」 リアルマネーではガチャ貧乏ですが……。
さらに金に糸目をつけず大量のポーションなどを買い付け沙羅達に渡して行く。
買ったテントやバーベキューセットをアイテムBOXに収納して行くと、後ろからドサッっと大きな音がした……振り向くと驚愕の表情を浮かべたルークとアリシアが持っていた大きな風呂敷を下に落とした音だった……。
アリシアたんが「今、畳まれているとは言え大きなテントがアキラの中に吸収されたのだが……」
「ん、アイテムBOXのことか? 正式名はアイテムストレージだったかな、ところで2人がかかえている大きな包みは中に何が入ってるの?」
「兄者の包みは弓矢だ! 矢筒に収納しきれん分を背負っている、私のは着替えだ、私は剣士だからな」エルフで剣士って珍しい!
そういえばアリシアたんの腰には立派な細身の西洋剣が、白いエルフの民族衣裳のスカート部分は横がチャイナドレスのようにスリットが入っていて、非常に目の保養になる。ルークは黒ズボンに白のノースリーブだ。
「君たちの荷物も入れようか!」
沙羅がすかさず「ちょ! アリシアさんのは着替えでしょ? 私が預かるわ」
「……沙羅さん、なんで僕を変態扱い?」
「だって思春期の男の子なんて……」
「降参します、それ以上はやめて」
とその時「ルークの旦那ではないですか? これからダンジョンでっか?」
振り返ると前にカーヤがグリモアと呼んでたエルフと他エルフの男女7名のパーティがいた。
「グリモアじゃねえか! お前たちもダンジョンに潜るのかい?」
「一獲千金狙いさ、いつまでも自給自足農家なんてやってられないからな、先行くぜ旦那」
「頑張れよ、だが無理を感じたら引き返せよ」
「命あっての物種はわかってるさ、ほいじゃな」みんな大きな皮袋をさげている、ドロップした戦利品は自分で運ぶのか大変だな、しかしAIとはいえ、NPCだけのパーティがダンジョン潜るとか……
このゲームの自由度には感心させられる。
「よし、準備完了! さあダンジョン攻略開始だー」
「 おー!」
2週間前に実装されたこのダンジョンはゲームプラスの情報によると50階層が最下層らしく、攻略済みパーティもユリウス隊をはじめ少しづつ増えているとの事だ、LV90越えの晃、ルーク、アリシアとランカー級の実力者がいるとは言え、LV30程度の沙羅、葵、桜のパワーレベリングが攻略の鍵となる。
さて洞窟に入ると沙羅が「真っ暗でなにも見えないわ、怖い……」
桜が「そうでござるか? 30メートル位くっきり見えるでござる」
「それは忍術スキルの暗視術のおかげだ、アサシンや盗賊も極める僕はもっと見えるよ、ほらよ松明だ」とアイテムBOXから松明を取り出し桜以外の全員に渡す。そして火をつけると、
葵さんが「一気に明るくなりましたわね、かなり強力な松明ですこと」
ゲームだからな、あんまりリアルにしすぎてストレスがたまると糞ゲー化してしまう。
30メートルほど行くと「前から来るぞ松明は下に置いて、ルーク、桜攻撃用意」 ルークと桜が弓を構える、鎧を着た豚族のモンスターが3体現れた
腕には槍や剣が握られている。
ルークの弓矢が2体の胸に、桜の弓矢が1体の腕に刺さる。
そして晃が妖刀、アリシアが剣で斬りかかり弱体化させたところで、沙羅、葵に合図を送り、沙羅が槍、葵が剣でトドメをさした。
早速、沙羅達のレベルが1上がって30になったようだ。
「たった一回の戦いでLVが上がったでござる、嬉しいでござる」
「そりゃ、このゲームの最前線だからね、沙羅達 初心者は来ちゃ行けないところだ、ルークもヘッドショットで一撃で倒したいところ悪いね」
「彼女達のパワーレべリングに協力するぜ、フロアボスが出れば本気を出すぜ」
「ありがとう」
「ありがとうでござる」
「ありがとうですわ」と3人娘が声を揃える。
「アリシアさんの踊る様な剣さばきもかっこよかったです」
