第12話 お嬢さまとヤリマンとメイドさん

僕と先輩はその日の授業があるためきているという動画を上げた張本人である鐘望さんを探しに行くことにした。

その張本人は意外なことにすぐに見つかった。

なぜなら向こうから満先輩に声をかけてきたからだ。


「あら、満さん。ごきげん麗しゅう!先日の庶民のお店での下級国民晩餐会とても楽しかったですわ。隣にいるのは彼氏ですの?」


「菜野さん、こんにちは。いえ!彼氏じゃないんですけど、ちょっと複雑な関係なんだよね。実はちょっと聞きたいことがあって」


がーん!やっぱ彼氏じゃないよな。当たり前だけど、ちょっと最近いい感じだったからショックかも。

僕は傷ついた。


「聞きたいことってなんですの?」


鐘望さんは首をかしげた。


「あのね。先日、前の飲み会の動画をネットに上げたのって鐘望さんかな?と思って」


先輩はずばり聞いた。


「えぇ、わたくしですけど。インスタグラムに皆様との思い出を上げさせていただいたのですわ~~~!!!」


僕は鐘望さんが満先輩を貶めるためにこの動画を上げたのではないことに気づいたが、

この事実は話さなければならない。僕は鐘望さんに切り出した。


「実は鐘望さんが上げた動画が今ネットで大変なことになってるんだ。」


満先輩が酔っ払って赤ちゃんに戻ってしまっている動画の音MADや、BB先輩劇場を鐘望さんに見せた。


「まぁ、これは!?(キュピーン☆)素晴らしい映像作品ですわね!人の業を表した芸実作品!まるでピカソのようですわね。とても前衛的ですわ。

満さん、あなたがお作りになったのですの?」


こ、これが芸術!?ちょっとこの人ズレてるのかな?


「いえ、あの~、鐘望さんが上げた動画がネットで話題になってしって、生まれた作品たちです。」


「えぇ!?私の動画なぜ、こんなにも広がってるんですの?しかも、芸術がこんなに生まれるなんて!?」


「実はネットでこういった大学生の飲み会でのハプニングの動画を、さらし者にして楽しんでいる人たちが沢山いるんです。」


「そういえば、あたくしのアカウントは鍵アカウントではなかったですわ。迂闊でしたわ~~~!!!

誰かが勝手に持ち出して、満さまをネット上の遊具にされたのですわね!許せないですわ!!!」


「もう、この動画はツイッターでは10万RT、動画サイトでは100万再生を超える動画もありまして、もう勢いが止められない状態なんです。」


「え!?あたし、そんなことなってるの!?超有名人じゃん!?」


満先輩はてへへと照れている。やっぱ、この人なんかズレてるてるなぁ。

鐘望さんは「う~ん」と、顎に手を当ててなにか考えていた。


「もうこんなに広がっていたんじゃ、止められないですよね。」


万事休す。もう、この黒歴史は満先輩のネットタトゥーとして一生残っていくのか。

一生ネットの宝物。誰かがそんなうまいこといってたっけ。ハハハ。

絶望していたとき、鐘望さんが茂みに声をかけた。


ガサッ!!茂みから突如、銀髪碧眼の美少女メイドが姿を表した


「ルイス。ちょっと頼みごとがあるんですの。今から送る動画関連のものを全て削除をお願い」


「話はすべて聞いておりました。もうすでに手は回しております、菜野お嬢様。」


ルイスと呼ばれたメイドが現れたそのわずか2分後。ルイスが鐘望さんにニコリと微笑みかけた。


「お嬢様、ご依頼いただいた件の動画ですが、世界中のネットから存在が消えました。現存するのはお嬢様のスマートフォンの動画のみでございます。」


「ありがとう、ルイス。手間をかけさせましたわ。あと、その動画を広めたものを、社会的に復帰できないように制裁お願いしますわね。」


「御意でございます。速やかに行動を移します。また、なにかございましたらご連絡くださいませ。」


そういった後、ルイスは茂みに煙のように消えた。

満先輩と僕はその光景に唖然としていた。


「もう、大丈夫ですわ」


「え!?もう大丈夫ってなにが?」


「だから動画の件ですわ。もうネット上から消えましたの。わたくしの落ち度でお二人をご心配させて申し訳ないですわ。」


「ま、まさか!もうネットにあんなにも拡散してるのに!?」


僕はすぐにスマホで例の動画を探してみた。

ツイッターの記事は削除され、さらにあらゆる動画サイトから例の動画が消えていた。

ニコリと鐘望さんは笑顔になったあと


「大変ご迷惑をおかけしましたわ。動画を作って広めたものにはきついお灸をしますので、再発することはないと思いますわ。そして....。」


ポチッ。


金望さんは例の動画を自分のスマホから削除した。


「これでこの世にあの動画はなくなりましたわ!」


僕はこのものの数分でネットに広がった動画を沈下させる鐘望さんの力にただただ戦慄していた。

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