第2話初めてのPVP……カラオケ!?
授業も終わり晃は教室で姫宮沙羅と会話する機会もなく、自宅に帰ってきたところである。食事の準備をする前に、メールをチェックする。龍ヶ崎姉妹から、
「本日もよろしくですわ」
「晃師匠今日もよろしく」と2通。
あとハンティングワールドの掲示板関係をチェックして行く……。
ん? なにやら掲示板が騒がしい、新スレッドが何本も乱立している、題名は「神ガチャゲリラ配信!」
「運営がトチ狂ってしまった件」
「ハンティングワールド終了の件」
となにやらただごとではなさそうである。嫌な胸騒ぎを感じつつ運営からのお知らせをチェック、本日発表項目が2件あり、
「ハンティングワールド内にカフェテストOPENのお知らせ」
それはどうでも良い、 もう一つが
「本日17時30分から17時45分までの時刻に星7のレジェンダリーウェポン及び防具のプレミアムガチャ排出率を100倍UPします」
と17時25分に発表されていた……時計を見ると17時35分であり、とにかく料理どころでない、VRHMDを急いで被り待ち合わせ場所に急いだ……何せ星7の武器、防具はゲームバランスを狂わしかねない強力なものである、ガチャ動画による考察でも、0.01パーセントの排出率と推測されていた。
100倍とはいえ1パーセントではあるが、この誰も気づいていないような時間に突然ゲリラ配信するなんて、普通はありえない、運営はクレームの嵐で炎上しかねない。そんな事を運営にさせる人間に心当たりは……。
そして待ち合わせ場所に現れた晃の目の前にはガチャに夢中な3人娘が……、
「この大剣、エクスカリバーですわ」葵が喜んでいる、
「ロンギヌスの槍? いまいちなネームよね」
「桜も星7当たったわーい! 魔弓那須与一だってダサーい名前」
「防具ガチャ行きますわよ!」
なんともいえない光景であった、伝説級の武器の名前が緊張感もなく女子高校生の口から出てくる違和感……。
「あのう」
「あっ晃君こんにちは、今忙しいので後でね」
「お師匠、桜も同じく後ほどね」
「後でよろしくですわ」
と夢中にガチャを引いている、
「……」
彼女達は昨日一気にレベルアップしていたのでレベルアップ報酬のガチャ券を沢山持っていたので景気よく10連ガチャを回して行く、時計は17時40分……あと5分か、姫宮沙羅の防具ガチャを見学でもしますか、おっ!星7!でも顔が冴えない、
胸盛鎧が気に入ってたんだなきっと……
「最後の10連! お願い!」
すると10個目に7色のオーラを放つオリハルコン製の胸盛鎧が……沙羅の目が輝いている! つい嬉しくなって声に出してしまった。
「やったね! 胸盛防具きて良かったね!」
姫宮沙羅がギロリと大きな目を僕に向けてきた、
「あらあら」
「お師匠死んだー」
「晃くーん、おでこを差し出しなさい!」
「沙羅様デコパッチンですか? 声に出した私の落ち度は認めます。ごめんなさい」
と素直におでこを差し出す…
そこにはひたすら攻撃力を高めた脳筋パワーの沙羅のグーパンチが炸裂、晃は3メートルは吹っ飛び、空中で漫画の様に回転した……。
「キャハハハッなんて飛び方するのよ」
「……お師匠漫画みたいです。」
「オホホホ」と、その時
「プレミアムガチャ星7排出率アップ終了します」
と運営からのメールが届いた。
「……えーと葵さん、今回のガチャ星7排出率アップに龍ヶ崎グループは関与しました?」
「もちろんですわ、昨日あのあと1時間ほどガチャ引き続けましたが、一向に星7が出そうにありませんでしたもの……」
「かといって札束で強引に排出率アップを迫るのはいかがなものかと」
「どうやら晃君はなにか勘違いしてらっしゃるようですわ……」
「場所を移しますわ、ついて来ていただきますわ」