「我流なのだがな、兄者と毎日模擬戦闘で弓を避けながら、近づいて行くにはと練習してたら、こういうスタイルになった」とんだ戦闘民族だ……。
さらにダンジョンを進んで行き、次々に現れる豚族や牛族達の集団を同じような手順で倒して行き、沙羅達のレベルも3上がり、5層まで降りたところで、広間を発見、休憩エリアだな、他のパーティも2団体ほど休憩のようだ、結界が貼られていてモンスターが入って来ない場所である。
「では休憩します。SAKURA cafeの特製ドリンク配るね」
「氷が溶けてますわ」
「はいルーク氷魔法プリーズ」
「俺は製氷機か?」とぶつぶつ言いながら器用に氷を作ってみんなのコップに入れてくれた。
アリシアさんが「休憩と言えば、カーヤ、マーヤから聞いておるぞ、アニメと言う素晴らしいものを見せてくれると、兄者とずっと楽しみにしておったのじゃ」
「うむ確かに楽しみだ」
「そこまで期待されたら下手なアニメ出せないな、とっておきを出すしかないな」
みんなの前に20インチスクリーンを展開、アニメのOPが始まる。
そのアニメはサーヴァントと呼ばれる歴史上の英雄を現代に呼び出し英霊同士で戦わせ、聖杯を手に入れる、男女に人気のアニメだ。
アリシアさんもルークも真剣に見入ってる、沙羅達も登場人物達の美しさを堪能しているようだ。
「サーヴァントか、英霊を召喚させて戦わせるとは面白い、しかしアーサー王なのに女とは何故だ?」ルークが尋ねる
「アニメではよくあるパターンさ、その方が萌えるだろ」と晃が言うと
「なるほどそれが萌えとゆうもんなのか」
「織田信長なんか織田のぶ代とか、名前が女のうちはまだしも、最近は信長の名前のままで女だったりする」と晃
「織田信長? だれだ」とルーク
「また今度教えるよ!」
2人の会話を聞いていたアリシアさんが
「サーヴァントで思い出した。ルークも私も覚えたての精霊召喚魔法まだ使っていなかったな、次の敵に使わせてくれ!」
「エルフのクエスト合格したの? アリシアさんはともかくルークがダルマさん転んだ100回は無理な気がするが?」
「あれは審査官のエルフを睨みつけたら合格にしてくれたわ、はっはっは!」ずるいぞルーク。
沙羅達も「あっ! そうだ私達も晃君からプレゼントしてもらった、この腕輪のおかげで精霊召喚魔法使えるのよね!」
「少しずつ試しながら行きましょう」
「はーい」
ダンジョンに戻り進んで行くと牛族の武装パーティーが襲って来た、10体とかなり多い。
アリシアさんが「私に任せろ! 出でよ精霊よ!」
光の中から現れたのは水精霊である、リヴァイアサンで青白い巨体に蛇のようなとぐろを巻いている、もはやイヤな予感しかしない……
晃は慌てて沙羅、葵、桜に、水遁の術用の竹筒を渡して行くが3本しかない、自分の分が無い、ルークはほっとけ、竹筒のかわりになる物を必死にアイテムBOXの中を探す、あったこれだ……
その時、リヴァイアサンから解き放たれた水魔法が濁流の洪水となって洞窟内を満たして行く……
晃や沙羅達もルークも一斉に流された、アリシアには精霊の加護の球体が守っている、沙羅達は竹筒で必死に洞窟の天井付近の空気を吸っている、晃もある物体でなんとか……
水が引いた頃にはこの6階層の魔物は全滅していた。
ルークが瀕死の状況だったので、ヒーリングをかけてあげてると、沙羅達もびっしょり濡れながらやってきた。
沙羅が「ちょ! 晃君何くわえてるの?」
「ちくわですが何か?」おやつ用に持ってた。
「キャハハ!」僕もまさかちくわに命を助けられるとは思いませんでしたよ……
元気になったルークが怖い顔しながらアリシアさんに「アリシアお前、俺達を殺す気か?」
何とも言えない表情をしたアリシアさんが「皆すまんかった! まさか津波を起こす精霊だとは知らなかった許してくれ」さすがに落ち込んでいる。
