第3話
5年前、かおりは祖母の家から脱出して独り暮らしをしていたが、ある日、付き合って3年経つ恋人が指輪をはめて家に来た。
「? どうしたの、それ?」
「婚約しました」
最初何を言っているのかわからなかったが、不思議とヒステリーを起こすわけでもなく、冷静に彼の顔を見つめた後、かおりはなんとなく浮かんだ疑問を口にした。
「他に何人いるの?」
彼の顔は一ミリも動かなかったが心中は察することができた。
「二人」
「四股とかくっそウケる!って思ってさ!」
ありえない、信じられない等々この話を笑い話にできるまでに時間がかかった。あの後精神的にひどく病んだかおりは社内で2度異動させてもらってなんとか仕事を続けていたが、自殺が危ぶまれるまでになり、ついに田舎へ強制送還された。
田舎はそこに居るというだけで心が浄化され、鬱々としていた心が立ち直るのにさほど時間はかからなかった。
昔から好きだった縫いぐるみ作りを始めて少しずつインターネットで販売し、今では月に2,3個受注が来るが生活が成り立つほどではないのでアルバイトをして生活している。
結婚して出戻ってきていた姉も再婚して目出度く家を出ていき、今ではかおりと両親と三人暮らしだ。
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