第10話 第一車両

 星座! 星座! 星座!

 最後の車両は星に満ちていた。

 何故、最後かというと、その車両の奥には車掌室とご丁寧に書かれたドアがあるから。

 ジジ……と言いそうなほの暗い照明に、キラキラと宝石のように光る石が床、壁、天井それぞれに埋められていて、それを銀の線が結んで、星座の姿を指し示している。上野の大きなプラネタリウムでも、こんなに綺麗には映えない。

 良く見てみると右側のドアに一つだけ赤い石がある。滑らかなそれにふれながら

「何かしら」

 男の子は少し得意げに

「リュウの目だよ」

「龍の目……」

「昔、リュウはこの宇宙を自在に駆けていた。そして方々の星くずを食べて生きていた。その時の一匹が太陽系で迷子になっちゃって、必死に親のリュウはその子を探した。けど、見つからなかった。長いこと探している内に涙が出てきて、ウサギみたいに目が真っ赤にはれ、ついには力尽きて、星になった」

「そうなの」

 龍の子はどうしているのだろう?

 いつか沢山の星に導かれて、故郷に戻れていたらいいな、と思う。

「これはね、この車両を星の展示場に変えていった人から聞いたんだけどね。ああ、全くバカな奴だよ。どんなに綺麗に飾ったって、やがて火に巻き込まれて、無くなってしまうのにさ」

 男の子はため息をついた。

「でも、いいんじゃないかしら。一人でも見てくれたら、その人は報われるんじゃないかな。少なくとも、わたしは忘れない。

 いつか無くなるって結局の所みんなそういうものでしょ? どんな本も、どんな絵も、どんな人も、いつか無くなる。時に洗い流される。けど、それでも何かを残したいって気持ち、分かる」

 少なくともわたしは忘れない。

 この星座もこの不思議な電車での出来事も。

「へぇ、けっこうロマンチストなんだ。まぁ、いっか。さっ、車掌室へ行こう」

「うん」

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