桜も沙羅もニヤニヤしながらついて来た……王国内に今日OPENしたカフェの前で立ち止まる。名前はSAKURAcafe! 聞いたことのある名だ……なるほど、センターシティでよく見かける龍ヶ崎グループのVRカフェだな。
中に入ったことはある、センターシティではピンク一色のお洒落カフェだった。
「さあ入りますわよ」
中に入ると中世時代の豪華な作りとなっており、ゲームの雰囲気を壊してないことに少し安堵しながらテーブルに座る。
「昨日晃君と待ち合わせ前に、3人で始まりの街を散策しましたのよ、特に酒場や料理屋を中心に、確かに存在はしてましたが、あくまで情報交換の場所であって、食事をすると体力強化などの恩恵はあっても、実際のお腹が満たされる訳ではないと……。
そこでセンターシティで展開されている龍ヶ崎フードサービスVR部門のシステムが流用できると思いまして、フードサービスの責任者である、母に商用チャンスあり、とメールいたしましたの……。
母がハンティングワールドオンライン提携について部下に意見を聞いたら、このゲームとの提携に関する社内プレゼンを構想してた人間が2人いたとのことで、早急にその2人を中心にプロジェクトチームが出来て、この街にSAKURAcafeのテストOPENまでこぎつけたのですわ」
「しかし昨日の今日って……えらく早くない?」
「龍ヶ崎グループは商用チャンスには迅速にをモットーとしてますわ、
社長である父が速攻でゲーム運営組織に今朝、直接出向いてましたわ! それはともかく晃君と沙羅ちゃんにも手伝って欲しいことがありますのよ……経費で落とすので、好きな物を頼んでね……」
「手伝って欲しいこと?」
「わたしまで!?」
「何せ昨日の今日だからメニューがまだはっきり決まってなくて、中世が舞台だから流石に、普段SAKURAcafeで出してるパスタやハンバーガーは雰囲気には合わないので肉バル業態のメニューをとりあえず持って来たの……とにかく頼んでね」
仕方なくメニューを見てみることに……バルは高校生である晃は初めてだが、普通にサラダ、テリーヌなどの前菜や、ローストビーフ、ステーキ、チョリソー、カルパッチョなどの洗練された肉料理が並んでいた。
お腹が減って来たのでサラダとローストビーフを注文、ドリンクはSAKURAcafeイチ押しを頼んだ、5分もすると、家のチャイムがなった、入り口を開けるとマンションの近い部屋の顔見知りの主婦が料理の乗ったお盆を持って現れた、例の宅配登録アルバイトである。」
「いつも自炊の晃君にしては珍しいわね!どんどん追加オーダーしてね、
わたしのヘソクリ増加にご協力を、皿とかは表に置いとくだけでいいわよ」
少し照れながら受け取りテーブルに置いてHMDを着けてシースルーモードにする、するとゲーム内の食事と目の前の食事が一体化して行く。
これぞ龍ヶ崎グループが世界に広めたVR内で実際に食事するシステムなのである
「さあ遠慮なく召し上がれその代わりリサーチに協力をお願いするのですわ」
「このSAKURAcafe特製のオススメジュースはなんですか?」
「それは葵姉考案のざくろと豆乳のミックスジュースで女性ホルモン値が高いの、
葵姉の出てるもんみれば分かると思うけど……」
「うちのドリンク売上ナンバーワンですわ」
うっ!! 今、沙羅の目がジュースに熱く注がれてる……からかったら今度こそ死ぬな……
「じゃあ僕にはあまり関係ないかな…」
「そんなことありませんわ、若ハゲ予防になるとか……
検証中ではありますけど」確かに大豆のイソフラボンの女性ホルモンは若ハゲ予防になるというのは聞いたことがある……。
ぐいっと飲みつつ、
「で? リサーチというのは?」
「龍ヶ崎フードサービスのSAKURAcafeをそのままゲームに持ってくるとゲーム世界を壊しかねないので、少しはゲーム知識のあるスタッフを集めてヒヤリングして、
