ミッション2—2 プレイヤー救出方法仮説
田口との会話を終えた翌日、ファルとヤサカ、ティニー、ラムダ、クーノ、そして2人のレジスタンス隊員は、多葉のある
ヤサカ、ティニー、2人のレジスタンス隊員は、クーノの運転するワゴン車に乗っている。
そのワゴン車を追う、ひときわ目立つ車――ヴェノムを運転するのがラムダ、助手席に座るのがファルだ。
「なあ、ひどくないか? お前は危ないからヤサカと同じ車に乗るなって、ひどくないか?」
「仕方ないですよ! パンツ見るし、胸見るし、裸見るし、道徳ステータス低いし——」
「おい! なんで俺がヤサカの裸見たの知ってる!?」
「クーノさんから教えてもらいました!」
「あいつ……!」
「ファルさんよ、さすがです! 変態ステータスも上がったんじゃないですか?」
「残念ながら上がったよ」
このゲーム、よく分からないステータスがいくつか存在する。
変態ステータスもそのひとつ。
どうもこの変態ステータスが高いと、女性NPCから白い目で見られ、いかにもなNPCに好かれるという、良いことなしのステータスだ。
さすがにこれは、チートを使わず0にしたはずなのだが、ファルの変態ステータスは現在150もある。
ついでに、ファルたちの現在のステータスはどれほどなのか。
まずは一般的なレジスタンスメンバーのステータス。
プレイヤー名『アマモリ』
最高
筋力209 素早さ146 耐久103
反応84 命中42 運転93 カリスマ11
視力1・5 嗅覚17 聴力21
善悪66:34 幸運不運49:51
道徳78/100 清潔60/100
掃除27 洗濯45 料理32 買い物87
コミュ力141 動物93
モテ度72 変態63 虫取り59
スキル『追尾弾』『緊急回避』『逆光阻止』
アビリティ『写真家』
一般男性が戦闘方面で2年間普通に過ごせば、ステータスはだいたいこうなる。
ステータス上げチートを使ったログイン3日目のファルのステータスは以下の通りだ。
プレイヤー名『ファル』
最高
筋力340 素早さ321 耐久289
反応95 命中107 運転158 カリスマ72
視力1・8 嗅覚53 聴力88
善悪32:68 幸運不運85:15
道徳13/100 清潔64/100
掃除40 洗濯51 料理38 買い物167
コミュ力33 動物20
モテ度8 変態150 虫取り194
スキル『痛み緩和』『逃げ上手』『節約上手』
アビリティ『潜伏』
特殊チート『NPCコピペ』
ログイン3日目で、2年間ゲーム世界に住みっぱなしのプレイヤーを優に超えるステータスがいくつもある。
そして何より、驚くべき道徳・モテ度・善・コミュ力の低さ。
驚くべき体力・幸運・変態・虫取りの高さ。
ただし、コミュ力やモテ度、変態などはNPC相手のステータスであって、プレイヤー間では意味のないステータスである。
ティニーとラムダのステータスは以下の通り。
プレイヤー名『ティニー』
最高
筋力264 素早さ329 耐久207
反応111 命中180 運転94 カリスマ105
視力1・6 嗅覚89 聴力91
善悪77:23 幸運不運70:30
道徳85/100 清潔94/100
掃除73 洗濯84 料理25 買い物208
コミュ力91 動物148
モテ度66 変態43 虫取り21
スキル『爆発強化』『ダイエット』『霊感』
アビリティ『爆発マニア』
特殊チート『武器・道具出し放題』
プレイヤー名『ラムダ』
最高
筋力381 素早さ255 耐久370
反応72 命中103 運転269 カリスマ108
視力2・0 嗅覚43 聴力42
善悪50:50 幸運不運50:50
道徳81/100 清潔98/100
掃除37 洗濯44 料理29 買い物106
コミュ力188 動物149
モテ度93 変態67 虫取り19
スキル『衝突回避』『ニトロ』『ジョーカー』
アビリティ『スピード狂』
特殊チート『乗り物出し放題』
こうして見ると、ステータ上げチート持ちのプレイヤーは別次元の強さというわけではないものの、ステータスが高いのは確か。
ただ、イミリアでのステータスは飾りに近く、大事なのは
最後にヤサカのステータスだ。
プレイヤー名『ヤサカ』
最高
筋力283 素早さ350 耐久94
