第3話 田中運命の出会い

田中が係長を倒し、係長に昇進してから一年が経っていた。一年の中で部長に何度か決闘を申し込んだが、未だに勝利を収められていなかった。「部長、お強いですね。僕も相当鍛えているのに、まだ部長には届きそうにないですよ。」「田中お前に足りないものが何かわかるか?」「トレーニング量ですか?最近仕事が忙しくて。」「違う。お前に足りないもの、それは恋だ。愛するもののために戦う、それこそが人間の強さなのだよ。」「はあ」「私も歳を取ってきた。早く私に引導を渡してくれよ、田中。」部長はそう言って 仕事を切り上げ、愛するものが待つという家に帰っていった。「そんなこと言われてもなぁ。」田中には出会いがなかった。就職のために勉強を必死に頑張り、インターンに参加し、アルバイトを寝る間を惜しんでやってきた田中にはそのような時間はなかったのだ。「いい出会いないかな」そんなことを考えながら、田中は誰もいない部屋への帰路についた。その日の帰り道のことだった。「すみません、落としましたよ。」わたしは女性が拾ったそれを受け取るか、受け取るまいか一瞬悩んだ。しかし、私はそれを受け取ることにした。「ごめんなさい、ありがとう。こんなもの拾ってもらってちゃって。」「いいんです。私そういうのには理解があるんです。わたしほのかっていうんです。」「僕は太郎です。お礼に奢るんで、これから飲みにでも行きませんか。」田中は彼女に運命を感じていた。「もちろんです。」彼女もまんざらでもない様子だった。2人は夜の街へと消えていった。2人は白い光に包まれた朝に戻ってきた。ツバメが2人の頭上を飛び去っていった。2人は結ばれていた。「ほのかさん俺仕事だからもう行かなくちゃ。」「いってらっしゃい。」田中には得体の知れない何かが体の底から湧き出ていた。今ならいける、そう田中は確信していた。「部長勝負です!」田中は会社に着くなりそう叫んでいた。「田中何かあったようだな、来いっ!」田中は昨夜のことを思い出していた。気づくと田中の右のアッパーが部長の顎を捉えていた。床に崩れ落ちた部長が言った。「お前の勝ちだ。お前恋をしたんだな。」「部長ありがとうございました。部長の言う通りでした。」田中は部長に昇進した。まだまだ強くなれる、そう田中は確信していた。

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サラリーマンの戦い @inahero

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