中世世界の酒場などの雰囲気は取り入れたし、肉バル業態のメニューをそのまま持って来たけど、やはり突貫工事感ありありですの、ここは色々なRPGをやり込んでいる上に、ゲーム内の料理にお詳しそうな、晃君やまた、若い女子の視点で沙羅ちゃんにもアドバイスを頂きたいのですわ……」
「うーむなるほど、では率直に意見させてもらうと……肉バル料理は確かに方向性は間違ってないけど、異世界アニメ、ゲーム界の定番と言えば漫画肉です……横長に骨がありその真ん中に大きな肉の塊があるような、現代で言えばブラジルのシュラスコやフランスのジビエのような豪快な感じかな、ローストビーフやカルパッチョじゃ上品な感じがするなぁ…」
「おー師匠素晴らしいです」
「なかなかの意見ですわ」
「かといって女の子が毎日シュラスコってのも重いわよね~」
「そのとうりです! 酒場ならシュラスコ専門店でも良さそうだが、やはり、カフェ業態ならパンとジャガイモ、人参ごろごろのスープに肉をサイコロ串にしたプレートセットなんかが雰囲気出るのでは?」
「そのアイデア頂戴いたしましたわ、今の意見を元に龍ヶ崎レシピ開発チームが試作作成に入りましたわ」
「はやいな……」
「龍ヶ崎グループは迅速をモットーとしてますの、やはり晃君の女子力の高さは本物でしたわね」
「女子力?」
「去年同じ私も同じクラスだったでしょう? 春日雷太君がいつも、また晃お手製弁当かよって大きな声で喋ってたので、クラスの女子はみんな、見てないふりしながら、さり気なくチェックしてましたですわ。
『今日はスズキのホイル焼きとパエリアだったわよねー美味しそう!』
みたいな感じで……」
「へぇー女子連中がねぇ、てっきり冷たい目しか向けられてないものかと」
「お師匠! 女子はファションやイケメンタレントや学校のイケメンの話しばっかしてるって先入観持ってない? 意外と話しするきっかけなんていくらでもあるんだよ」
そうなんだ、とうれしそうな顔をしてると、沙羅さんと目が合った
「ちょ! 料理なんか私だって……どうせ晃君だってレシピ通りに作ってるだけでしょ?」
「もちろんそうだよ! VRクッキングレシピ通りに作るだけだよ」
「もちろんそうよね! 当然よね! そんなの私だって……」
沙羅さん……なんかムキになってるような、まさか料理苦手とか……可愛さに思わず悪戯したくなる
「では、沙羅さん考案のレシピ聞きたいな?」
「沙羅姉期待してるよ!」
「沙羅ちゃんよろしくですわ」
へへへ! プレッシャーかかったぞ……
「ちょ! アリゲーターよ……お父さんが元気だった時に良く親子3人で月1回は静岡の高級レストラン行ったわ……ワニなんか食べたくないって駄々をこねてる私にお父さんがあっさりしてて美味しいよって勧められて食べたらあっさりしてて美味しかったわ、あと大ナマズとかも……ハンティングワールドの世界感に合ってない?」
「沙羅ちゃんナイスアイデアですわ、アリゲーターの串焼きとか、あと私達の親の代から白身魚のフライってホキとかの怪魚や大ナマズ〔キャットフィッシュ〕だったらしく、知らず知らずに食べてたみたい!ハンティングワールドではそのグロさを逆手に取ったメニューありですわ」
「ふふん」
沙羅さん僕に得意そうな目を向けて来た……君は一体何と戦ってるんだ?
「龍ヶ崎フードサービスからメール来ましたわ2人ともアイデア採用されましたわ、
晃君の提案したプレートはスープは日替わりでビーフ、ボルシチ、クラムチャウダー……肉も日替わりで! 沙羅ちゃんのアイデアはアリゲーター、大ナマズ、ホキの怪魚3種串で両方共定価は900円だけど考案者は300円でずっとサービスしますわ! だから晃君、夕食はみんなでここで食べましょう! ついでに特製ドリンクもサービスしますわ! よろしいかしら? みんなでワイワイ食べた方が楽しいですわよ」
「わかりました……」
なんか押し切られた感はあるが、
多分今回の桜さんのリハビリ協力に対する感謝の気持ちなんだろうな!