「皆さんダンジョンで試し撃ちはやめましょうね! すっかり濡れてしまったので、ルーク火魔法よろしく」晃が取り直し、
「俺はエアタオルかよ」とぶつぶつ言いながら熱風を晃達に送ってくれたルークでありました。
そのまま魔物を倒しつつ進んで行き、10階層にたどり着いた頃には沙羅達のレベルは40に達していて、中級レベルになっていた、しかも沙羅には攻撃力、葵には防御力、桜には回避力のパラメーターをひたすら上げさせておいたので、それぞれその得意分野においては上級者にひけをとらない所まで来ていた。
10階層の奥にある大広間……
大きな鎌を持った3メートルはある大きな魔物がいた。名前はオークカイザー豚魔族の王である……
彼は豚魔族を率いてこのダンジョンにやってきた、ダンジョンのマスターの命により、この10階層の守りを任せられている。
その自信に溢れた頭の中にはここにたどり着いたヒューマンどもを残虐に倒す方法ばかりを考えている、
彼は実際には何度も冒険者達に倒されているのだが、その記憶は蘇る度に消去されている。
そりゃ弱気のフロアボスは要らんからね。
そして満を持して待ち構える彼の前に現れたのは、ひょろっとしたヒューマンのオスが一匹、メスが3匹、あとエルフのオス、メスだ。
あまりに弱そうな敵に本音がこぼれた「レジャーでもしに来たかヒューマンとエルフのガキども、引き返すなら今のうちだ!」
が、しかし奴らは聞いてもいない……
沙羅が「これだけ広い大広間なら精霊召喚魔法使ってもいいよね?」
晃が「大丈夫じゃないかな、GO」
沙羅が「ありがとう、出でよ精霊!」
光の中から3メートルはあろう、真紅にに燃え盛るフェニックスが現れた。
そして飛び上がりオークカイザーに向けて物凄い炎を吐き出している。そして最後に体当たりしてから消えていった。
炎に包まれたオークカイザーのHPが25パーセントは減っている。
「おーすげー」パチパチ拍手した晃であった。
「なかなかね」沙羅さん上機嫌、
葵さんが「次はわたしの番ですわね! 精霊召喚!」
現れたのは女性型の氷の精霊シヴァだった、物凄い冷気を放っている、そして先の尖った氷柱を無数に頭上に浮かべ、それをオークカイザーに叩きつけて行く…… HPが半分まで減っている。
完全に怒りで切れたオークカイザーが物凄い咆哮とともに、桜に向けて大鎌を振り下ろして来た、
「精霊召喚でござるよ!」光の中から4メートルはあろう土の精霊ゴーレムが現れ大鎌を受け止め、そしてオークカイザーを殴る殴る、蹴る蹴る、あまりの光景に動物虐待反対と唱えそうになる。
ルークが嬉しそうに「最後は俺の番だな、フッ! 出でよサーヴァント!」あのう、サーヴァントって……
現れたのはイフリート、真紅に燃える人間型の精霊だ、燃える大きな球体を創り出しそれをオークカイザーにぶつけた。
大音量の音響と共にオークカイザーは光るポリゴンに変わって行った。
「精霊召喚魔法すげー! 僕の出番無しだよ」
皆とハイタッチして行く、アリシアさんが
不機嫌そうに「リヴァイアサン使いたかった」トラウマに覚えのある皆は沈黙……
11階層に降りると広大な草原と星空が広がっていた。沙羅がびっくりしながら「なんで地下に星空と草原があるの?」
「ここは野営地なんだよ、星は天井に夜光虫がいて星空みたいに輝いてるって話だ、さあ、まずテント張るよ! ルークは風呂作ってね」
「はぁ? 聞いてないぞそんなの」
「ルークなら楽勝! 土魔法で穴掘る、水魔法で満たす、火魔法で温める、はい簡単でしょ? お礼に神戸牛のバーベキューが待ってるよ」
「そうか、それを早く言わんかい!」
「よしキャンプにバーベキューに風呂だ!」
「おおおお!」
すっかりテンションの上がった風のドラプリ御一行でございました。
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