第3話 敵襲来
冷たい空気を感じて目を開けると部屋の中が真っ暗になっていた。
窓の外も真っ暗になり考えている間に眠ってしまい夜になってしまったようだ、黒川は椅子から立ち上がりライトをつけようと入り口に向かって歩いたが何かにひざをぶつけた。
「痛っ」
思わず声が出て何かが動く音が聞こえた、避けようと移動すると何かやわらかいものを踏みつける感触がした、ひざがジンジンと痛みがしてきたのでひざをさすりながら手探りでなんとかスイッチを押すと一瞬で明るくなった。
ぶつかったときに倒れた椅子を直そうとすると紙袋が地面に落ちていて近くにパンが二つ転がっていて紙袋には足跡が付いていた。
紙袋と落ちているパンを拾い上げて机に置き紙袋の中を覗くと中のパンは想像通りにつぶれてぼろぼろになっていた。
落ちていたパンはゴミが付いているが洗えば何とか食べれそうであったので部屋に備え付けてある蛇口の付いた簡単な洗面台の蛇口をひねった、だが水は出なくて錆が剥がれ落ちた。
今が何時か気になり部屋の中を見回して時計を探したが部屋にはなかった。
「何もないな」
夜だということはわかっているのだが今が何時なのかわからないのは不便だなと思いながら電気を消してベットに入ると何か変な感触が背中当たった。
「痛い」
いきなり声が聞こえ黒川は急いで立ち上がり部屋の電気を再びつけてベットを見ると先ほど気が付かなかったが小さく布団が膨らんでいてそこには丁寧に帽子をかぶったルドルが眠っているのが見えた。
近づいていき布団をはぐってから起こすためにルドルの体を揺らした。
「おい、起きろ、さっさと自分の家に帰れ、両親が心配しているぞ」
「眠い・・・・」
ルドルはそういって動こうとしない。
「おい!いい加減にしろ!おい!」
黒川は先ほどよりも強く体をゆすったがやはり起きない。
なんで起きないんだよ、全くこのガキの家なんか知らないし両親に知らせることもできない。
まぁ、俺にはどうすることもできないし放って置くことにして黒川は寝起きで喉が渇いたのか口の中に違和感を感じるのでトイレに行って水を飲もうと思い、そのついでに汚れたパンを水で洗えば食べれるんじゃないかと地面に落ちただけのパンを二つを取りライトを消してから廊下に出た。
廊下は明かりがついてファル様に会った部屋の前に警備をしている青い服を着た兵士が二人たっているのが遠くに見えが、ルドルのことをあいつらに話すと面倒になりそうなのでやめておき、共同トイレに行くためには中庭を通っていくのが一番近いはずだが中庭は真っ暗になっていて何が何所にあるか黒川にはわからなかったのでファル様の警備がいない方の廊下を回って共同トイレに向かった。
黒川がトイレでうがいをしてから水を飲んだのだが、自分が想像していた以上に喉が渇いていたらしくこれ以上飲めないというくらい水を飲んでしまって少し息苦しくなったが、顔を洗うとスッキリし、持っていたパンを軽く水をかけてパンに付いた小さなゴミを洗い流してすこし食べようと噛み付いたがルドルと一緒に食べたパンと時間がたっているためか硬すぎてうまく噛み切ることができないので食べるのをあきらめた。
「部屋にナイフなんかあったかな?」
独り言をいいトイレから部屋に戻ろうと歩いていると中庭で何か変な音が聞こえて黒川は足を止めて中庭の暗闇をじっと見た。
暗闇を長く見ているとだんだんと目が慣れてきて中庭にある噴水の輪郭がだんだんと見えてきて昼に見たベンチの輪郭も見えたがそれ以上は判らなかった。
自分の部屋に戻ろうと歩き出して自分の部屋の前の廊下に来るとファル様の部屋の警備をしていた兵士がいなくなっているのが見えた。
黒川は自分の部屋に戻ると電気を点けパンを机の上に置きベットの上のルドルを見たがまだ気持ち良さそうに眠っていたが、やはりこいつがここにいることはシーヴァかバルアートに知らせておいたほうがいい、俺が誘拐したとかになっては困るただでさえ疑われているからな。
部屋の電気を消して廊下に出るとファルの部屋にカズが入っていくのか見えた、カズは黒川のことを知っている数少ない人物だ。
「ちょうどいいな」
足早に近づいていき黒川がゆっくりとファル様の部屋を開けると中にはカズと大勢の人が電気をつけないで手に持ったライトであたりを見渡していた。
「おい、カズ」
黒川が呼びかけると一人がこちらを向いた。
「誰だ!?」
誰かわからないが問いかけてきたので言った。
「アイトだ、アイト、シーヴァかバルアートが何所にいるか教えてくれないか?」
するとカズのめんどくさそうな声が聞こえた。
「もう夜中だぞ、寮で寝ているんじゃないか?」
「大事な用なんだよ」
そういうと何かが暴れる音が暗闇の中から聞こえた。
「逃げて!」
女性の声が聞こえ黒川は考えるより先に逃げ出した。
「待て!そいつを逃がすな!捕まえろ!」
逃げ出した黒川は取り合えず中庭の闇にまぎれて逃げようとすると中庭の闇の中からフードをかぶった背の高い人が二人現れて両手を広げて行くてを塞いで叫んだ。
「止まれ!」
そんなこと聞くつもりはないので黒川は二人のうちの左側にいるほうのみぞおちに肩が入るように勢いをつけてタックルをかました。
男の苦しむ声を発して男は仰向けに倒れ、黒川はその男に乗っかるように倒れると男のフードが外れ顔が見えそこにはコンデ人のトカゲ野郎の顔があった。
「おい、動くな」
背後から声が聞こえるがかまわず立ち上がり走り出した。
「何をしている撃ち殺せ!」
すると後ろからコンデ人が銃を発砲する音が背後から聞こえ、黒川は思わずその場に倒れこみ匍匐前進をして噴水の反対側に回り込んだ。
発砲音と共に噴水のレンガの欠片が飛んできて頭にかかったがかまわず叫んだ。
「誰か!助けてくれ!誰か!」
兵士はどうしたんだよ!何であいつらがここにいるんだ!黒川はできるだけ地面に引っ付いて噴水の影からはみ出さないようにした。
