第10話 ヤリマン 一生ネットの宝物に
先輩は淫靡な顔からパッといつもどおりの無邪気な笑顔に戻った。
「えっへっへ!ひっかかった~!!!冗談だよ~~!!」
「せ、先輩!冗談はやめてくださいよ!」
「ごめん、てか、ごめん、どいてくれないかな?あと、服、着よ?」
「って、そうだった!すいません!服、着てきます。」
僕は満先輩の上から飛び退いた。
一旦、落ち着き、パジャマに着替え、髪を乾かし、
気まずいながらも風呂場を出た。
「満先輩、さっきは失礼しました。実はツイッターで先輩らしき人が酔っ払って
赤ちゃんみたいに振舞っている動画が、すごい勢いで拡散してるんです。
ちょっと見てもらえますか?」
赤ちゃん…と、小さく先輩が呟くと、
一瞬、先輩の顔が曇った気がした。
そして、僕は満先輩に先ほどの動画を見せた。
「どれどれ〜?そんな面白そうな動画があるの〜?」
さっきの曇った表情の先輩から、いつもの笑顔に戻りスマホを受け取った。
最初は笑顔でスマホを見ていた先輩だったが、
みるみるうちに無表情になっていき顔が青ざめていく。
「う、嘘、マジ…。なんでこんな動画が出回っているんデスカ。」
満先輩は気が動転しているのか、スマホを持つ手はブルブル震えており、口調が硬くなっている。
「み、満先輩。大丈夫ですか?これって満先輩じゃないですよね?」
満先輩はカチコチとロボットみたいに、スマホの方を見つめていた顔を僕に向けた。
「こここここここ、コレ。あ、あ、あ、あた、あた、アタシのののの。なんでこんな動画が、ががががが。おみ、おみじゅ、おみじゅください!」
先輩、動揺しすぎィ!壊れたロボットみたいになってるよ…。
満先輩は近くにあった焼酎瓶を開けると、水と勘違いして一気に飲み干した。
「わ〜〜〜〜!!!それ、水じゃなくて、焼酎です!!」
満先輩は焼酎の一気飲みのせいでバターンと倒れてしまい、静かになった。
…し、死んでないかな?
「あ、あの~満先輩?生きてますか〜?」
僕は静かになった満先輩の頬をペチペチと叩いてみた。
満先輩の顔は赤くなっており、目を閉じていた。
と、次の瞬間、
「わ〜〜〜〜ん!!ママ〜〜〜〜!たちゅけて〜〜〜!!」
満先輩は動画のように赤ちゃんになって泣き出した。
バタバタと身体を駄々っ子のように揺らし暴れまくっている。
満先輩の大きな胸も激しく暴れている。
ど、どうなってるんだ!?いつもは酔っ払ってもこんな風にならないのに。
もしかして、焼酎を一気に飲んだせいで、ものすごく悪酔いしちゃったんじゃ!?
僕は急いで水道からコップに水を汲み、先輩に飲ませようとした。
「先輩!水、飲んでください!」
寝っ転がりながらも暴れる先輩の腕を掴み、
水を飲ませようと押さえ込んだ、
と思ったが…
「やだーーーーーー!!!ママのおっぱいがいいーーー!!!」
次の瞬間、僕の目の前に星が舞った。
「ガフッ!」
暴れる満先輩のパンチが僕の右頬に炸裂した。
いい右フックだぜ…じゃなくて!僕はもう一度、めげずに先輩に水を飲ませようとトライした。
「いいこでちゅね〜!お水飲めまちゅか〜?」
赤ちゃん化している先輩に合わせ、僕は必死に水を飲ませた。
「やぁらぁ!!!ままのおっぱらいいーーー!!(※やだ!ママのおっぱいがいいと言っている)」
抵抗する先輩の口に無理やり水を流し込んだ。
「いいから飲んでください!」
ゴフゴフ!と、満先輩はむせながらもなんとか水を飲んだ。
「満先輩、よく飲めましたね!先輩、先輩?」
「…。」
先輩は静かになったかと思うと、眠ってしまっていた。
「はー…。」
一体、なんだってんだ!?この状況!?
僕は満先輩を膝枕しながら途方に暮れていた。
そうしてる間にも例のあの動画のリツイート数は
5000,6000,7000と拡散を続けていっていた。
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