例えるなら渡辺淳一の『失楽園』のような。
道ならぬ恋に染まり、不義の契りを交わしてしまったオトナたちの、どうにも止まらないジェットコースターストーリーを味わいたい方へ。
そこに待っているのは堕落しかないのですが、人の情欲というものはかくも制御が効かないのか……と恐ろしくなります。
社内恋愛のもつれ、不倫と浮気、二股三股当たり前。
挙句の果てには女装男子にまで手を出す始末。
でも、そのゾクゾク感は、なぜか快感でもあるのです。
我々は普段、欲望を抑制していますからね。でも作中では、堂々とやってのけちゃっている。そこに一抹の「羨ましさ」を見出すのかも知れません。
日本最古の女タラシ小説(笑)「源氏物語」まで引用し、リビドーのままに女を抱き続ける「性(さが)」を、否応なく叩き付ける作者の筆致には舌を巻きました。
途中、主人公の仕事にも筆を費やし、ちょっとした経済小説のような一面を覗かせるのも、オトナ向けです。