「もっと叫べ、眠り人、いや、アイトだったかな」
男の声が聞こえたがかまわず叫んだ。
「助けてくれ!誰か!コンデ人がファル様を襲っているぞ!」
何度も助けを求めて叫んで頭を抱えていた。
「何所にいる!」
背後から声が聞こえ振り返ると助けの声を聞いたのか二階から降りてきたのか他の部屋から出てきたのか判らないが青い服の兵士たちが走ってくるのが廊下の明かりで見えた。
「ここだ!ファル様が襲われている!」
黒川が叫ぶと一人がこちらを指差して隣の兵士の肩をたたくのが見えたと思うと体が雷を打たれたかのように硬直して仰向けに倒れ、助け起こそうとした兵士も覆いかぶさるようにして倒れこんでしまった。
「間抜けめ!」
コンデ人のほうから声が聞こえた、どうやら撃たれたようだ。
「くそっ」
思わず口から出てしまった、銃撃が途切れると声が聞こえた。
「アイト、おとなしく出て来い、そしたら楽に殺してやる、お前に仲間を殺されてお前を殺したくて仕方ないんだよ」
いいながらコンデ人が芝生を歩いてくる草を踏み倒すかすかな音が聞こえた、このままじゃ殺されてしまう。
「誰か!助けてくれ!」
「惨めなやつだ、助けを呼ぶことしかできないのか?こんなやつに仲間が二人も殺されたなんて信じられないな」
声が大きくなりだんだんと近づいてくるのがわかる、黒川は銃で撃たれて砕けた噴水のレンガの欠片を震える手で握り締めた。
「コンデ人だ!撃て!」
背後から声が聞こえると発砲音が聞こえて黒川の隠れている噴水への銃撃がなくなった、黒川が顔をそっと出すと近づいてきていたコンデ人は声のした方向に発砲していた。
(今しかない)
黒川はすばやく立ち上がるとコンデ人に向かって走った。
立ち上がった瞬間にコンデ人がこちらを向いたのですばやく手に持っていた噴水のレンガの破片を顔目がけ投げつけると顔面に当たり多少ひるんだ。
黒川はコンデ人に一気に近づいて持っている銃を掴んで一気にねじり上げるとコンデ人の指がありえない角度で曲がるのと同時に指の骨が折れるいやな音と振動が銃を当して黒川に伝わってきて余りの痛さにコンデ人が悲鳴を上げた。
コンデ人の銃を奪った黒川はすばやくコンデ人の頭に狙いをつけて引き金を何回も引くとコンデ人の頭部が吹き飛んで仰向けに倒れた。
「ハッタン!」
仲間が死んだことに気が付いた声が聞こえて黒川はすばやく元いた噴水の裏に飛び込むとレンガの欠片の上に飛んでしまい腕や腹に石が刺さる痛みが走って一瞬動きが止まったがすぐ近くに銃弾が当たり砂埃が舞って慌てて身を隠した。
「アイト!生きてるか!」
背後から聞き覚えのある声が聞こえ振り返ると青い服を着た兵士が十人くらいがそれぞれ柱の影に隠れながら応戦してその中に銃を持ったバルアートがこちらを見ていてアイトが見ていることに気が付くと叫んだ。
「ジッとしていろ!」
黒川はOKのハンドサインをしてその場で地面に張り付いていたが石ころか何かが水に入る音が聞こえたかと思うと隣の噴水が爆発し転がるように吹き飛ばされ全身に痛みが走った。
ショックで視界と耳がおかしくなり何秒か何をしているかわからなかったがだんだんと回復してくると頭がガンガン痛み鳴り響き、全身も噴水の水でずぶぬれであちこちが痛くて体を動かすことができない。
「・・・・」
誰かの声が背後から聞こえたかと思うとバルアートの顔が目の前に現れ黒川の顔を見て何回も力強く叩いた。
「しっかりしろ、おい、立てるか?」
「あぁ、大丈夫だ」
頬を叩かれた痛みで意識がはっきりしたようで立ち上がろうとするとバルアートが脇の下に肩を回して引きずるようにして先ほどバルアートが居た柱の影に運ばれて倒れると、隣には青い服の兵士が腹部を真っ赤に染めて倒れていた。
周りを見るとコンデ人に向かって応戦している兵士は7人しか姿が見えなかった。
「おい、バルアート、何で兵士が7人しかいないんだ?」
「えっ!何だって!でかい声で言え!」
コンデ人に向けて応戦していて飛んできた銃弾が柱を削って思わずバルアートが首を引っ込めた。
「何で!七人しかいないんだ!」
「他のやつらは倒れていて使い物にならない!しばらく増援は来ないだろう!」
「どういうことだよ!」
「俺が知るか!医者じゃないんだ!この城のほとんどの人が原因不明で倒れているんだよ!」
黒川はその話を聞いてピンと来た。
「カズが関係してるんじゃないか?」
「カズってあの食堂で会ったやつだぞ?どうしてそう思うんだ!?」
バルアートが睨みながら怒鳴ってきた。
「俺はカズにお前の居場所を聞こうとしてファル様の部屋に入ってコンデ人に撃たれたんだよ!お前達を裏切ってコンデ人の仲間なのかも知れないぞ!」
「くそっ、恩を仇で返しやがって!」
「それにファル様の部屋で誰かが捕まってる!」
「なに?」
黒川も柱の影から顔を出してあたりの様子を伺うとコンデ人たちはファル様の部屋から出て庭を囲むようにある廊下の柱の影に隠れながら黒川達に近づいてくるのが見え、黒川は目の前で倒れている兵士が持っている銃のようなものを掴んだ。
「おい、これはどうやって使うんだ?」
「それは引き金を引けば弾が出るようになっている、エネルギーが切れれば握っているグリップの上のボタンを押せば下が開いて使い終わったストーンが排出されるから新しいのを入れればいい!」
「わかった」
よくわからんが大体拳銃と同じということだろう、目の前の倒れている男の体を引っ張って引き寄せてストーンを探すと腰のところにある革でできた小さいストーンが入っている入れ物があり中のストーンを慌ててポケットに入れていると、銃弾が男の腹部に当たり黒川の顔に血がかかり顔を拭おうとするとバルアートが黒川をいきなり引き倒して言った。
「危ない行動するな!死ぬぞ!」
黒川は血の付いた顔を汚いシャツにこすり付けると言い放った。
