Prologue

0話:孤独

 自分も周囲も受験勉強に明け暮れていた高校3年生の冬、自分の中に大学生のイメージというものが漠然とあって、きっと自分はそうなるのだと思っていた。

 フィクションの中の高校生活など、自分も周囲も誰も送っていなかった。でも、大学生活が自由で楽しいということに、間違いはないだろうと思った。


 けれども、いざ大学に入ってみると大学は孤独だった。幸いにも友人はたくさんでき、高校の頃に思い描いていた大学生活は満喫できている。おそらく、人生で一番楽しかった時期を挙げろと言われたら、今になるだろう。しかし、親友と言われて挙げられる名前はなく、仲のいい友人ランキングをつけろと言われたら、みんな同じ順位になってしまうほどの薄い対人関係ばかりだった。

 だが、特別に親しくなるというのも労力が必要なわけで、結局は寂しいとかつまらないという気持ちに折り合いをつけることを選ぶしかなかった。


 これが理想の自分かとむなしく思うにつれ、別の理想がだんだんと沸きはじめているらしいことにはなんとなく気づいていた。それは、おそらく一生かかっても実現できないし、チャンスがあったとしても実際にはやらないだろう、というようなことだった。でも、映画を見るたびに、ちょっとくらい頭をすり減らして心臓を高鳴らせてみたい、それはロマンの一種で、憧れとはまた違う夢のようなものなのだと思っていた。映画の中のような出来事は、映画だからできる。そんなことは重々承知だ。


 その夢を抱えながらも、大学生にしか与えられない自由を満喫し、酒を飲んで、遊んで、旅行に行けたら行って。それが大学生なのだと割り切っていた。叶えられない夢を追うつもりは全くなかった。


 もし、その夢を叶えるチャンスが目の前に現れたら。

 自分はどういう選択をとるんだろう。

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