factor.3 - 2

「ちょい待って、逃げんといてっ、お時間は取らせませんからァー!」


「うるせえ追ってくんなぁ! まだ俺らをゆする気かっ、人でなしがー!」


 なにやら誤解が生まれていることに気付き、真は逃げる青年二人組に弁明の言葉を何度も投げかける。が、聞く耳持たずと言うか、彼等自身の悲鳴が狭い路地中にこだましているせいで、真の声などあちらの聴覚に感知すらされていなさそうだ。


 もう失うものが何も無いなら、話ぐらい聞いてくれてもいいのに……と追跡者は嘆息する。


「ホンマに怪しい者とちゃいますってっ、二、三質問するだけやから! 簡単なインタビュー感覚でお願いしますて、ねっ!」


「嘘吐けえぇぇンな腰に木刀ぶら下げたインタビュアーがいるかああぁ!」


 嗚呼ああ、なぜ人は話し合い歩み寄れないのだろう。

 平和主義をモットーとする真は、ビルの隙間から覗く青を見上げ独白する。コンビニ前でたむろしていた彼等に声を掛けた際、ベルトに差していた木刀に気付かれてしまったのが運の尽きだったのだ。


 ……いや、そういえば幼少期から、とっくに運は枯渇していた気がする。男は独白ついでに二十五年分の生涯を回想し、幸運だった出来事を検索してみたが、ほとんどヒットしなかった。自然と視界が水分でかすむ。


 袖で目元を強くこすり、入り組んだ路地裏に視界を戻した時、あの騒がしい二人の姿は何処にも無かった。

 正直、港区にはさほど詳しくない。それはここ最近住み着いた彼等も同じだろうが、双方に土地勘が無い場合、圧倒的に逃走者の方が有利だ。


 目の前には、五メートル先が見えるかどうかも怪しい、暗い路地が三本。

 足を止め呼吸を整えながら耳を澄ますが、あのシティ系ターザンこと遼平ではあるまいし、特定の足音など聞き取れない。


 汗で湿った金髪を掻きつつ、真はジーンズのポケットから携帯を取り出して、画面も見ぬまま上空へ問いかける。


「すまんフォックス、見失ってしもた……。この辺りにも監視カメラぐらいあるやろ? どっかに二人が映り込んでへんか?」


 これまで音声は携帯を通して届けていたが、視界の方はずっと、ハッキングで何処かしらのカメラを乗っ取り見ていたはずだ。男は周囲を見渡し、相方の眼を探しながら、間もなく違和感に気付く。


 「お前は五秒口を閉じたら死ぬのか」と詰問したくなる情報屋の声が、いつの間にか止んでいるではないか。


 まさかと思い液晶に目を落とせば、繋いでいたはずの通信アプリは勝手に閉じられており、待ち受け画面で愛妻が微笑んでくれていた。やかましい狐面より、彼女の方がよほど眼と胃に優しい――とつい頬を緩めてしまったが、頭を仕事に切り替えて渋々相方を呼び出す。


 三コール、四コール鳴り終わっても回線が繋がる気配は無く、そして十コール目に。


『お客サマがお掛けになりやがッた通信はッ、現在電波の届かない場所に居るかぁー、単に僕が出たくないため繋がりませぇーん! ご用の方は、ピーッという発信音の後にメッセージを残してもいいよんッ』


 ふッぴひゅー、とやり慣れていない上に適当すぎる口笛の録音が続く。それでも尚、律儀にメッセージを残そうと真が唇を開いたところで、一方的に通信は切断された。

 ……画面を暗転させた携帯が握り潰されなかったのは、ひとえに、待ち受け画面で咲く嫁の笑顔のおかげである。


「ああァンの腐れ狐エェ! こっちが汗水流して駆けずり回っとるのにっ! あっちは涼しい場所でポテチ食っただけで! とうとう通信まで切りおったド阿呆あほうがあァッ!」


