俺の母ちゃんがな○うで作家やってた件

再掲。

問題あるだろうと思って、伏せ字にしてみた。

アウトだったら教えてください。そっと削除します。



**********





 家族共有のパソコンがつけっぱなしだった。

 だから、見つけちゃった。


「え、マジ?」


 最初は、ほら、年甲斐もなくラノベ読んでんのかーって思ってたんだけど。

 ログイン画面だったんだよな。

 人生で二度見って初めてやったわ。

 びっくりして、固まるってあるんだな。そのまま、顔を近付けて何度も上から下へ移動。

 そしたらやっぱりログイン画面よ。


 なんで分かるかって?

 だって俺もアカウント持ってるもん。


 友達に漫画もいいけど小説読めよって言われて知ったんだけど、面白くてハマってた。評価が付けられるって知ってからアカウントも取ったし、超ハマった作家のとこには興奮して感想も書いてしまった。

 だもんで、小説家を目指すところだっていうのはもちろん知ってたわけだけど。


 まさか、自分の母ちゃんがアカウント持ってて、しかもなんか書いてるとは思わなかった。


 だって、母ちゃんだぜ?

 漫画読んでる暇があったら勉強しろ! って怒ってる母ちゃんが。

 あんたそんなんじゃ大学に落ちるよ、って毎日ギャーギャー喚いてる母ちゃんが。



 ……ええっ?

 マジかよ。



 いや、でも、待てよ。

 母ちゃん、何書いてんだ?

 まさか、エロじゃないだろうな。やめてくれよな。この間、友達が親のクローゼットでレディースコミック見つけてリアルorzになってたんだ。

 俺だって、親父のエロ本見つけた時、ヤメロヨ親父ってなったもん。

 いくら両親がやることやってるって分かってても、親のそういうの見たくねえし。

 我が家はオープンじゃないんだから、マジ頼む。


 とまあ、それでも怖いもの見たさ、いや真実を知りたくて。

 恐る恐る覗いてみた。

 活動報告は、微妙に恥ずかしいが普通っぽい。

 作品は……。


 作品……




 マジか。




 これ、チーレム物じゃねえか。

 剣と魔法と少女ハーレムっぽい気がする。題名だけで分かる悲しさよ。

 ていうか、嘘だろー。

 何やってんだよ!

 信じらんねえ。


 めっちゃムカついて、その後すぐ恥ずかしくて頭に血が上って、それからどういうわけかザッと血が引いた。

 これ、誰にもバレてないよな?

 友達とかにバレたら余裕で死ねる。

 いや、マジで止めてくれ。

 俺は急いで作家名を覚えながら、スマホで写して部屋を出た。


 というのも。

 俺は今日、「具合が悪くて」という名の半分サボりで早退してきた。

 母ちゃんに見つかるとヤバい。

 だから、泥棒になった気分でそろーっと部屋を出たわけだ。


 そのまま部屋に戻ると、母ちゃんがちょうど戻ってきた。

 隣りの婆ちゃんちに呼ばれていたようだ。

 階段のところから、あんた帰ってきたの? と声がかかった。

 おれは無理矢理作ったガラガラ声で、風邪引いて疲れたから帰ってきた、そのまま二階で寝てるって、何故か言い訳のように説明。

 一瞬間があったもんだから、母ちゃんが疑ってたらどうしようと思ったけど、見られたとは思ってないのか普通だった。いつも通りにたったか階段を上がる音がしたかと思ったら俺の部屋の戸がバンと開く。

「寒くなってきたのにいつまでも半袖でいるからよ。ったく。ああ、ほら、制服が皺になるから着替えてから寝なさい。後で、スポーツドリンク持ってきてあげるから」

 部屋に入るときはノックしてくれって言ってるのに、母ちゃんって生き物は聞きやしない。でもここは素直に頷いとく。

「わかった」

「あら、素直じゃない。病気のときは可愛いねー」

「うるせーよ!」

「はいはい。じゃ、晩ご飯は喉につっかえないの作るわね。あ、ちゃんと着替えて、長袖で寝ること」

 ひらひら手を振り降りていった。


 階段の足音を注意深く聞いてから、台所の戸が閉まった音を確認して、スマホを取り出す。

 急いで作家名を検索して、ドキドキしながら見てみると。



 うおー。

 いっぱい作品並んでる。

 一番上の小説の情報を見てみると、すっげえブクマの数にポイント数。

 嘘だろ。マジか。

 でも俺読んだことない。

 慌てて作品一覧を見直した。


 ……あ、これ読んだこと、あるわー。


 一番上のやつは、文学っぽくて題名で弾いたやつだった。

 あー、なんか、思い出してきたぞ。

 ここらへんは全部読んでる。チーレム研究会とか言って、友達と設定の甘さについて語り合った時に、比較で出てきた話だわ。

 友達絶賛の比較元。つまり友達推薦。

 うわー。

 俺、絶対友達に言えねー。

 いやもうホント、自慢とかそんなレベルじゃねえし。


 母ちゃん何やってんだよ!

 頭抱えて布団に潜り込んでたら、母ちゃんの足音。

 慌ててスマホを隠して、上着だけ脱いでまた布団に潜り込んだ。

「何やってんの? 風邪なんだからバタバタしてたらダメでしょ。ほら、スポーツドリンク。熱はないんでしょ? 遊んでないで静かに寝てなさいよ」

「わかった」

「……なんか、素直だな。もしかして、熱ある?」

 手が潜り込んでくるので払うと、笑われてしまった。

「高校生にもなって親にそんなことしてると、反抗期ビデオ作って親戚中に配るよ?」

 ぐっ、と詰まる。

 母ちゃんはこういう卑怯なことを言うので、俺の反抗期は中学であっさり軽めに終わってしまった。

 まあ、性格的にバットを振り回すようなパワーも出なかったんだけどさ。

 とにかく、歯向かうと何倍にもなって返ってくるので、俺は萎む方を選んだんだけど。


 でも、あれ?

 これってもしかして反撃に使えないか?


 恥ずかしいネタだよね、これ。


 母ちゃんが階段を降りていったので、俺はまた布団から出て座り直した。

 これ、もしかしなくても、脅しの材料になるんじゃねえの?

 思わずニヤリと笑ってしまう。


 親の恥ずかしいネタ掴むとか何事よ。

 でも、これ使いようによっては便利かもー!!



 つうことで、もう一度じっくり見てみる。

 友達は絶賛してたけど、俺はイマイチだったんだよなー。

 なんか主人公が腑抜けていたりして、女が強すぎるし、弱っちい主人公を世話してお前は母ちゃんかよって突っ込んだ覚えが。

 ……母ちゃんかよ……?


 待てよ。

 ちょっと待て。

 おい、コラ。


 この主人公、なんかスゲー苦手で苛ついてムカついてたんだけど、まさかな。

 まさかな。



 もう一度、深呼吸して読み直してみよう。

 うん。


 …………。

 嘘だろー、もー。

 蒙古斑があるから恥ずかしくて女の子に積極的になれなかったけど本当は性格が良い気弱風の守られキャラって!

 こっちの主人公は、幼いころに女装してコスプレに目覚めたから自分より可愛い女の子じゃないとダメって理由で童貞こじらせてるキャラ!

 あとなんだ? これは、母親が強すぎて女の子に幻想抱けない見た目格好つけの本心はエロばっかりキャラ……。

 ああああああああああああああああああああああああ。



 そりゃー、好きになれないよなあーー!!

 普通はナルシストでもなけりゃあ、自分の悪いところ、好きになれるハズないもんなー!!

 あーっ、くそっ!!


 そうだよ、これ、全部足したら俺だわ!

 蒙古斑はようやく消えたけど、中学の中頃までうっすら残ってたわ! 女の子にバレたくなくて修学旅行でも口の軽いクラスメイトにバレないよう必死だったし!

 女装もさせられた! 母ちゃんっていう強権に勝てる男子がいたら俺が教えて欲しいわ! 好きでやったんじゃねーよ。あと、どうせまだ童貞だよ!

 で、母ちゃんが強すぎるのは母ちゃんが悪いんじゃねえか!

 格好つけなのは男だからしようがねえだろ!

 エロも、エロも、男がエロ好きで何が悪いんだよっ!!



 ていうか、マジで熱が出てきたかも。

 ムッカムカして、スマホ置いて、深呼吸。


 くそー。これを取引材料に今後の生活向上を訴えようと思ってたのに。

 絶対に反撃されるな。

 大体母ちゃんだったら、「ばらしてもいいわよ」なんて言いそう。


 いや、待てよ。

 親父は知ってんのかな。親父ならなんとかしてくれるかもしれない。


 や、知っても知ってなくても親父はどうでもいいかも。

 恥ずかしいことするな、って母ちゃん怒れるほど強くねえし、そもそもエロ本持ってる親父が言えるとは思えねー。

 正座させられてたもんな、親父。

 俺が「い、いいじゃん、別にエロ本ぐらい」って擁護したら涙目で俺を見てたっけ。親父ェ……。


 くそー。

 何かこう、ふつふつと怒りが湧いてくるから、これを消化しないことには俺も納得できん。

 大体息子のプライベートをネタにして、チーレム書くなと言いたい。

 しかも、女の子ウハウハしてるの、物語の主人公だけで、俺全然楽しくねえし。

 何か反撃の材料ねえかなと思って、もう一度作品一覧をじっくり眺めていく。


 で、初期の頃のを見つけた。

 かなり古い。

 分類は文芸で、ファンタジーでもなんでもなかった。

 読んでみると、主婦っぽい内容で、子供を産んだって話だ。

 つまんなさそうなネタだなーと思って流し読みしていたら……それに辿り着いた。



『産まれた息子の息子があまりに可愛くて、つまんで引っ張っていたら夫が半泣きで止めてきた。見ていて痛そうだから止めて、って。なんて可愛い人なんだろう』



 母ちゃん……。



『将来絶対に男の子は反抗期がやってくるからと友人母姑までが脅かすので、その日のために対策を取ることにした。まずは、おまたの丸出し写真だ。ザマーミロ。これでバットも怖くない』



 あ、トラウマが……。



『どうせ男の子は嫁に取られちゃう生き物だから。せいぜい子供のうちはからかって楽しんでネタにして、うんと遊んであげよう。この子が男になったら、そこから先は彼女なり妻なりに任せる。それまでは親の庇護下にあるんだから』



 おいコラ。



『こんなに可愛くて可愛がって身を分けた大事な子供でも、全く別の生き物だと思わなくちゃならなくて、母親って仕事は割に合わない気がする』



 そんなアタリマエのこと、って思ったけど。

 母親ってのはそんなこと考えてんだな。普段、なんにも考えてなさそうで怒ることしか頭になさそうなのに。



 でも、最後まで読むと、何故か子供のうちは親の所有物だ的なこと書いてて、頭おかしいんじゃねえのと思ってしまった。

 途中しんみりしそうになったじゃねえか。

 返せ、俺の時間!



 くそー、余計な労力を。

 次の話だ、次の。

 と、思って見ていたら。




 題名が『新婚の夫がエロ本を布団の下に隠していた件について』だった。

 親父ェ……。



 っていうよりも。

 何やってんだよ、母ちゃん!!



 な○うで、家族をネタに作家やるの、ホント頼むから止めてくれ!!!!



 息子より




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