エピローグ

「やっぱり今回も、だめだった……」


 少女はうつむき、小さくつぶやいた。


「王女様、助けに参りました。共に城へ帰りましょう」

「あなたがもう少し、堅物でなければ良かったのだけどね」


 自嘲気味につぶやくその真意は、勇者には伝わらない。


「それは……申し訳ありません。ですがこれが性分なもので……」

「ええ。よくわかってます。誰よりも……」

「誰よりも……?」


 勇者は困惑する。

 探し求めた王女でさえも、この世界の人々と同じなのだろうか?

 話がどうしても今一歩のところでかみ合わない、彼らと。


「さて、どうしたものかしら。ただ待つだけでは事態は好転せず、勇者と行動を共にすれば魔王に襲われ、魔王と行動を共にすれば勇者に殺されてしまう」

「王女様……?」

「勇者よ」

「はい」

「私を殺しなさい」

「……え?」


 勇者の疑惑は確信に変わる。

 だとすれば彼女の役目は、ここで死ぬことなのかもしれない。


 愚直に生きるべき道筋を探してきた彼は、この世界の望みをかなえることに重きを置く。

 だからこそ、その剣を、迷いなく王女に向けた。


「きっと次は、あなたも救ってみせるから」


 少女の最期のつぶやき、誰に向け、誰に届いただろうか。

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魔王はただ自由を願う すかいふぁーむ @skylight

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