「俺は死ぬつもりはないから逃げさせてもうぜ!」
立ち上がり勢い良く背後にある城の外につながっている鉄製の大きな扉に飛びついて開けようとして押したり引いたり横にスライドさせたが全く動く気配がない。
「あいつ逃げようとしてるぞ!撃ち殺せ!」
背後から聞こえ近くにある柱の影に飛び込むと鉄製の扉に銃弾が当たり鉄が赤くなるのが見えた。
「アイト!何で逃げないんだ!」
バルアートが黒川を睨むのが見えた。
「開かないんだよ畜生!どうやって開けるんだ!」
「門番が鍵をかけているんだろ!」
「何所にいるんだ!」
「知るか!自分で探せ!」
バルアートはそういうともう逃げようとする黒川と話す気はないらしく、コンデ人に向けて発砲を始めた、黒川は周りを見渡して門番を探したが死体すらなかった。
「くそ」
コンデ人の撃った銃弾が黒川の隠れている柱に当たり砂埃が舞い、黒川は拳銃を持った手だけを出して狙いもつけずにコンデ人に向けて引き金を引くと発砲音と共に反動で手首がはねた。
(ここじゃ狙い撃ちにされる)
黒川は周りを見渡すと鉄の扉を監視するような窓を見つけて銃弾が途切れる隙を見て柱の裏から走り出した、銃弾が近くをかすめ空気を切る音が聞こえ、体中に悪寒が走りさらに早く走り並んでいる柱を避けると、目の前に窓が見えた。
すばやく拳銃で窓ガラスを撃って割ると頭をかばうようにして飛び込んだ。
地面に体を打ちつけ体が痛いが顔を起こして部屋の中を見渡すと三人の兵士が頭や胸などを撃たれ血を流して壁に寄りかかりながら倒れていて足元は血溜りになっていた。
本気で走ったために乱れた息を整えながら体の痛みをこらえて窓から外の様子を伺うとすぐに銃弾が飛んできたが、ここからは外に出る鉄の扉全体がはっきりと見えた。
(ここが門番の詰め所か・・・・)
黒川は外から見えないように部屋の中を見渡して使えるものがないか探すと壁に柵が付いた鍵入れがかかっていたが中に鍵は一つも掛かっておらず入れ物の底に落ちていないか手を伸ばして触れた途端に鍵入れが落ちて派手な音を立てた。
慌てて落ちてきた鍵入れの中身を見たが鍵は一本も入っておらず残る可能性としては死んでいる兵士が持っているくらいなので三体の死体のポケットを服の上から触って確かめてさらに死体の手のひらに握っていないかも確かめたが誰も持っていなかった。
何かが扉に当たる音が聞こえたかと思い振り返ろうとすると扉が爆発して黒川に向かって倒れかかってきたのですばやく足を引っ込めて身を縮めると足を挟まれずにすんだ。
壁に張り付きながら舞っている砂埃が収まるのを待っていると叫び声が聞こえた。
「・・・・・」
余りにも埃が立っているので口を開くのがためらっていると埃の中に人影が近づいてくるのが見え、埃の中から現れる顔を見るとトカゲのコンデ人が入ってきて黒川は壁を蹴るようにして勢いをつけてコンデ人の腰にタックルをすると、コンデ人は頭を壁にぶつけながら倒れ言葉にならない悲鳴をあげた。
黒川は部屋に飛び込んだときに落としてしまった銃を拾うとコンデ人に向けて引き金を三回引くとうめき声と同時に血が飛び散る音が聞こえた。
慌てて立ち上がり部屋の外に出ると先ほど銃撃戦をしていたコンデ人と青い服を着た兵士の死体が多数散らばっていて発砲音が遠くのほうから聞こえるだけでここでの銃撃戦は終わっているようで、周りの様子を伺いながら近くの柱の影に走りこむと銃弾が飛んできた、黒川は発砲音がした方を見ると腹を真っ赤な血で染めたコンデ人が倒れながらも黒川に銃を向けていた。
黒川は素早く倒れているコンデ人に銃を向けて引き金を引くとコンデ人の腹で血が飛んだと思うと全身の体の力が抜けたようにその場で仰向けになり動かなくなった。
「だれか!扉を開けろ!」
「扉を開けろ!、誰かいないのか?返事をしろ!どうなってるんだ?」
複数人の叫び声が外に出る鉄製の大きな扉の向こうから聞こえ声のするほうに向かって叫んだ。
「コンデ人が侵入していて何人か死んでいる!助けてくれ!」
「いいから扉を開けろ!」
「鍵が無くて開けられないんだよ!ぶち破ってくれ!」
外にいるらしい男達は何か言ってくるが黒川は無視して中庭の様子を見るとファルの部屋の扉の前でバルアートが倒れていて止めを刺そうとコンデ人が銃を向けるのが見えたと思うと、騒がしくなったこちらをコンデ人が見て叫んだ。
「お前、武器を捨てろ、こいつがどうなってもいいのか?」
黒川は返事をせずにコンデ人を銃で狙い撃てなくなるまで引き金を引きコンデ人はダンスを踊るように体を痙攣させ持っている銃を暴発させながら地面に倒れた。
銃が撃てなくなるとバルアートに教わったようにグリップのボタンを押して中の石を捨てポケットに入れていた石を変わりに入れて閉じた、だが本当に撃てるのか疑問だったので五メートル離れた柱に向かって引き金を引くと発砲音と共に銃弾が柱に当たり埃が舞った。
「俺、やっぱり違う世界に来たようだな」
こんな石を使った銃なんて日本やアメリカにもないしトカゲのコンデ人だっていなかったんだ、だが俺は殺人を犯した犯罪者でもう日本にいても刑務所で残りの人生を過ごすか死刑になるしかなかったんだからここのほうがましかも知れない。
そう思っていると背後で鉄製の扉に何かを打ち付ける音が聞こえ振り返ると扉が固定されている壁ごと倒れて何人もの青い服を着た兵士が扉を踏み越えて建物の中に入ってきた。
銃を持っていた黒川は一瞬で周りを囲まれたので、慌ててもっていた銃を地面に捨てて両手を挙げて言った。
「撃つな!俺は味方だ!」
だが周りを取り囲んだ兵士は黒川に銃を向けて降ろそうとはしない。
「何が味方だ!お前がこいつらを連れてきたんだろ!拘束しろ!」
すると背後の兵士が動き挙げていた手を掴まれて後ろで両手を縛られたので思わず目の前の兵士を睨むとその顔には見覚えがあった。
「お前、何だっけな・・・・、確かジロンだったな」
「知り合いなのか?」
ジロンの隣にいる少し背の高い兵士が黒川を見たままジロンに聞いた。
「違う、こいつがリンを人質にして逃げようとしたんだ」
「そんなことはどうでもいい、ファル様が危ないぞ、コンデ人がファル様の部屋に入っていて誰かを襲っていたぞ、お前のリンかも知れないぞ!?」
黒川が言うとジロンが飛び掛ろうとすると隣の男がそれを止めた。
「おい、俺に殴りかかるなよ、俺は親切で教えたんだぞ、早くファル様の部屋に行けよ、それにコンデ人がまだこの城のどこかに隠れてるかもしれないぞ」
いい終わるとジロンは抑えている男の腕を振り払って後から入ってきた兵士に声を掛けるとどこかに走っていったので黒川は周りの兵士に言った。
「早く、安全なところに移動させてくれないか?俺は兵士じゃないんだ」
「おとなしくしていろ!」
きつく睨みながら言われ黒川はおとなしく立ちながら倒れた扉を踏み潰しながら入ってくる兵士を見ているとふと気が付いた。
先ほどから入ってくる兵士が十代か二十代の若い奴等ばかりで顔に恐怖と不安が現れているのが見え指揮官のようなしっかりとした顔をした者が一人も見えない、黒川は近くにいる兵士の中で一番不安そうな顔をしている兵士に向かって高圧的に言った。
「おい!お前!」
不安そうな顔をしている兵士がキョロキョロしながら黒川を見た。
「そうだ、お前だ、お前達じゃ話にならんから誰か上官を連れて来い!」
「こっちだって大騒ぎなんだおとなしくしてろ!面倒を起こせばこの場で射殺するぞ!」
銃口を向けながらいうのでカマを掛けようと思ったがこれ以上何か言うと本当に撃ち殺されそうなので黙っていることにしたが、すぐに背中を叩かれたので振り返った。
そこには薄汚れたバルアートがいて目が合うと黒川の顔を殴った。
「糞野郎!」
頬を殴られて口の中が切れて血の味がしたがバルアートを睨んで言った。
「お前がコンデ人に撃たれそうになってたのを助けた命の恩人に糞野郎といって殴り掛かってくるのか?次は助けてないから安心しろ!」
黒川は口の中にたまった血をバルアートに吐き掛けると顔を真っ赤にしたバルアートが殴り掛かろうとすると何処からか叫び声が聞こえた。
「俺たちから離れろ!!」
思わず声のした方を見るとコンデ人達がファルの部屋から人質を取りながら出てくるのが見えた。
「こいつがどうなってもいいのか!!」
コンデ人達はカズとメイド服を着た女二人を盾にするように出てきた。
「リン!」
男の声が聞こえ声の主を見るとジロンが叫び青い服を着た兵士達がコンデ人を取り囲んだ。
「人質を放せ!お前達は逃げることはできないぞ!」
「こいつがどうなってもいいのか!」
コンデ人が叫びながらメイド達とカズの髪の毛を掴んで顔を見せつけた、リンやシーヴァは殴られたようで顔が腫れて血が流れているのが見え、カズは汗で顔が光っていた。
「殴られているようだな」
黒川がつぶやくとバルアートはコンデ人達のほうに走り出したのを見て黒川はコンデ人たちを見てキョロキョロしている黒川に銃を向けている若い兵士に向かって言った。
「いいからここから違うところに行かせてくれよ、銃撃戦が始まったら流れ弾が飛んでくるかも知れないだろ」
「・・・・」
どうすれば良いのかわからない様で黙ってあたりを見渡したので畳み掛けるように続いて囁いた。
「俺が死んだら俺を捕まえていたお前の責任問題になるぞ、それにここにいたらお前だって危険だ、別にお前を倒して逃げるわけじゃないんだ、外のお前の仲間がたくさんいる安全な場所に移動したいんだよ」
黒川は若い兵士に優しく言うと兵士もコンデ人達たちを取り囲む兵士達をもう一度見てから黒川を見ていった。
「おとなしく付いて来い、外にいる仲間に合流する」
「助かる、早く行こうぜ」
若い兵士は近くにいる兵士に話しかけ黒川の挟むようにして歩き出すとコンデ人たちのいるほうが騒がしくなり振り返って見るとコンデ人達の周りを取り囲んでいる兵士の一人がこちらを指差すのが見えたので早く扉から出ようと早足で急ぐと黒川を挟むように歩いている兵士に足が絡まり被さる様に倒れた。
「早くどけろ!」
潰している兵士が怒鳴った。
「痛い、痛い」
わざと声を出して何か手を縛ってる紐を切れるようなものが無いか探し何かを掴んだと思うと体を蹴飛ばされて地面に落ちた。
「大丈夫か?」
「すまないな」
倒れている兵士を他の兵士が助け起こしているのを見ながら黒川は自分が手にした物が何か探ってみたが掴んだものは鍵のようなもので手を縛っている縄は切れそうに無い。
「おい、お前らそいつを捕まえろ!」
コンデ人達を取り囲んでいた一人の兵士が黒川を指差しながら走ってくるのが見え黒川は身の危険を感じて慌てて立ち上がり逃げようとしたがすぐに服を掴まれた。
「逃げるな!おとなしくしろ!」
「離せよ!俺はコンデ人とは関係ないぞ!」
鍵を握って落とさないようにして叫んで押さえつけようとする手を振り払っていると走ってきた兵士が近づいてくるなり言った。
「お前大人しくしろ!」
走ってきた兵士を見るとその兵士はジロンで黒川たちに言った。
「おい、コンデ人がその男を連れて来いと言っていて連れて来なければ人質を殺すといっている、すまないが来てくれないか?」
言いながらジロンが黒川を見た。
「だったらこの手を縛ってる紐をはずしてくれないか?それに武器をくれ」
「手の紐を外してやれ」
近くにいた兵士が手を縛っていた紐を外したので手の平の汗をズボンで拭う振りをしながらすばやく握っていた鍵をズボンのポケットに入れてから手首を見ると紐がこすれて赤くなり一部が血がにじんでいたので、赤くなっている所をマッサージしながら言った。
「それで武器は?」
「武器は渡せない、お前が敵なのか味方かわからないからな」
「じゃあ、お断りだ、人質の命も大事だが俺の命のほうが俺は大事だ」
