復讐
岩本ヒロキ
嘘ツキ
冷たくなった彼が見つかったのは次の日の早朝だった。
オレンジ色に染まる教室。真っ白な雪の中一緒に歩いた帰り道。あの頃から、ずっとずっと一緒だったね。
初めて君が私に見せた弱い姿に約束した。
「最期まで、一緒にいよう」
あんなにも一緒にいたのに。出会ってからもう何年も経つのに。
あの日は雨だったね。私を家に送った帰り、何にも言わずに抱きしめてくれたよね。君の大きな身体にすっぽりと収まって、初めて気づいたよ。君はこんなにも華奢だったかな。こんなにも、男の子だったかな。
あれが、温かい君に会えた最後だった。
授業中、ノートに落書きしてごめん。眼鏡に指紋つけて遊んでごめん。せっかく整えた髪、くしゃくしゃにしていじってごめん。君の上着着て嬉しくて走り回って困らせてごめん。
いっぱい、いっぱい困らせてごめん。でもその度に困った顔で頭を撫でてくれる君の仕草が、なぜだかすごく嬉しかったの。
君からの最後のメールに返信が出来なくてごめん。
君と出会って10年。今まで一回もお互い口にしたことなかったね。でも、きっと分かっていたんだよね。私がなんて返事するか。でも、ひどいじゃない。私からの返事も聞かずに行っちゃうなんて。
嘘ツキ。約束したじゃない。どうして、私だけ残したの。
日に日に。何年も経って、君との思い出が鮮やかに蘇る。そして、花火のように散ってゆく。今までいっぱい困らせた。そんな君からの私への復讐は、最期まで暖かくて悲しかった。君に伝えられなかった言葉はずっと頭の中を駆け巡る。
ずっと君を忘れない。
復讐 岩本ヒロキ @hiroki_s95
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