「ちょ! 私毎日怪魚3種ってやだよ!」
「わかりましたわ! 沙羅ちゃんにもプレート割引きつけますわ!」
「でもそうなると龍ヶ崎家に借りを作ることに……」
「何言ってんのですわ? 今回はアイデアに対する正当な謝礼ですのよ、負い目なしよ……よろしいかしら!」
「そういうことなら甘んじます」
「ところで……最初の議題のガチャの排出率を札束で……」
「あーそうですわ、ナイト業態として、スタンディングバーAOIやラウンジドラゴンも、進出予定ですのよ、私達高校生は入れないですけど……」
「話しをすり替えない!」
「……てへぺろ!」
昨日のアニメからそんなリアクション覚えやがって……
そんなやりとりをしてる間にSAKURAcafeは超満員となっていたとなりは社会人らしき男4名、女性2名のパーティーだった。
「SAKURAcafeできたんだ! うれしいわ!」
「しかしゲリラガチャには参ったよな17時30分から17時45分にやるなんて、そんな時間、暇な学生しかインしてないだろ…一体誰得って話だよなあ」
思わずうんうん頷きながら、葵さんの顔を見ると苦笑いしてた。
「多分あれだろ、近い内に大々的にキャンペーンやる予定でその予行練習だったんじゃねえ?」
「そうよねえ! サーバーの負荷テストしてたんだわ、期待してガチャ券貯めなきゃねえ」
かわいそうにそんなゲームバランスを壊すようなやばいガチャはいくら待っててもこない事を教えたいが……そうか僕は既に龍ヶ崎に買収されてしまってたんだな……社会勉強になりました。
「すっかり大人社会の縮図を見ました」
桜が「晃師匠そうやって皆、大人の階段登っていくんだよ」
状況のわかってない沙羅が
「さっき当たったダサイ名のロンギヌスの槍だけど……」
皆青ざめながら
「しー!」
さて、神ガチャが行われることをあらかじめ知っていたチート3人娘の成果だが、
沙羅〔魔槍 ロンギヌス 星7 攻撃力+58 攻撃後は30秒間敵全体に呪いがかかり、
全てのパラメーターが20パーセント低下〕
桜〔魔弓 那須与一 攻撃力+36 命中+70 攻撃後は30秒間味方全体に命中力大幅アップ〕
葵〔聖剣 エクスカリバー 攻撃力+72 攻撃後は30秒間味方全体に攻撃力+20を付加〕
専用の基本スキルだけでこれだけの効果が付与されている、時間チャージによる必殺スキルはもっと凄まじいが、それに関しては、また機会があれば……
メイン防具も星7をゲットしたみたいでかなり防御力が上がってた。
「補助装備枠があるので、そこに使わない武器防具を星の多い順に入れておくと、総合力が上がるよ」
「本当だわ、1つ目の星7鎧を補助に入れたら大幅アップしたわ」
ああ今日のガチャの胸が強調されてない星7だな…こんどは声に出さないよう、
細心の注意をする…
「皆さんかなり、総合力の底上げには成功したようですね」
「私達既に上級者?」
「なわけないでしょ……レベル15の雛鳥です、武器だけでは強くなりません今日もパワーレベリングしましょう」
「はーい! 晃師匠よろしく」
「よろしくですわ」
「晃君期待してるわよ!」
湖畔にある草原エリアまでやって来た、この辺りは人間大の大蚊や大女王蜂などが大量に飛来してくるエリアで、群れを組んで次々に襲ってくる。
「虫、虫、虫! お師匠こんなのやだよ」
「奴らの動きはうっとうしいですが攻撃力と防御力はたいしたことありません、
桜さん魔弓 那須与一でじゃんじゃん撃ち落として下さい!」
「はーい」
命中補正のかかっている桜の矢は的確に大蚊や大女王蜂を射抜いていく、さらに沙羅の魔槍ロンギヌスも女王蜂を串刺しにして呪い効果で群れの動きをスローダウンさせて行く…
「葵さん今がチャンス!」
「了解しましたですわ!」
ゲージに溜まったエクスカリバーの必殺スキルを発動させながら切りつける……
直接は当たらずともスキル効果の光属性魔法が群れ全体に発動して、バッタバッタと大蚊と大女王蜂の群れを落として行く……、
さらに「風の精霊よ疾風の刃を以って…殲滅せよ!」
晃の風の中級魔法が炸裂かまいたちを伴う竜巻がこっぱ微塵にして行った。
「ザコ敵を一掃して行くのって気持ちいいわねー!」
2時間程でレベルも3は上がったようである……さて休憩ですかね!敵のいなさそうなのどかな草原地帯に移動、シートを敷いてテイクアウトした特製ドリンクを飲む若ハゲ予防っと!