反応125 命中209 運転81 カリスマ96
視力2・0 嗅覚27 聴力38
善悪89:11 幸運不運69:31
道徳97/100 清潔99/100
掃除31 洗濯44 料理91 買い物72
コミュ力145 動物150
モテ度67 変態12 虫取り100
スキル『シールド』『敵察知』『ロックオン』
アビリティ『スナイパー』
なんと、ヤサカはチート持ちレベルのステータスだ。
これを知った時、ファルたちは声を出して驚いた。
レイヴンによると、ヤサカはイミリアで5本の指に入る強さのプレイヤーらしい。
偶然、ファルたちは最強のプレイヤーと出会ってしまったのである。
見た目が美しいヤサカは、ステータスまで美しい完璧超人だったのだ。
「ヤーサに嫌われるの、やっぱり嫌ですか?」
「そりゃ、あんなに頼りになる人に嫌われたくはないだろ」
「おや? 嫌われたくない理由は、それだけじゃないはずですよね? ファルさんだって男の子なんですから、あんなに美人さんのヤーサに――」
「ラムダ、少し黙ろうか」
ニヘヘと笑うラムダ。
ファルは苦笑しながら、ヤサカたちの乗るワゴン車に視線を向ける。
すると、なぜだろう。
ワゴン車のサンルーフからティニーが体を乗り出していた。
直後、焦りに焦ったヤサカがティニーを車内に引きずり込む。
「今の、なんだ?」
「あれじゃないですか? ティニーのロケラン衝動!」
「そっか。なら仕方ないか」
これで納得できる自分が怖いファル。
ただ、ティニーに関しては気にするだけ無駄なのだ。
「ところでファルさんよ、本当にうまくいくと思います? プレイヤー救出」
「田口さんの話は聞いてたろ」
「どの話です?」
「ダイキュウさんたちのログアウトについて」
「ああ! 聞いてました! あれですよね! 死亡後メインメニューに戻ったら、リスポーンの表示が真っ黒になって、勝手にログアウトされたって話!」
「そう、それ」
昨日にファルが質問攻めした結果、田口が教えてくれた情報。
このログアウトの流れを聞いて、ファルはひとつの仮説を立てたのだ。
「レジスタンスは2年間もログアウト方法を探して、結局はまだ見つけられてない。じゃあ俺たちとあいつらの違いはなんだ? と考えた時、チートを持っているか持っていないかっていう答えにたどり着いた。きっと、答えはそこにある」
「ふむふむ」
「たぶんだけど、チートを使ってたダイキュウさんたちはイミリアに、迷惑プレイヤーとしてアカウントを
「ほうほう」
「ゲーム側からの強制ログアウトは、外部からの強制ログアウトと違って安全。絶対に死ぬことはない。それでも安全性を考えて、ゲーム側からの強制ログアウトは脳に負担の少ないメインメニューだけでしか行われない。コトミさんはそう言ってた」
「つまり、どういうことですか!?」
「あれ? まだ分からない? というかこの話、出発前にしたよな」
「聞いてなかったんです!」
「清々しいくらいはっきり言うんだな。まあ、つまりチートを使ってイミリアから迷惑プレイヤー認定されたプレイヤーは、メインメニューに行くと強制ログアウトされる、っていう仮説が立てられるんだよ」
「なるほど、どういうことですか!?」
「……え?」
「どういうことですか!?」
「……クソ野郎は追放される」
「おお! なるほど! ファルさんよ、ナイスな思いつきです!」
「ホントに分かってんだろうか……」
ラムダとの会話に慣れない。
妙に高いテンションも気になる。
おかげで大きな胸がよく動くから、文句はないのだが。
「じゃあファルさんよ、クソ野郎の条件は? 夜の仕事までして稼いできた彼女の金でギャンブルするとかですか?」
「そりゃ間違いなくクソ野郎だが……。ダイキュウさんたちはチート持ちだから1発アウトだったんだろうけど、他のプレイヤーがどうすれば迷惑プレイヤー認定されるのかはまだ分からない」
「分からないんですか?」
「ああ。だから俺たち、それを調べるために移動中なんだろ?」
「そうだったんですか!」
「知らなかったのかよ……」
先行き不安だが、ファルの仮説がプレイヤー救出につながれば、救出作戦の打ち切りも回避できる。
ファルの仮説の検証は、重要なことなのだ。
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