第34話 普通の最大最高の攻撃
「いいんじゃないかなー」
まず声を上げたのはレナだった。
「私達に魔人(ブレイザー)の事をわかってる人はいないしー。ここは魔人(ブレイザー)の中で“何か学んだ”露木君に従うべきだと思うなー」
レナは雅久の提案にかなりノリノリなようで、ソウルマフラーが勢いよく即座にレナの周りへ展開した。
「思いっきりいけばいいんだよねー」
ソウルマフラーが巨大な九つの尾へとその姿を変えていき、それが竜の爪のように先を尖らせる。
のんびりしたレナの口調からは察する事のできない形で、その残虐的なフォルムは見る者を畏怖させる迫力があり、突き立てば大地を裂く威厳に満ちていた。
九つ全てを振るえば周囲一帯を瞬時に壊滅させるだろう巨尾の一撃。
《ソウルマフラー・グリム》と呼ばれるこの形態はレナの最終戦闘形態だ。
トゥトゥラの最大攻撃である断絶に煌めく銀の臨界点(ヴォーパルセイグリッド)のような一点一撃による突破力は無いが、ソウルマフラー・グリムは広範囲に攻撃できる殲滅力と九つの尾による連続攻撃を可能とする。
「露木雅久が何を言ってるかわかりませんが、とりあえず目の前のムカつくヤツに全力でブチかませばいいという事はわかりました」
余程吹き飛ばされた事が勘に障ったようで、レナとはまた違った意味でリーンベルも躇いなく雅久の提案にのった。
「それでは、遠慮なく行くとしましょう」
杖の先端を真っ直ぐ魔人へ向けると、その周囲にリーンベルが操る地水火風の属性達が現れ即座に混ざり始めた。
すると、属性達は鮮烈な光の本流となって杖の先端に渦を作り出していく。
その様子は言うなれば銀河に流れる大星砂であり、小さな流星群といってもいいだろう。何も知らないモノが見ればその美しさに見惚れるに違いない。
だが、その小さな宇宙は敵を切り刻み貫く属性刃の集合体だ。地水火風の四大属性は基本であるが故に絶対の属性力であり、この無数の刃が通らないモノは“存在しない”とされている。
地は水に強く、水は火に強く、風は地に強い。
これらは基本である四大属性の関係だが、この属性達は“例外なく”どんなモノにも存在する。
生物や物質は当然として、魔界力や覚醒力や結集力といったモノですら、差はあれど“四大属性が必ず含まれている”のだ。そのため、全属性効果を持つリーンベルの、この“四属絶対連滅刃(グリミナズヴィロウ)”を防ぐ事ができない。
受けてしまえば弱点となっている個所を破壊され、その破壊により防御能力のバランスが崩れ防御力が激減する。ヒビの入った盾ではロクに防ぐ事ができないのと、同じになってしまうのだ。
四属絶対連滅刃(グリミナズヴィロウ)は自壊させるリーンベルの必殺技(とっておき)と言ってもよく、同時に四大属性を操る事が得意なリーンベルならではの奥義でもあった。
「ったく、とりあえずは言う通りにしてあげるわよ!」
トゥトゥラは断絶に煌めく銀の臨界点(ヴォーパルセイグリッド)で魔人を討つため、上空へと飛んでいく。
「あとでちゃんと説明はしてもらうから!」
頬を叩き気合をいれる。
これで三発目の必殺技(とっておき)となるが別に問題はない。断絶に煌めく銀の臨界点(ヴォーパルセイグリッド)に必要な覚醒力や体力はまだ充分にある。もう一、二発程度なら従来の威力でしっかりと撃つ事ができるはずだ。
「撃てッ! 今の魔人(ブレイザー)ならお前達の必殺技(とっておき)で充分に倒せるッ!」
魔人(ブレイザー)の中にいる雅久から激励が飛ぶ。
今なら隙だらけで無防備で防御力が最低限まで落ちた魔人(ブレイザー)を討つ事ができると。倒す事は充分可能だと。それで全てが解決するのだと。
そして、その時これまでの事は何もかも判明する。
雅久の言葉には、この事態に対する答えの確信が込められていた。
「ソウルマフラー・グリム!」
「四属絶対連滅刃(グリミナズヴィロウ)!」
「断絶に煌めく銀の臨界点(ヴォーパルセイグリッド)!」
九つの巨尾と防御完全無視の刃が魔人へ乱れ飛び、そこへ覚醒力が一点に増幅集中された一撃もブチ当たる。
トゥトゥラ、レナ、リーンベルの持つ最大火力。
それが同時に魔人(ブレイザー)へ命中し。
キン、コン、カン、と。
「「「――――――え?」」」
どう聞いても“綺麗に弾かれた”音が空気に響いた。
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