 正しく猛虎の咆哮ほうこうに近いそれは、悲しいぐらいに独り言だった。


 しかし彼の無念が天へと届いたのだろうか、そこで思わぬ怪我の功名に繋がる。

 路地裏中に怒声がこだました拍子に、左側の道の先で、誰かが焦って物陰に引っ込むような影が見えたのだ。


 本来の標的――もとい目的が諸悪の根源なのだと決めつけた真は、トンズラこいた相方の分まで仕事を完遂しようと、血走った眼で物音のしたゴミ収集ボックスへ歩み寄る。


「くっくっく……追いかけっこはここまでのようやなァ? エエ加減観念して、ワイの質問に二三答えてもらおうやないかい!」


 ダメ押しとばかりに勢いよく踏み下ろしたスニーカーで、舞い上がる砂埃すなぼこり。業者に回収されなくなって久しいのであろう、老化したダストボックスに男が腕を伸ばした、その時だった。


 しゃらん、と。

 暗然たる路地裏を、空から地へ、銀の一閃が貫いた。


 鼻先で視界を左右に切り裂いた光に呆然とし、冷や汗と共に視線も地に落とす。つま先と一センチも距離を置かない位置に、スローイングナイフが突き刺さっていた。


「うるせェんだよギャーギャーと、さかりのついた子猫風情が。人様の領域を侵すたぁ、イイ度胸じゃねェか」


 しゃらんしゃらんと、鈴を鳴り合わせるような軽い音が、頭上から繰り返される。

 音源を見上げると同時、男の口から、思わずかすれ震える声が漏れた。

 無計画に建てられ、路地を圧迫する廃ビルの三階。割れた窓のふちに腰掛ける人影に、真は最悪なミスを犯してしまったことに気付く。


 白一つ無い蒼天と対比するかのように、声の主は黒以外の色を持ち合わせていなかった。ただ一つ、ひたいに固く結ばれ、それでも長く余った布地を風にゆだねたのハチマキを除いては。


「《スカイ》の縄張りに足を踏み入れた、匹夫之勇ひっぷのゆうに敬意を表し――このオレ様が直々に始末してやんぜ、余所者よそもの



 青色。

 世間一般において平静、安全、希望をイメージさせるそれは、この街でのみ正反対の意味を持つ。

 騒乱と、危険と、絶望。ここシブヤでは、その全てを内包し掌握する色が青なのだ。



 壁を蹴っただけで高く跳んだ相手の、青空を背にしたカラスのごときシルエットが、酷く目に焼き付いた。猛禽類もうきんるいを彷彿とさせる、黒の瞳が余所者えものを捕らえる。

 しゃらしゃらと金属の音を連続させながら、捕食者の刃が、今度は確実に真の胸めがけ襲いかかった。


「なっ、アカンて待っ、――!?」


 本来、短剣の持つ殺傷能力は低い。まして投げナイフなど、狙い通り飛ばせたら拍手で迎えたいぐらいの、曲芸の域を出ない技術だ。

 どこぞの破壊屋のように爆薬を取り付けている風も無いそれは、一見すると脅し以下のアクションだった、のに。


 真の右腕が反射的に動き、腰から引き抜いた木刀で、その一撃を押し止める。

 裏社会の人間に、一瞬といえど死を感じさせた。足場の無い上空から、小型ナイフとは思えぬ重量を放った人物は、微かな砂埃を立て着地する。


 木刀を握り締めたまま痺れる右手に構わず、真は先程、思わず言葉を失った光景が錯覚ではなかったと知る。


「こ、ども……?」


 小さく見えた影は決して遠近のせいではなく、実際、眼前に降り立った人物は年端もいかぬ少年のようだった。身長は純也と大差ないくらいで、年頃もちょうど同じ、十代半ばに届くかどうかのやせた子供だ。