「昨日のアニメも面白かったけど、他にもあるでしょ動画データプリーズ」
「お師匠昨日のアニメ見終わったよ」さすが入院中ですな……、
「じゃこれなんかどうかな!」
そのアニメはある日、神様の手違いで交通事故にあって死んでしまった主人公が
異世界に転生してハーレムな珍道中を繰り広げるコメディよりの話でこれまた、
古典と言っても良いような、ありふれた話だが、主人公がチートとは逆で低燃費なやる気のなさと冷めた感じがなかなか絶妙な具合が好きであった……。
「ちょ! なんかこの主人公の性格、晃君に似てるかも……キャハ」
「晃師匠って私達に近づいてくる異性の同級生と違ってギラギラしてないもんね」
「オホホ、そうですわね」
ほめられてんだか、なんなのかわからんが、一人でソロ狩りをやってるような性格ですから、アニメも好評でなによりである……。
「さーてそろそろ皆さんザコ敵を倒した位ではレベルアップしづらくなって来ます、そこでパワーレベリングの基本であるエリアボス退治に行きます!」
大女王蜂の女王である5メートルの全長を誇るエリアボスの場所までやって来た……こいつは2年前ハンティングワールドが始まった頃の最初の難敵で、数々のパーティーが挑んでは散って行ったなぁ……今彼女達が挑んでも一発攻撃を食らっただけでやられるだろう……。
彼女達には後方待機を命じて、徹底的に弱らせるから待っててと声をかける、
岩田さんに渡したイザナギパワーアップバージョンの改造は今日一杯かかると言われてたので、イザナギ以外の武器が頼りである、やはり攻撃力不足で相手を弱らせるのに8分位かかった。
「よし、頃合いだよー!」
彼女達を見ると、先程のアニメの2話目鑑賞中……、
「おいおい」
てへ……って感じの苦笑いを僕に向けてからエリアボスを光るポリゴンに変えて行った。
「すごいわ! さらにレベル2アップしたわ!」エリアボスだからな……。
次のエリアは大蜘蛛と大蟻の大群でみんなで蹴散らして行く、糸に絡まったみんなを助けながら……なんとかエリアボスであるジャイアントデススパイダーのところまで来た。また先程と同じ様に、彼女達を後方待機させて、ボスに挑みかかろうとした時、何やら後ろが騒がしい……振り返ると4人組の男〔25才位〕パーティー
が彼女達に絡んでいた……。
「なぁー姉ちゃんら、わいらとパーティー組まへんか? まだ初心者みたいやし、気持ち良うさせたるでえ」
「ほんまやでえ、はは」
沙羅が僕の方を指差し、
「間に合ってるわ!」
「なんや兄ちゃんの連れやったんか…しかし、男1人で女3人独り占めはあかんなぁ」
「姉ちゃんらあんなモヤシほっといてわてらと遊ぼやないか?」
「しつこいわねー最低ね!」
「今のはカチンと来たでーヒィーヒィー泣かしたくなったわ」
「兄貴この女や昨日始まりの街でNPCの女をからかっとったら文句つけて来たんわ」
桜の方を指してる、その件は初耳だが
「こいつか街の中でPVPできないことをいいことに、偉そうに説教たれてる女は」
「街の人はAIで知能を持ってるの! 人からいじめられると自閉症にもなるし、あまりひどいと運営から警告来るよって注意してあげただけだよ」
「しるかそんなの張っ倒してやるからPVP受けんかい!」
「桜は全然悪くないじゃない! アッタマ来たわ!」
「沙羅受けるな!」
と叫んだがすでに遅し目の前に浮かんで来たPVP挑戦状に沙羅さんはOKしてしまっている……。
ハンティングワールドではモンスターを倒すだけでなく、日頃の鬱憤をサバイバルゲーム的に晴らしたい人達の希望もあり、パーティー対戦プレイもある、PVPランキングで上位になれば、レアな報酬が貰える、但し対戦プレイはお互いやりたいもの同士でやってくれってことで、やりたくないパーティーは受けなければ良いわけである……沙羅さん頭に血がのぼってしまったか……仕方ないまず相手の戦力を見極める……。
人数は4人で同じである、職業とレベルはタンカーLV47、剣士LV50、魔法剣士LV52、槍兵ランサーLV50、リーダーは先程の言動からして魔法剣士だろう……ちなみに晃は忍者LV94である。
ランカーである晃はともかく、3人娘たちはLV20なので相手が一人でも彼女達に向かって行っては、10分も持たずに3人共やられる……晃がなんとか4人の相手をしないと……。
そこでPVPで複数を相手にする時の技をつかってみることにした!