「お前に拒否する権利は無いんだよ、捕まえろ」
そういうとジロンが何か目で合図をすると先ほど黒川を捕まえていた若い兵士二人が黒川の腕を強く掴んだ。
「離せ!」
「うるさい、大人しく付いて来い!」
黒川は必死に抵抗をしたが二人の腕を振り払うことができず何所からか持ってきたらしいライトで照らされているコンデ人達のところに連れて行かれると周りを囲んでいた兵士達が道を開けた。
「コンデ人、連れてきたぞ!」
ジロンが叫ぶとコンデ人の一人がこちらを見た。
「お前が眠り人か?」
ワザと黙っていると誰かに背中を蹴られた。
「そうだ!」
やけくそ気味に答えた。
「こっちに来るんだ!」
コンデ人が言うのでどうするかジロンを見るとあごで行くように示して脅すように言った。
「逃げれると思うなよ、離してやれ」
(くそ、こいつ絶対に許さん)
黒川はジロンを睨んで手を掴んでいる兵士を振り払い、ジロンの頭からつま先までゆっくりと見渡して身長と髪型と体型を覚えた。
「ジロン、覚えてろよ」
「さっさと行け」
コンデ人のところに歩いていくとシーヴァとリンは殴られた跡がひどく腫れているのが見え、黒川は二人を捕まえているコンデ人に向かって言った。
「おい、トカゲ野郎!」
黒川が言うとコンデ人が銃を黒川に向けた。
「おとなしく来い!猿!」
「嫌だね!そこの女達を解放しろ!」
コンデ人達の後ろからリーダー格らしいコンデ人が目の前に出てきてシーヴァとリンを見た。
「そんな奴等これ以上いても邪魔になるだけだ、開放してやれ」
シーヴァとリンは突き飛ばされて地面に倒れると立ち上がろうとしないので黒川は二人のところに行き二人の服を掴んでジロン達の所に引きずって運んだ。
「こいつらを頼むぞ」
返事を聞かずにコンデ人達の方に歩いていくとコンデ人の一人が黒川の前に出てきて黒川に銃を突きつけた。
「おとなしく付いて来い」
言い終わると銃口を振って黒川をファルの部屋の中へ行くように示すので黒川は仕方なくコンデ人達の間を通りファルの部屋の中に入ると部屋の中は灯りがついておらず黒川の後に続いて何人かのコンデ人が部屋に入り扉が閉まると外のライトの光が無くなり真っ暗になった。
黙っているとコンデ人が持っているライトが複数点いて黒川が照らし出されるとまぶしくて目を手でかばった。
「どうして俺を人質にしたんだ?」
黒川が言うとコンデ人の気味の悪い空気が風船から漏れるようなシュルシュルとした笑い声が聞こえた。
「こいつ自分が人質だと思っているのか?」
「そうみたいだな」
するとライトが一つ移動してきて黒川の隣に立つとコンデ人の顔は黒川より頭一つ高いところにあり見上げた。
「俺達はな、お前を殺した証拠となるものを持っていかなきゃならないんだ」
コンデ人は言いながら黒川の腰に手を回そうとしたので黒川はポケットに手を突っ込んで鍵を全力で握りコンデ人の顔に突き刺すように殴った。
コンデ人が汚い悲鳴を上げたと思うと黒川はコンデ人に殴られて吹き飛んだ。
「大丈夫か?」
「痛い、痛い、何かが刺さってる、抜いてくれ」
すぐに立ち上がり何かの裏に隠れようとしたが部屋の中は暗すぎてよく判らないがじっとしていられずに移動すると何かにぶつかった。
「そっちか!」
声と黒川がライトで照らされ銃弾が飛んできた、慌てた黒川は先ほどぶつかった机の上に置かれている皿と花瓶を掴んでライトの方に投げつけるとコンデ人に当たりライトが地面に転がった。
暗闇にまぎれて逃げようとしたが部屋の灯りがついたので慌ててファル様が座っていた立派な椅子の裏に隠れた。
「おとなしく出て来い、今なら楽に殺してやる」
コンデ人の怒りを含んだ声が聞こえたが返事をせずにあたりを見渡して何か使えるものが無いか見渡すと椅子の裏の壁に額に飾られた古い銃が三丁と剣が二組クロスさせて掛かっているのが目に入りすばやく額の一番下にあるアンティークな装飾をされた拳銃を取り椅子に背中をつけるようにして隠れた。
「その銃使えるのかよ」
笑いながら近づいてくるの足音が聞こえ、心臓の鼓動が爆発しそうなくらい早くなり手に汗か浮かんで慌てながらアンティークの銃のグリップを見みてボタンを押すとグリップの下ではなく上の部分が開いた。
城の兵士が持っている銃とは違うところが開きストーンを入れるところが現れたので一瞬惑ったがポケットからストーンを取り出して入れるとすっぽりと入ったので蓋を閉じた。
黒川は銃の横に有る安全装置らしきロックを解除して椅子の裏からコンデ人たちのいるほうにでたらめに引き金を引くと耳がおかしくなりそうな発砲音と共に鋭い反動で手首が痛くなり思わず拳銃を落としてしまったが痛みをこらえて落とした拳銃を掴むのと同時に何かが倒れる音と共に呻き声が聞こえた。
「うっ」
左手の手首がジンジンして心臓の鼓動がバクバクしているのが聞こえいつの間にか呼吸も荒くなっていたがかまわず椅子の裏からコンデ人の様子を見ると黒川に近づいてきていたコンデ人の右腕が落ちその隣でコンデ人の体が仰向けに倒れて痙攣しているのが見えた。
発砲音と共に銃弾が連続で飛んできて椅子や黒川の後ろの壁に当った。
発砲が途切れたのを見計らって黒川はコンデ人二人が部屋に突っ立っているのを確認すると一気に飛び出して二人を撃った。
近くにいたコンデ人の頭が吹っ飛び素早く二人目を狙って撃ったが、一人目を撃つと反動が大きくて二人目を撃つときには銃口が上がってしまい二人目の頭の上に銃弾がそれて二人目は机の裏に隠れてしまった。
二人目のコンデ人が隠れた机に拳銃の狙いを両手でつけて引き金を引きまくると机が穴だらけになって飛び散り、コンデ人の欠けた体から内臓が見え机の下から血が流れだした。
(こんな威力が高いが反動が大きすぎる銃手首が痛くなって使ってられない)