 素肌の上に松葉色のノースリーブパーカーを着ており、ハーフパンツの腰に付けられた銀のチェーンが、しゃらしゃらと路地に響いていた音源らしい。

 荒んだ印象を抱くのは、くたびれた古着と、そこから覗く四肢に包帯を巻き付けているせいだろうか。総体的に、一体どちらが子猫だと問い返したくなる風貌である。


「おい金髪……、だあぁぁれがガキだチビだぁ!? 黙れもういっぺん言ってみろ!」


「いや言うてへんてっ、チビなんて一言も口にしてへんし言うの黙るのどっち!?」


「じゃあ間を取って死ねえェェ!!」


「アカンここ日本語通じひんー!」


 少年の細い体躯、すり切れた衣服のどこに隠していたのか見当もつかない量のダガーが、男のあらゆる急所めがけ投擲される。いつから渋谷の公用語は、こんな凶悪な肉体言語ボディーランゲージになったのだろう。

 飛んできたナイフの半分は身をよじって回避し、もう半数は木刀で弾き返しながら、小さな捕食者の姿を再び上から下まで観察する。


 どんなに腕の立つ者であっても、子供を傷つける様な真似は避けたい。ましてスカイのメンバーなら尚更だ。

 絶対に、彼等を敵に回してはいけない。こちらの正体を知られてはならない。



 現代の社会問題の一つに、不況により表社会から転落し、しかし裏側で生き抜けるだけの力量があるわけでもない、望まずして半裏はんうらとなった人々の急増がある。

 彼等が引き寄せられるように集まり、暮らしだした街を表社会は避け、とうとう警察すら手を引いた――


 そんなスラム化した渋谷を初めて統治し、保護することに成功したのがグループ《スカイ》である。


『掃きだめみてぇな場所だった。ホームレス、捨て子、病人にストリートギャング……表社会には要らねえと、つまみ出された人間だらけの街だ。一般人からはゴミみてぇな目で見られて、裏側の奴らには好き放題なぶられる』


 真に以前そう話してくれた男は、重い一息の後、苦々しく続けた。


『……なら爪弾き者同士で争っても仕方ねぇ、と言い出した奴がいた。男も女も、老いぼれもガキも街中の人間を一つの巨大な群れにして――《家族》としたんだ』


 ゆえに、彼等の結束は何より強固。その原動力は誰より純粋。

 家族の証である青色、それを身に付けた者にひとたび害をなせば、街そのものを敵に回したも同然となるのだ。



 真の脳裏を過るあの男の顔、それが雑念となり小さな隙をもたらす。

 少年の姿が消えていることに気付くのと、背後で銀の金属音がしたのは、ほぼ同時。とっさに振り返るだけで精一杯だった警備員の目と鼻の先に、ニィッと口角を引き上げた邪悪な笑みがあった。


 左脇腹に響く激痛。

 斧のような強烈な横蹴りを受け、真はよろめきながらもバックステップで距離を取る。あんな枝のようにか細い脚一本で、肋骨ろっこつが軋み、肺も呼気を全て失っていた。


「ハッ、鈍間のろまのくせに踏ん張るじゃねェか。テメェどこのグループの回しモンだ?」


「ちゃいますって誤解ですホンマに! ワイはうっかり迷い込んでしまった、善良かつ無力な小市民ですっ!」


「ほーう? 今はシブヤの外でも、小市民が木刀を持ち歩かなきゃならねェ治安なのか。物騒な時代だなぁはっはっは」


「まったく嫌な世の中になったもんですハハハハ」


 「嘘つけェ!!」「ヒィすんませんっ!」少年の怒号と一緒に飛んできたナイフに対し、男は土下座しながら避けるという斬新な非暴力スタイルを見せる。


 かつては都内全土を手中に収めるほどの覇者だったが、三年前のある出来事を境にグループは半壊しており、最近ではスカイの話題を耳にすることも少なくなっていた。かろうじて残ったメンバーで渋谷区内だけは死守していると聞いていたが、こんな子供までも、警戒心と凶器を振りかざさねばならぬほど逼迫ひっぱくしていたとは。


 誰に向けているのか自身でもわからない悲しみと心苦しさが、真の胸を這い回る。栄養が不足しているのであろう、やせ細った脚で蹴られた脇腹が、内側からきりきりと痛んだ。


「まぁいい……オレ様も鎧袖一触がいしゅういっしょくじゃあつまらねェ。テメェが一体何者で、何の目的を持ってシブヤに乗り込んできやがったのか、死にたくなる程たっぷり吐かせてやろうじゃねェか」


「ワイは単なる愛の戦士であんさんらの縄張りを侵す気は無くてっ、あとこの木刀は呪いの装備的なアレで好きで持ち歩いとるわけやないんです……!」


「早速いらねェ情報吐くな、それと愛の戦士が呪われてんじゃねェーよ」


 準備運動のように少年がその場で軽く両足を浮かせる度に、腰に下げられた鎖の音が連続し反響していく。


 真がもと来た道には少年が立ち塞がっている。その横をすり抜けて逃げるには路地が狭く、また先程からの動きでわかるように、相手はあまりに速い。

 しかもここはシブヤ、彼等の庭どころかホームそのもの。追跡者に土地勘が有る場合、絶望的に逃走者の方が不利だ。


 しゃらんしゃらんと鼓膜にこびり付いていた音色が、ぴたりと止む。

 確かに視界中央で捉えていたはずの少年は姿形も無く、もはや直感を頼りに体ごと右前方へ転がる。上下の逆転した世界で、腰に結び付けたコートの裾が、刃物で裂かれていくのが見えた。


 今まで大量に放ち、外れて壁に刺さったナイフの柄を足場にして、少年はビルを駆け上がるがごとく跳び回っている。真の動体視力をもってしても、残像しか追えないほどに――


 ……大量に


 ゾクリ、と下腹部が凍りつく。警備員としての直感が、脳を揺さぶり警告する。


 まずい。まずい、まずいまずいまずいまずいこの子はまずい!


 感情的に投げつけているように見せて、その実、ここまでの全てが狩り場を構築するための布石。

 むやみに力を振るわぬ獅子のように、仕留める牙はただ一撃。


 しゃららん、と。


 今や男にとって警報にも等しい金属音が、すぐ後ろから聞こえた。

 反射的に、振り返りながら木刀を構える。が。


「え……っ」


 確かに鉄の音が鳴った後方には、誰もおらず。視線を地面まで下げれば、少年の動きに追従し揺れていたウォレットチェーンだけが落ちていた。


 もはや首を向ける動作すら間に合わない。

 再度振り向こうとした視界の端に、宙を自在に舞う黒い影が、ちらりと見えただけで。



ッ、たい――てんッッ!!」


 ただ一色で塗り潰したような現実感の無い蒼天に、それより濃い青のハチマキと、日を浴びてからす色に艶めく少年の髪が映えた。


 ビルを越えるまでに跳び上がった少年が、持てる限りの短刀を地上へ解き放つ。無数に降り注ぐ凶器はアスファルトを穿うがち、銀の豪雨がすべ無い男に突き刺さっていく。

 背中を襲う凄まじい衝撃。倒れないよう右脚を踏み出すも、ふくらはぎに刺さったナイフが食い込み、崩れ落ちた体をかろうじて木刀で支えた。



「……ほう。あれを喰らってまだ立っていられるたぁ――テメェ本当に何モンだ?」


 眼前に降り立った少年は、寒気を覚えるほど落ち着きはらっていた。十代半ばとは思えぬ、貫録をはらんだ静かな声で、じっと侵入者の目を見据える。

 背中に突き立ったナイフをゆっくりと引き抜きながら、真は乱れた呼吸と共に、苦笑にもならない息を漏らした。


「なに笑ってやがんだよ気色悪ィ。テメェあれか、いわゆるピンチになるほど燃えて精神論だけで強くなったりする、熱血マゾ野郎か」


「はは……っ、そんな主人公気質に見えます?」


「見えねェな、どっちかっつーと『モブ役C』ってとこだろ。オレ様はよォ、責めてもしいたげても屈しねェ、反抗的な目をする獲物が好きなんだよ。テメェみてェーな、腐った目は、特に嫌いでな」


 さげすんだ瞳を向けてくる少年は「ったく、まだ腐乱死体の方がマシな目ェしてんぜ。――っと」視線は獲物に固定したまま、何かを察知する。

 その数秒後に真にも大勢の足音が聞こえ、顔を上げれば、少年の後方から空色を身に付けた青年たちが駆けてくるではないか。


 「さっきから何の音だ!」「誰だっ、侵入者か!?」口々に騒がしく叫ぶ彼等が、少年の援軍であることは見るも明らかだ。元はこちらの落ち度とは言え、あまりの悪状況に真は舌打ちを隠せない。


「……確かに、あんさんの言い分は全面的に正しい。いや腐乱死体は否定したいけど。不用意にそちらの領域に立ち入り、申し訳ありませんでした」


「あぁ?」


 急に姿勢を正し頭を下げた侵入者に対し、少年はガラの悪い疑問符を投げ掛ける。男は礼の体勢から素早く腰を下げると、左手で木刀の鍔元つばもとを握り締めた。


「――ほんま、堪忍な」


 軽い言葉の割に今にも泣き出しそうだったそれは、今回の非礼を詫びているわけではないように、少年には思えた。

 確信が持てなかったのは、その右手が木刀の柄に触れた瞬間、黒い一閃が路地裏に突風を生じさせ砂塵を巻き上げていったからだ。


「ぶぇっ、げほっ、何だこれ!?」

「ちくしょう目に砂入ったっ、前が見えねぇ!」

「あっ、逃げやがったぞあの金髪ーッ」


「……追うな!!」


 口内と鼻孔に入った砂を吐き出しながら追おうとした若者たちは、甲高い怒号一つでビクリと動きを止める。彼等の胸までしか背丈のない子供が、まとわりついた砂埃を払いつつ、かぶりを振った。


「アレはテメェらで敵う相手じゃねェよ、深追いはよせ。文字通り暴虎馮河ぼうこひょうがってやつだ。……ハッ、とんだ小市民が居たもんだな」


 少年も砂を吸ってしまったのか、浅い咳をしながら老化したダストボックスに歩み寄る。「おい」とだけ短く声をかけると、汚れた収集箱の物陰から、少年よりさらに一回り小さな女の子が這い出てきた。


 肩を震わせ泣き付いてきた少女の髪から砂を払ってやり、「もう怖くねェよ、大丈夫だ」と静かに。少女は青のリストバンドをした腕で、ぎゅっと彼のパーカーを掴む。


「ったく、あれほど境界線には近付くなって言っただろうが。ガキは早く居住区へ戻れ。おい、誰かこのチビを送ってやれ」


「ごっ、ごめんなさ……っ」


「違ェだろ。こういう時は何て言うんだ?」


「……あ、ありがと、う……?」


「よし、上等だ」


 余所者には決して見せなかった、屈託のない笑みを浮かべ、ガシガシと少女の髪を撫でてやる。青年の一人に彼女を任せ、その小さな影も路地裏の向こうへ消えた頃に。

 振り向くだけで大きく青の弧を描くハチマキを額に、今日一番の恐ろしい顔で口角を引きつらせながら。


「……で。境界線の見張り役であるテメェらが、な、ん、で、オレ様より駆けつけるのが遅ェのか、説明しやがれ有象無象うぞうむぞう共がぁッ!」


「すすすんません俺らちょっと用を足しに、」


「全員で行く必要ねェだろ女子か! テメェらみてーな穀潰ごくつぶしは、昼飯抜きだ!」


「ごめんなさいそれだけはぁ!」


「ごめんで済んだらスカイは要らねェんだよォ!」


 少年はまだ咳を繰り返しつつ「日が暮れるまでに、その辺のナイフ全部拾ってこい!」とだけ言い残し、シブヤの奥へと帰っていった。

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