晃は飛翔といっても過言ではない跳躍を見せ4人の上を飛び越え沙羅達の間に位置どりを取る……。
「なんや兄ちゃんLV94とはなかなかやなあ、しかし4人相手じゃ勝てるわけないやろ! うしろの女どもは初心者みたいやしな!」
沙羅達は葵の後ろに隠れるフォーメーションを取ってる、晃は剣士に素早く飛びつき、背後からスタンディングスリーパーを極める、素早くランサーの槍スキルが飛んで来るが、剣士を盾にとっているので、剣士に当たる、
「こら! なんで俺に当てるんや」
「お前もさっさと振りほどかんかい!」
「俺は近距離専門剣士やから格闘スキルなんてもっとらんわ」
「アホ! この役立たずが」
と魔法剣士の火魔法もやはり剣士に当たる、相手の攻撃を全て剣士に当てさせていると膠着状態に……。
いつの間にか晃が口にくわえていた毒吹き矢が残り3人の地肌に突き刺さる、
「ぐぬぬぬ! 毒矢や毒消しや!」
3人が毒消し瓶を取り出した瞬間に毒吹き矢で瓶を割る……回復機会を与える気はない。
「ぐぬぬぬ!」
これぞ晃のPVPを複数から挑まれた時の戦法であった! 膠着状態に巻き込み毒で相手の体力を奪っていく耐久戦法である! 相手にヒーラーがいなかったのも幸いしている。
「兄ちゃんなめたマネさらしおって! 早く行かんかい!」
とランサーに目配せをし、ランサーが沙羅達に突進して行く
「はっはざまぁ!」
ランサーの一撃を葵が大楯でガードする!
「初心者のガードなんか俺の必殺スキルで弾き飛ばしたるわ」
沙羅が葵の陰からロンギヌスの5連撃を加えるがレベル差のせいか避けられてしまった。絶体絶命……と思われた瞬間、ランサーの様子がおかしい……、
「うがががが!」しびれ罠にハマってる……。
「さあ反撃開始ですわ!」
追い討ちをかけるように桜がしびれ薬、毒矢、火炎瓶を浴びせて行く、すっかり動きの止まったランサーは沙羅の槍攻撃、葵の大剣攻撃を次々に浴びて、なすすべもなく消えて行った。
仲間が初心者にボコボコにされたのを見て動揺を隠せないでいる他の3人のスキをついてまず晃はスリーパーを解いて剣士を切り裂く。
そしてタンカーの後ろを取りしびれ薬で動きを止め斬りつけ、魔法剣士が攻撃してくると、今度はタンカーを盾にする。
「なめてんのか?」
相手がムキになればなるほど晃の思うままであった。そして最後は魔法剣士も
「このリア充、ハーレム野郎め!」
と捨てゼリフを吐きながら消えて行った……。
彼らは蘇生のために始まりの街の神殿に飛ばされたのである。
「リア充ハーレム野郎の称号を得ました」
アナウンスが聞こえてきた。
「キャハ何その称号?」
「オホホホ…晃君がリア充ハーレム野郎ですの」
その時桜が飛びついてきた。
「お師匠怖かったよ!」
「でも晃君のメールの指示通りにしたら勝てたわね!」
PVPが始まった瞬間より晃はこっそりメールで彼女達に指示を送っていた。
「本当にありがとうですわ!」と葵さん言うと、
「ありがとう! ちょっとカッコよかったかも!」沙羅がほめてくれた。
「お師匠強い!」
「しかし人と戦うのってあまり気持ちいいものではないですわね……」と葵
「なんかムシャクシャしたよ」桜も同様のようだ。
「そうね~ストレス溜まったわね! 高校生がストレス溜まった時はカラオケに限るわよね」沙羅の提案に……、
「センターシティに戻ってカラオケ行くのですわ」葵が答える。
晃は「オッケーでは行ってらっしゃい! それでは僕はソロ狩りに……」
と歩き始めたら、首根っこを掴まれた……振り返ると沙羅が、
「あんたも行くの!」
「そうですわよ」
「お師匠とカラオケだ!」
女子とカラオケなんて初体験イベント、今流行りの歌なんか知らんぞ! 雷太達とアニソン歌いまくる程度だ……。
そうだ彼女達に昨日見せたアニメのオープニングでも歌うか……それなら彼女達でも分かるだろう!
