第11話

「一ま~い、二ま~い、三ま~い・・・」 


遠くで清の声がする。


この声が聞こえるということは、ああ、俺はついに死んだのか。


青山は目を閉じ、ともに皿を数えていた。


「四ま~い、五ま~い、六ま~い」


冷たい毛の束が青山の頬を撫でる。


お菊の髪か?


待て、お菊には首がないのに!? 


青山は、もう俺は死ぬのだと目をきつく瞑った。



「七ま~い、八ま~い、九ま~い・・・」


冷たい女の髪が青山の頬をそっと包み、はあはあと吹雪のような吐息を顔に吹きかけた。


「ああっ一枚、足りな~い」


女の絶叫に耳を射抜かれ、ついに青山は目を開けた。


「殿も数えろ~~っ」


そう悶えて長い乱れ髪で、青山の頭をしっかと抱くのは、清の生首だった。


生首には白く細い首がない。変わりに首の部分には、伊万里の皿が重なって蛇腹のように伸び縮みしていた。


清の生首は井戸の口から入り込み、青山に向かって、首の部分の皿を階段のようにして、


「数えろ~」


と繰り返した。


胴体は、青山が雪の軒下に縛り上げたのと同じ場所にあるようだ。


青山は恐怖に途切れそうになる意識の中、清の首を抱き、皿で出来た階段を一つずつ踏みしめて上がった。

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