黒川は拳銃をファル様が座っていた椅子の上に置き壁に掛けてあるアンティークの剣を取り足元で痙攣しているコンデ人の頭に叩きつけるように切つけ剣を抜くと血と一緒に脳みそがあるのかわからないが白い内臓のようなものがはみ出てきた。
他のコンデ人も撃たれて血を流していたが確実にとどめを刺して銃を奪って右手にアンティークの剣、左手にコンデ人から奪った銃を持ってファル様の部屋から出ようと外に出る扉をゆっくりと少し開き外の様子を伺った。
ライトがファル様のいる部屋の前にいるコンデ人達に向かって当てられていて目が痛いくらいまぶしいが三人のコンデ人が柱の影に隠れているのが目に入り、真ん中にいるコンデ人は柱の影でカズとしゃがみこんで何か話しているのが見え、やはりカズとコンデ人は何かつながりがあるようだ。
どうするか考えてから黒川は背後から左右の柱の影に隠れているコンデ人をすばやく撃つと全く背後からの銃撃はに注意をしていなかったようで簡単に撃ち殺すことができた。
最後に真ん中の柱の影にいるカズと一緒にいるコンデ人を狙ったが仲間を殺されて背後にいる黒川に気が付き扉の方を見たので叫んだ。
「動くな!お前の負けだ、トカゲ野郎!」
黒川はいいながら扉から出て姿を現すとコンデ人は拳銃をカズに向けて立ち上がりながら叫んだ。
「俺の仲間はどうした!」
すると黒川は体中に痛みを感じたが笑いながら言った。
「殺してやったよ、俺を殺そうとしたんだから当然だ!お前も殺してやる!」
黒川が銃を向けるとコンデ人が座っているカズを強引に立たせてコメカミに銃口を押し付けた。
「こいつがどうなってもいいのか?お前の仲間だろう?」
するとカズも泣き顔で叫んだ。
「助けてくれ!お願いだ!」
すると異変に気が付いたのか周りの兵士が黒川とコンデ人とカズの周りを取り囲むとジロンの声が聞こえた。
「おい、アイト、中のやつらはどうしたんだ!?」
「全員殺したよ!中にファル様はいなかったぞ!」
すると何所からか安堵のため息が聞こえると黒川は言った。
「お前はもう終わりだ、ここから逃げることは絶対にできないおとなしく死ね!」
黒川がいい銃の引き金を引くとコンデ人の太ももに穴が開いて血が流れると痛みを越えれて黒川を睨んで叫んだ。
「こいつが殺されてもいいのか!」
コンデ人が足を引きずりながらカズを揺さ振った。
「殺される!撃たないでくれ!」
カズが叫ぶと黒川が怒鳴った。
「お前もそいつらの仲間なんだろ、おとなしく死ね!」
「違う、違う、違うんだ!」
涙を流して叫ぶように反論したが黒川は今までためた怒りを放つように怒鳴った。
「お前がそいつらとファルの部屋に入って行くのを見たし、さっきもそいつとこそこそしゃべってるのを見たんだ、お前がそいつらをこの城に入れたんだろ!」
周りの者たちは黒川の話を聞いてざわついた。
「アイト、本当か?」
近くから誰かの声が聞こえたので答えた。
「俺は確かに見たんだ!だからそいつに人質としての価値は無い!」
コンデ人がうなり声を上げた。
「お前だけは!お前だけは!」
いいながらコンデ人がカズのコメカミに当てていた銃口を黒川に向けて発砲しようとしたが黒川が先に発砲すると銃を落として仰向けに倒れた。
「取り押さえろ!!」
兵士の声が響き回りにいた兵士がコンデ人を取り押さえた。
「おい、アイト大丈夫か?おい、アイト?」
声がする方を見るとバルアートが近づいてきた。
「黙ってろ!」
バルアートを突き飛ばして吐き捨てるとカズに向かって歩き始め、カズは青い兵士と何か会話をしていてどこかにつれていこうとしているのが見え黒川は銃を捨て剣を持ってカズたちに向かって走った。
「おい、誰か!そいつを止めろ!」
バルアートの声が聞こえるとカズと兵士が振り返って黒川のことを見てカズの隣に居た兵士が黒川の前に出てきたが体当たりで突き飛ばしカズを引っ張り倒して仰向けにすると剣の先を腹に当てるとカズが叫んだ。
「そうだ!殺せ!殺してくれ!」
「あぁ、殺してやる!」
黒川が剣に力を入れるとバルアートの声が聞こえた。
「やめろ、アイトそいつがお前の言った通り裏切っているなら聞きたいことがたくさんあるんだ、殺すんじゃない!それにお前の言っていることが正しいと証明するためにはそいつが必要だ!ファル様が何所にいるかも判ってないんだ!殺すんじゃない!」
そうだ、ファルの行方が判っていないんだ、ファルが生きている方が俺にとっては利点が多いはずだ、だがこのカズを見ていると段々とむかついてきてこの腹に当てている剣先を思いっきり押し込んでやりたくなる。
目をつぶって三回深呼吸すると体中が痛み疲れが出てきた、ふと剣を何かに掴まれてカズに押し込まれる感覚がしたので慌てて目を開けて剣を引くと剣先を血まみれの手でカズが握っていて思わずつぶやいた。
「お前・・・」
「早く殺せ!殺してくれ!」
カズが剣を持つ力が強くなりカズの剣を掴んでいる手からあふれ出る血の量が多くなるのが目でわかり黒川はカズのわき腹を蹴飛ばすとカズは剣から手を離したがむかついたのでもう一度わき腹を蹴飛ばすと口からよだれを吐き出しながら黒川を睨んだ。
「お願いだ!殺してくれ!お願いだ!」
「どうしてそんなに殺してほしいんだ?」
いつの間にか隣に来ていたバルアートがしゃがみこんで言った。
「俺の娘が人質になっていて俺が生きてつかまったら娘が殺されてしまうんだ!お願いだから殺してくれ!」
カズが血まみれの手で黒川のズボンを掴んで涙と鼻水を垂れ流しながら懇願してきたので掴まれている足でカズを蹴飛ばした。
「お前が裏切ったせいで何人も死んでるんだ、娘はあきらめろ」
カズは声を上げて泣きながら話し始めた。
「俺だって裏切りたくなかったさ、でも俺にとって娘は自分の命よりも大切なんだ、アイト、お前に娘がいたら他のものを犠牲にしても助けたいとおもうのは当然だろ!!」
「あぁ、俺もお前と同じように娘を助けるために何でもすると思う」
「なら俺を殺してくれ!お願いだ!」
「わかった」
黒川は返事をすると剣を振りふりかぶると覚悟を決めたカズが目を閉じたので、慌てたバルアートが黒川を止めよと腕を掴もうとした。
「やめるんだ、アイト!」
バルアートを避けて剣を振り下ろすと剣の先がカズの顔面の横の地面の土に刺さった。
すぐにカズが目を開けて黒川を見たので黒川は言った。
「俺には娘なんかいないからお前の気持ちなんかわからないし、今殺すよりも生かしておくほうがお前の苦しみは大きいだろ?」
カズは涙を流しながら声になら無い叫び声を上げあたりに響いた。
地面から剣を抜いて隣で驚いて目を大きくしているバルアートに剣を差し出していった。
「ちゃんと取り調べろよ、自殺されるような間抜けな真似はするなよ」
するとバルアートが黒川を睨んでいった。
「わかっている、そんなへましない」
振り返り先ほど黒川に突き飛ばされた兵士を睨んで怒鳴るように言った。
「お前、次はへまするんじゃないぞ、わかってるな」
「はい、判りました」
突き飛ばされた兵士は黒川を一瞬睨んでから倒れているカズを抱え起こした。
「アイト、お前を呪ってやる!お前の家族も呪い殺してやる!」
カズが泣き叫び抵抗しながら兵士に連れられていくのを見送ると緊張が解け、分泌されていたアドレナリンが収まってきたのか全身が痛み出した。
「ファル様は?部屋の中にいないぞ!探せ!」
振り返るとファルの部屋から兵士たちが出てきて周りの部屋に向かってバラバラに走り出すのが見えた。
「アイト、ファル様が何所にいるか知らないか?」
「知るわけ無いだろ」
バルアートが聞いてきたのですぐに返事をすると刺すような痛みが左手に走ったので見ると左腕が真っ赤に染まっていて血が指先から垂れて自分のズボンが赤く染まっていた。
「それよりも医者を呼んでくれ、腕が痛くてかなわん」
黒川はそういって血に染まっいる腕をバルアートに見せ付けると顔をしかめた。
「わかった、わかった、医者のところに連れて行けばいいんだろ」
バルアートの後に付いて歩き出すと倒れている外に出る鉄製の扉から外に出るとそこはまだ塀に囲まれた場所でどうやら今いたのは城の一部の棟のようで、歩いていく先には今居たところと同じような大きさの城が二つ見え、今黒川が立っているのは草が生えている道のようで、道の先には今見えている建物の中で一番大きな城が見え、そこにフォレスト王がいるのだろう。
だがバルアートは大きな城とは反対側に歩きはじめ、その先には騒がしく人が出入りをしているテントが見え、バルアートはその中に入っていくので黒川も後に続いて中に入った。
中ではテントの天井につるされたランタンの灯りの下でシーヴァとリンが簡易的なベットの上で横になり看護婦から手当てを受けその様子をジロンが黙って見ていた。
「どうしたんだね?」
「ブラマン先生こいつを見てもらえませんか?」
声に反応して前を見ると白い顎鬚のオッサンと目が合った。
「眠り人じゃないか、生きていたのか?」
ブラマンは黒川を見覚えがあるみたいだが、黒川には覚えが無かった。
「今は生きているが、このままじゃ死ぬかもしれない」
血に染まっている両腕を見せながら言うとブラマンは白い顎鬚をなぞり近くにあったハサミで血に染まっている袖を切り近くに居た看護婦から水を受け取ると黒川の腕を掴み血を洗い流してじっくりと両腕を見ていった。
「これくらいでお前は死なないだろ、お前がこの城に運ばれてきたときはもっとひどかったんだからな」
「ブラマン先生、こっちに来てください」
慌てたような声が聞こえると水を渡した看護婦に何かを言うとどこかに行ってしまい黒川は看護婦に促されるまま椅子に座らされて腕を掴まれて腕に刺さった石やガラスをピンセットで一つずつ抜かれ、その様子を黙って見ていたバルアートが言った。
「俺はもう行くぞ」
テントから出ていこうとしていた黒川はルドルの事を思い出し慌てていた。
「まってくれ」
バルアートが足を止めて振り返った。
「俺の部屋に食堂にいたガキがいるんだが、両親が心配していると思うから知らせてやってくれないか?」
「俺もあのガキの事は俺もよくしらないぞ、シーヴァが詳しいみたいだが・・・・」
バルアートの視線の先を見るとシーヴァがベットの上で眠っていてとても話をできる状況ではなかった。
「判った、俺が調べておく」
テントから出て行き黒川は看護婦に腕に刺さったガラスや石をすべて抜いてもらうと緑色でドロッとした液体の入ったビンを取り出して血が出ていた傷口に塗り始め、塗られたところはひりひりして少し痛い。
「消毒も行いましたのでこれで大丈夫です」
「ありがとう」
お礼を言ってから立ち上がった。
「だれか!こいつを見てやってくれ!」
兵士が担架に運ばれた青白い顔をした目と口を開いたまま瞬きをしない男が担架で運ばれてきて黒川はそれを避けると看護婦と兵士が大声で手当てをはじめ青白い顔をした男の呼吸などを確認し、黒川は助かりそうに無いなと思いテントの外に出ると同じような状態の人が道に並べられていてブラマン先生もその中で看護婦達に指示をしているのが見えたが、城の中からさら担架に乗せられた人や兵士の背中に担がれた病人が出てきて、兵士達は病人を地面に置くとすぐにまた城の中に戻っていき、道に並べられる人の数がどんどん増えていく。
(これは何かやばいことが起こっているみたいだ)
黒川の部屋に居たルドルが無事なのか確認したほうが良さそうだ。
地面に並べられている人たちの顔を見ると先ほどテントに運ばれてきた人と同じような状態で意識のはっきりしている者はおらず、助かりそうに無かった。
地面に仰向けに並べられている人たちを飛び越えて出てきた壊れた鉄製の扉から出入りする人を避けて中に入ると、ファル様を探すためにすべての部屋を確認したためか目に入る部屋の扉すべての扉が開いていた。