センターシティに戻りVR カラオケBOXに入り、さあスタンバイ!
「高校生は無料カラに限るわよねー」
VR カラオケには2種類あって普通に50円で一曲歌うやり方と、センターシティのAIがその人の通販ショッピングの傾向解析して、その人が好きな物のCMを3分間見ることにより、1曲分チャージされる無料カラオケのどちらかを選択できる……
沙羅がまずステージに上がると目の前の大モニターにタックンの新作映画のCMが
「あっ! この映画、今週の土曜日から公開だったわ、早速予約しなきゃ、葵、桜は?」
「もちろん行くよー」
「もちろんですわ」
「晃君は?」
「え! いや、さすがに僕は」
「まあ仕方ないわね他人に自分の趣味の押し売りはダメよね!
じゃあ3人分予約っと……でも晃君、映画終わった後はハンティングワールド待ち合わせだからね!」
「へい! しかし沙羅さんもまさしく見事に広告宣伝にハマりましたな!」
「それは間違った認識ね! 私はCMなんて見なくてもタックンの新作映画には行ってたからね、どうせならタックンが映画で身につけていたアクセサリーとかのブランド紹介の方がアフィリエイトとして正しいわね」
なんだかもっともらしいこと言ってるぞ……沙羅の歌はタックンのドラマの主題歌のアップテンポの歌を勢い良く上手に歌っている。
次の葵さんは高級ブランドのCM、流行りのバラードをお上手に……、
桜には最近やり始めたハンティングワールドのCM、やはり流行りのロックソングを……。
さあ晃の番だ……。
何やら甲高い女の子達が歌うテーマ曲が流れて来た、そしてスクリーンにアニメの女子高生4人組がアップで映り、
「ぶいある! ……それは放課後VR 部4人のメンバーが繰り広げる、VRを使って、時には手に汗を握る冒険、時にはのんびり世界のカフェめぐり、時にはスポーツ、時にはおしゃべりするるだけ…の彼女達の日常を描いた青春物語である」
とナレーションが流れる
「今日はサバイバルゲームやるわよ」
「今日はテニスをするでござる」
「今日はイケメン恋愛シミュレーションですわ」
「私たちVR 部!」……。
「キャハハハッ何それ超キモいんですけど」
「あらあら女子高生の日常の覗き見ですの!」
「師匠面白いでござるよ」
晃は真っ赤になりながら、確かにシリアスなアニメばかり見てると疲れるのでたまにゆるふわな、癒し系アニメ見ますよ、しかしこのタイミングで出てくるかな……。
ええいヤケクソだ!
恥のかきついでだ! 僕たちが小学校の時に社会現象になるまで流行っていた魔女っ子アニメのOPを入れた、
「キャハハハッ!」
「何事ですの……」
「お師匠……」
と最初は引いてた彼女たちであったが、
「悪い人達にお仕置きよ!」
とセリフを言った辺りから純粋で無垢だった頃の小学校時代を思い出したのかノリノリになって来て、ステージに上がって一緒に歌い始めた…最後は大合唱!
「楽しかったのですわ」
「晃師匠最高でござる」
もう桜さんったらすっかり〔ぶいある!〕のキャラの言葉が移っている。
最後に沙羅さんが「ありがとう……今日も楽しかったわ! 明日もよろしくね」
「お疲れ様でした」
とログアウト……「ふぅぅ今日もいろいろあったな」とまた興奮覚めやらぬ中、眠りにつく晃であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます