第3節 怒りを買いました……

「進路調査用紙?それが何だってんだよ」


マモルが女神に威圧的に聞いた。


「そうですよ。ちゃんと説明してください」


「僕も説明してほしいなぁ」


アオイとユカもマモルに続けとばかりに女神に説明を求めた。


「うーん。何でって君たちあの紙にこっちの世界の職種書いてたからさーてっきりこっち来たいのかなぁーって」


(ちょっと待て……もしかして俺達が悪ふざけで書いたことを言ってるのか?)


(確かに俺達2人は俺が冒険者。マモルが勇者って書いてゴリラに提出したはずだ……)


「ねぇ二人は進路調査用紙になんて書いて出した?」


カミトはアオイとユカに質問した。


「私は…………魔法使いです……」


アオイが小さい声で言った。


「私昔から美少女戦士に憧れてて……美少女戦士は恥ずかしいから魔法使いって……」


((この子変わってるなぁ))


カミトとマモルは思った。


「僕は盗賊って書いたよ!僕の先祖が義賊だったらしいんだ!カッコイイよね!」


((この子も別の意味で変わってるなぁ))


カミトとマモルはノリで書いた自分達が可愛く見えた。


(なるほど……確かに異世界にありそうな職種ばっかだな……)


「ね!みんな書いてたでしょ!うふふ」


女神が「私の言ってたこと正しかったでしょ?」っと言いながら勝ち誇った顔で仁王立ちしていた。


「いやいやあれ冗談だから、本気じゃないから」


マモルが素早くツッコミを入れる。


「僕は冗談じゃないよー!」


ユカが騒いでいたが気にしない。


小声でアオイも「私もです……」と言ってがそれも無視をした。


「そんなこと言われてもさー女神の私でももう返してあげること出来ないんだよねー」


(何を言ってるんだこのちんちくりん女神は……拉致って置いて戻せないってどういう事だよ)


俺が意見を言おうと一歩前に出ようとすると。


「あのさーカミトくんさー女神って心を読めるのって知ってるー?」


俺が怪訝な顔をすると。


「君たちの言うことは分かるけどさー戻すことが出来ないのはしょうがないじゃーん。それとさーちんちくりん女神って……私傷ついちゃうなー」


女神の声色と喋り方とは裏腹に凄まじい殺気が四人を襲った。


俺と守は一歩後退りをしてしまい。由香はポーカーフェイスで分からないが、葵はぺたんと腰を落としてしまってる。


「うん。うん。決めた!」


女神からさっきが収まり、なにか納得したような悪い笑顔を浮かべた。


「みんなにはこの私、女神アルミス様の祝福を与えて、イシアでチームで頑張ってもらおうと思ってたけど、私怒っちゃったから少しいじわるしようかなぁ」


女神の説明が続くが俺達は黙って聞いている。


「んじゃぁ。マモルくん、アオイちゃん、ユカちゃんには希望職業にあっている祝福をあげるねー」


そう言うと女神は守達に手のひらを向け、何かを唱え始めた。


「…………私アルミスの祝福があらんことを」


2分くらいの詠唱の後、守達の体が発光し始めた。


「うお!なんだこれ!」


「なんか光ってる……」


「なんですかーこれー」


3人がそれぞれのコメントを言い終えると突然意識を失った。


「んじゃ!頑張っねーー……転移!」


女神が言い終えると三人の姿が瞬きのように消失した。


「おい!三人に何をしたんだよ!」


「んー三人にはねーそれぞれ祝福を与えてイシアに飛ばしたんだよー」


「なんで俺は飛ばさないんだよ!」


「カミトくんと少しお話しようと思って残ってもらったんだよー」


「ちんちくりん女神と話すことは無い!早くマモルたちの所に連れていけ!」


「また言ったね……ちんちくりんって……」


アルミスはふるふると体を震わせていた。


「もーーー怒った!」


急に顔を上げてカミトを睨むと女神が強い口調で話した。


「君にもね一応祝福はあげるよ。一応ね。だけど私を怒らせたんだから相応の報いは受けてもらうよ」


女神はそう言うと俺の喉元に噛み付いた。


「痛っ!何すんだよ!」


「あなたに私の力を流し込んだのよ。女神の力は時にあなたの力になり、時に害となる!悩みながら暮せばいいよ!」


「何を言ってるんだ……」


「さあそろそろここの空間も限界だからさっさと祝福与えてイシアに向かってねー」


女神がマモル達と同じように俺に手のひらを突き出して詠唱を始めた。


(ダメだ俺も意識が……)


薄れいく意識の中ちんちくりん女神アルミスに目をやる。


「アルミスよ面白いことをしとるじゃないか」


「ちょっと何勝手に入ってきてるのよ!」


壁に魔法陣が浮かび、妖艶なオーラを纏った女性が部屋に入ってきた。


「いいではないか。我はそいつに少し興味が湧いたぞ!」


そう言うとその女性はカミトの体に触れた。


「ちょっと今詠唱中に別の力に介入されたら……やめっ」


「小僧我も祝福を与えてやろう。いつか我に会いに来るのじゃぞ」


女性にそう言われながらカミトは意識を失った。

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