黒川は部屋に戻る前に髪の毛や体に付いた砂埃落とすためにシャワー室に向うとシャワー室の前に若い兵士二人が立ち話をしているのが見え、二人を避けてシャワー室に入ろうと二人の隣を通って扉を開けた。
「おい、お前、ここは使用禁止だ」
声のしたほうを振り返ると若い兵士が二人とも黒川を見ていた。
「こんなに砂まみれになっているのにか?」
そういって黒川は頭や服を叩くと埃が立ち、その様子を見た若い兵士は顔をしかめた。
「すまないが使用禁止なんだ、お前も見ただろう、ここに居た人が担架で運ばれていくのを」
「あぁ」
「あれは何かの毒が原因らしく、その毒は何で感染したのかわかっていないため何も使用できないんだ」
「すると水も飲めないのか?」
口の中にも埃が入っているためにウガイをして水が飲みたかったがもう一人の兵士が頭を横に振った。
「それもだめだ、水が一番あやしいんだぞ」
確かに俺もあんな風にはなりたくない。
「わかったよ、君たちの言うことを聞いておとなしく部屋に戻るよ」
「気をつけてくださいね」
ここに来て初めてやさしい言葉を掛けれもらったような気がして思わず笑顔になりそうになったが顔を見られないように黒川は自分の部屋に向けて歩き出した。
部屋に行く途中に呼び止められたり担架で運ばれる人を見たがこの城には何名の人が居たのだろうかと思ったが、情報をわざと教えられていないのだから心配する必要が無いし、この兵士を手伝う必要も無い、むしろ手伝って何かを疑われたときのほうが面倒だ。
自分の部屋の前に戻りファルの部屋のほうを見ると黒川が殺したコンデ人の死体が担架で運ばれていくのが見え、脳みそか血なのか判らないが地面に赤白い内臓がボタボタと落ちていて、担架でコンデ人の死体を運んでいる兵士は青白い顔をして今にも吐きそうな顔をしているのが見えた。
黒川は自分の部屋の開いている扉から中に入りスイッチを押してライトをつけてベットの上を確認するとそこにはルドルの姿は無かった。
部屋を一つ一つ調べていたようだからどうやらバルアートか兵士が来てどこかに連れて行ったのだろう。
黒川は扉を閉めて着ていた服を脱ぎ部屋の隅にあるゴミ箱らしき円柱状の箱の中に突っ込んで下着を着けてベットに寝転がろうとすると髪の毛についていた埃が落ちるのが見え、慌てて手で髪の毛を触るとガビガビになっていて埃が触った手に付き灰色になってしまった。
「ベットでは寝れないな」
独り言を言いながらベットの毛布をはぐり地面に布を引いて横になって感触を確かめると地面に直接寝るよりもましだが背中がごつごつするし、髪の毛を毛布につけると毛布が汚れてしまうのでつけたくないし、頭だけ毛布から飛び出しても地面に当たってしまい頭が痛くなりそうだ。
立ち上がり何か無いかと思いタンスを下の段から開いていくと下から二つ目の引き出しを開けるとタオルのような大きさで少し表面がごわごわしている布があり、頭に覆うようにつけるとちょうど汚れた髪の毛を隠すことができた、黒川は履いていたブーツと靴下を脱いで靴下をブーツの上に置いて立ち上がると、足の裏に地面の冷たい感触がしたので急いでライトを消して毛布の上に移動して横になった。
部屋の外で人が行ったりきたりする足音や怒鳴り声などが聞こえてい眠れそうに無いが寝るために瞼を閉じると『ファル様がまだ見つかっていない』と叫ぶ声と怒号が聞こえた。
あの女の子はまだ見つかっていないのか?無事見つかってもらいたいが死んでしまっていたら俺はどうなるのだろうか?あのファルの姉の名前が思い出せない女が俺が犯人の仲間だと言い出しそうだが、俺がコンデ人を殺しているからあいつらの仲間とは疑われないだろう。
そんなことを考えているといつの間にか眠ってしまった。
顔が温かくなり目を開けるとまぶしくて再び目を閉じた、目を開けることができないので日の光を避けるために動くと何かが腹部の近くに当たる感覚が下ので薄目を開けて見ると何か昨日はなかったものがあるのが見え、血の気が引くのと同時に眠気が覚めて逃げるようと横に移動すると何かが動いた。
「う~ん」
眠たげな声を上げながら何かが起き上がると帽子を被ったルドルが黒川を見た、黒川が見ていたのは帽子の上部でルドルが眠たそうに瞼をこすっていた。
黒川は寝転がりながら頭を右手で支えるようにしてルドルを見ていった。
「おい、お前なんでここにいるんだ?」
すると目をこすっていた手を止めて黒川を見ていった。
「うるさくて目が覚めたらアイトが居ないし、うるさいけど外に居るのかと思ってドアを開けたら銃撃戦になって、怖くて思わずベットの下に隠れていたんだ」
ルドルは怯えているのか震えるような声で言ったが黒川が促すように言った。
「それで?」
ルドルが一瞬黒川を見たが続けた。
「銃撃戦が収まってからしばらくすると誰かが部屋の中に入ってきて名前を呼ばれたけど誰かわからないから怖くて返事をしなかったんだけどいつの間にか眠っちゃって、次に目が覚めたときは何かが横になるのが見えて、恐る恐るベットの下から出て寝てる人の顔を確認したらアイトで起こそうとゆすったんだけど起きなかったんだよ、だから僕はアイトが起きるまで待っているつもりだったんだけどいつの間にか僕も眠っちゃったんだよ」
そういって黒川の横に寝転んだ。
黒川は背中が硬くなっているので横を向いてルドルを見たが帽子をまだかぶっていたために表情は見えない、城の外では誰かが歩いている足音が聞こえるが大分落ち着きを取り戻しているようだ。
時計を探し何時か確かめようと部屋の中を見渡したが時計が無かったことを思い出したため息をついた。
「おい、ルドル」
「なに?」
「俺はもう一度寝る」
「わかった、お休み」
返事を聞くと目を閉じるとすぐに眠ることができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます