第2話 黒いゴミ袋
麻生さんという方から聞いた話。
ある日の夜中、いつもの帰り道を歩いていると、道の端に透明なゴミ袋がいくつも置かれているのが見えた。回収スペースというやつだ。
ああ、そろそろ回収車が来るのかなぁと思って通り過ぎようとすると、その中の袋の一つがやけに気になった。
真っ黒だった。
昭和の時代ならまだしも、あんな真っ黒なゴミ袋でゴミを出して。
(ちゃんと回収して貰えるのかなぁ)
見知らぬ他人にいらぬ心配をしていると、そのゴミ袋が動いた。
もこもこもこっ、と。
「へ??」
思わず声に出すと、黒いゴミ袋はズザザザザザ、ともの凄い勢いで麻生さんの目の前まで移動し、『ひょこっ』と立った。
まるで袋の中で猫でも立ち上がったかのように、袋全体が縦に伸びて持ち上がるような形になった。
そしてまたズザザザザザザ、と移動し、
さっきあった所とはまったく違う場所、街路樹の下に落ち着いてピッタリ止まった。
麻生さんは、煙草に火をつけて「おちつけ、おちつけ」と自分に言い聞かせつつ、心持ち早足で、帰宅した。
翌日朝早くに同じ道へ行ってみると、他のゴミ袋は回収してあったが、例の黒いゴミ袋だけは、昨夜と同じ街路樹の下にポツンと放置されていた。
それから通勤路を変えた。黒いゴミ袋がその後どうなったかは、当然わからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます