2章 えんじょいパパ活
ラブ&ポップという小説がある。
1996年の作品だから、すでに20年以上も前だ。
渋谷の街を舞台に、初めての援助交際に挑む女子高生の物語。
当時「援助交際」という事象を当事者の女子高生視点から描いた作品として、物議を醸しながら実写映画にもなっていた。
あの主人公は確か、ジュエリーショップで見かけたアクセサリーに心を奪われて、そのお金を手に入れるために、見様見真似で援助交際を初めたのではなかったか。
遠い記憶の彼方から、活字のサルガッソーを掻き分けて、埋もれた読書体験を呼び起こす。
『こんなことしちゃだめなんだよ、名前も知らないような男の前で、裸になったりしちゃだめだ、それを知ったらすごくいやがる人がいるんだ、誰にだって、必ずいる、そいつが一人でいる時に、悲しくて辛くて泣きそうで一人でいる時に、そんな時に、そいつの大切な女が、男の前で裸になってるって知ったら、どんな気分だと思う? お前はわかってない、こういう時、自分のことなんか誰も考えてないと思ってる、こんな、胸とか触られて、まっ裸で、こういう時に、どこかで誰かが死ぬほど悲しい思いをしてるんだよ』
結局、本番前に、男に逃げられたんだっけ?
ひと夏の体験として、様々な種類のキモいオッサンと出会っただけの物語。
ともかく、そんな感じだった。
そんな少女も大人となり、愛する家庭を築いて子供を産み、その子供がまた高校生になるだけの時が過ぎれば、
「ビジネス、ねぇ」
JKビジネスと来たもんだ。
手元には、たまたま書店で見かけた本が在る。
東京は秋葉原で、JKビジネスと呼称される、女子高生店員を売りとしてサービスを行っている店舗への、体験ルポを綴った一冊だ。
なぜそんな本を、と問われれば、あの契約から生活の全てが桃色に塗り替えられたから、と答えるしかない。
あれから毎日、蒼ちゃんとのDMのやり取りが続いている。
話題は何だって良かった。
途切れたら終わりだという強迫観念から、何かを語り続けていた。
一体どうして、そんなに必死に頑張らなくてはならないのか。けっして15歳処女を「いただきます」したいわけではないのに、こうして本まで買って勉強して、自分が置かれている状況を俯瞰しようと努めている。
敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。
情報収集は、何よりも基本にして、鉄板だ。
そんな事を、実際に15歳と契約を交わしてしまってから始めていては遅いのだけれど、後悔は先に立たないからこそ後悔であり、そもそも蒼ちゃんに選ばれていなければ、あれで終わっていたのだから、これで良いのだ、多分。
JK。常識的に考えて、の略ではない。女子高生の略として、今や一般的に通用してしまう。
初出はなんだったのか、それすらも思い出せない。どうせクールジャパンとか、AKBとか、その辺との絡みだろう。
かつてはメイドブームに湧いた秋葉原が、今では制服姿のJKに占拠されている、と本は語る。
おさんぽ、リフレ、撮影会。
女子高生であることこそを価値として、時間を換金する商売。
手つなぎ、ハグ、マッサージなどなど。そんな触れ合いを「オプション」として、ものの30分で1万円が溶ける世界。
そして「裏オプ」と呼ばれる、性サービスが横行している世界でもある。
それが客からの提案だったのか、店側にマージンを取られないお小遣い稼ぎだったからなのか。
女子高生たちは「裏オプション」を提示して、通ってくるお客の『抜き』に専念する日々という。
それを黙認する店もあれば、厳しく規律を保っている店もあり、悪質な店では、店長が味見と称して店員と関係し、それが元で警察沙汰になったことも少なくない、と。
JKビジネス≠JK風俗。
そこで働く少女たちは、やはり「割の良いアルバイト」だと思って応募してくるのだと言う。
中には「観光案内」という募集に応募したら、『おさんぽ』というビジネスだったというパターンもあるらしい。
そして「おさんぽ」に出かけた女子高生と客は、漫画喫茶やホテルへと、消えちゃったり消えなかったり。
結局、女子高生を性的に消費したい大人がいる限り、女子高生を「商品」として扱う業者はなくならない。
なぜなら今の日本では、女子高生を商品と扱って摘発されても、大した罰金にはならないそうな。
警察に摘発される以上の収入が確実に見込めるのだから、ほとぼりが冷めたら名前と形態を変えて再開すれば儲けは確実。
女子高生は、募集をかければ集まるのだから、やらない道理がないのだと。
ふむふむ、となると。
本を置き、日課となってるツイッター巡回を開始する。
このデート援なる募集は、いわゆる『おさんぽ』に相当するJKビジネス個人事業、と言うことになるのだろうか。
蒼ちゃんと出会ってから、見える世界が明らかに変わっていた。
まず、「#えん」の検索を、辞めた。
蒼ちゃん一本に絞ったから他の女の子には興味が失せた、わけではない。
援垢、裏垢を自称している、JK援交コミュニティに遭遇したからである。
蛇の道はヘビ、ではないけれど、同業者同士でつるんでいるのなら、その繋がりを辿っていったほうが、色々と信頼性が高い。
何と言っても、蒼ちゃんは業者では有り得ないのだから、その蒼ちゃんと仲良くしている相手も、自動的に業者からは外れるだろう、という算段だ。
そうそう、毎日界隈の様子を眺めていて、『晒し』という文化が在ることを知ってから、少しずつ援助業界の闇も見えてきた。
晒されるのは、地雷と呼ばれる、悪質なアカウントだ。
先払い詐欺と呼ばれる、5千円から1万円分のアマゾンギフト券のキーコードを写真で送らせて、連絡を断つ女性。「以前に冷やかしをされて、先払いで信頼できる人としか怖くて会えません」などと殊勝な事をのたまいながら、納金直後にバックレる鬼だ。先払いは1000%詐欺です、という警句が出回っているほどである。
そして冷やかし、すっぽかし。それは男女ともに日常茶飯事だけれども、やり逃げ、未払い、盗撮などの女性側の被害も、ちょくちょく報告されては晒されている中に、業者と呼ばれる存在が紛れ込んでいる事に気がついた。
写真とプロフィールには女子大生と書いてあるのに、実際に待ち合わせ場所に現れるのは全くの別人で、おまけにホテルに入ったら無言でシャワーを浴びて事に及び、ものの15分で搾り取っては去っていくという。
その正体は、風俗店所属のプロだったり、お店では客がつかないような高齢の女性であったりして、断ろうものなら怖いお兄さんが現れたりする、なかなか厄介な存在らしい。
「逆に、最初に蒼ちゃんと当ったのは、運が良かったのでは?」
それはどうだろう、とも思いつつ、蒼ちゃんがつるんでいる女子高生なら悪辣な業者もいないはず、と目論んで、彼女たちがフォローしあっている女子グループに、観察先を切り替えていた。
デート援なる存在に興味を抱いたのは、それからである。
1時間で3千円〜5千円。手つなぎ、ハグ、腕組みはオプションで。あくまで健全なデートのみ。デート代はすべて男性持ちで、プレゼントなどは料金には含まれない。
そんなアコギな商売が存在するものかと、最初は疑心暗鬼しかなかった。
中には、映画を一緒に見るだけ、というデート援もあるという。
2時間黙って、隣に座っているだけで1万円。
そりゃ、たしかに、現役の女子高生に遊んでもらえるというだけで、お金を払うに相応しい状況ではあるのかもしれない。
けれどもそれは、男性側が自主的に渡すお小遣いではなく、女子高生側が料金とオプションを設定して、出会って先払い、女の子が不快に感じたらそこで強制終了という、およそサービス業とは思えない強気な条件なんである。
「社会、舐めてるだろ」としか思えない世界が存在しているわけであって。
闇は、底なしに、深い。
そりゃ、買春が良いとは言えない。言えないけれど、だからと言ってデート援もまた、アコギな商売じゃないのだろうか、と呆れながら観察を続けていたら、上には更に上がいた。
パパ活である。
「パパ〜、マンション買って〜」
というセリフは昭和時代には確認されているから、大人の男性が若い女性を囲って愛人にするのは、今に始まったことではない。なんなら、飲み屋のママさんや大社長の第二婦人なんかは、住む場所と生活費を与えられる妾として、今でもヒッソリ、伝統は受け継がれているのではなかろうか。
それもまた、本来ならば、裏に秘められる話である。水商売の女性を囲う文化が、夜の社会では当たり前にあるのだとしても、おおっぴらにお天道様の下で言いふらすような事じゃ、ない。
ないはずが「パパ活」ときた。
こちらは主に、女子大生から20代前半の若い一般女性が、金銭に余裕の在るオジサマをターゲットとして募集をかけ、一月1〜2回の高級料理店での食事を共にするだけで、数万円から10万円を受け取る、という悪魔のような商売である。
おまけにそれを「社会的に成功している経営者から直接学ぶことで、社交マナーを身につけて、自分のランクアップにもなる」というような、高額をせしめるだけでなく、勝ち組に上り詰めるための登竜門、みたいに肯定的に捉えているのだから、
その上オチとして、高額のお小遣いに溺れ、上流の遊びの味を知ってしまって下界に降りられなくなった女性たちは、結局若い身体をオジサンに捧げて情婦に堕ち、若さを失えば捨てられる、というテンプレ没落ストーリーまでがセットとなる。
どうもデート援は、そのパパ活を母胎として産み落とされた、呪われた子ではなかろうか。
デート援に並ぶP活の文字。募集要項に載せられる「優しいパパさん、待ってます」。
万札を気前よく渡し、欲しいものは二つ返事で買い与え、肉体を要求せず、精神的拘束もせず、都合の良い時に呼び出して即座に対応してくれるパパを求めて三千里。
そんな阿呆な男、いるわけねぇ。
いたとしても、下心しかねぇ。
そもそも社会的に成功した大社長様の中に、女子高生を飼いたいロリコンなんて本当にいるのか。
いたとしても、そういう人は経済界の独自のルートで安全な女性との出会いを求めるだろうし(偏見)、社長業の傍らでスマホを片手に女子高生に応募するという姿がまず、想像できん。
だと言うのに、そんな空想を求めて発信する女子高生が、山といる。いや、山は言いすぎか。せめて天保山(標高4.53メートル)くらいは、いる。
そう、女子高生で本番を公言しているアカウントは、JKを看板に掲げているアカウントの中には、意外と少なかった。それも当然で、18歳未満との金銭の絡んだ肉体交渉は本邦の法律上犯罪となるのだから、分かっていて買う方も馬鹿なわけで、わざわざ警察から目をつけられるリスクを高める必要はない。
「15歳処女と分かって買いに行った俺、大馬鹿じゃないですかね?」
大丈夫、まだ手も繋いでない、セーフセーフ。
で、女子高生風俗嬢を発掘するのが困難な代わりに、春休みに突入して、ツイ援界に雨後の筍のごとく激増したのが、デート援を看板に掲げたピチピチギャル(死語)の大群なのである。
いや、ほんと、まぁ、ねぇ。
なぜそんなに大量の女子高生が湧くのかと言えば、買う大人がそれだけいるからだ。
需要と供給がなければ市場は回らない。
新規参入がこれだけ多いのに市場が崩壊しないのは、需要がそれだけ多いからである。
裏垢と称する、出会いを目的とした男性アカウントは、それはそれは、呆れるほどに多い。年齢不詳から30代、40代、はては50代を公称するオッサンどもが、女子高生の気を引こうとあの手この手で、褒めておもねり媚びへつらってゴマをする。
傍から見る分には醜悪の極み、と笑っていられるけれども、今では自分もコッチ側である。おまけに相手はガチ15歳。
「どうしてこうなった……」
て、自業自得だ。好奇心の塊なんて、刀削麺のごとく薄く削って燃えるゴミにでも出せばいいのに、後生大事に抱えていたからアダとなる。
では、そんな裏垢オッサンたちの群れの中に、女子高生が求める素敵な『パパ』は存在するのか?
それは多分、学校では清楚で真面目な優等生、放課後となればホテルで濃厚なサービスを施してくれて、おまけにご飯を奢るだけで会ってくれる、そんな女子高生を求めて得られる可能性にも等しい。
つまり、お互いの理想が幻想だ。妄想だ。虚構だ。夢物語だ。
だと言うのにこの街には、男女ともに夢を追い求めて、金銭を介した関係構築ゲームを、精力的に誇って恥じない人種がいる。
いや、分かってますって。自分がその中でも最鬼畜に相応しいポジションだって事は。結果的に15歳処女を落札したってことは、つまりそういうコトに及ぶ淡い期待もあったわけで。
【売春の世界に足を踏み入れた日から電車のあのおじさんも公園にいる人の良さそうな子連れのお父さんもうちの父親ももしかしたら裏では女を買っているのではないかと猜疑心でいっぱいになってその度にそれは違うと自分に言い聞かせるけれど無意識のうちにまた疑ってしまうというのを反芻している】
蒼ちゃんの投稿が胸に刺さる刺さる。
明らかに妻子持ちだろ、というオッサンも参加している界隈である。
繁華街を歩いていれば、親子と見間違うカップルが、ぎこちない距離感でデートしている場面にも遭遇してしまった。何が本当で、何が嘘なのか。信じられるのは時間の対価に受け取った現金だけ、という騙し合い。
いい歳した自分だって、心を直に金ヤスリで削られるような気持ちになるのだ。
10代の少女が、見知らぬオッサンに、たとえ金のためとは言え、笑顔を維持し続ける労力など、想像もしたくない。
したくもないけれど、援垢少女たちのコミュニティを覗いて目に飛び込んでくるのは、少女達の悲鳴に似た愚痴の応酬ばかりであって。
うん、分かっていたんだ。
女子会に紛れ込んだって、男にとって嬉しい事なんて、何一つ無いってことは。
キャッキャウフフの素敵な花園が展開されているのは、二次元だけのファンタジー。
そう、現実のJKのやり取りの凄惨さと来たらアナタ、大のオッサンだって裸足で逃げ出すディストピアですよ。
【デートしかしないって書いてあるのに、プチ出来ますか? 本ならいくら? とか聞いてくる馬鹿なんなん?】
【あいつら、油断するとすぐに腕掴んでくるよな。お触りはオプションやって書いてあるやろ】
【三宮まで呼び出されて冷やかされた。マジありえん。せめて交通費払えや】
【こっちは2時間かけて来てるんやで? ゴメンのDMなんていらんから、黙って1渡せアホ】
【今日の下着は何(笑)とか、デートで胸くらい触るの普通だよね(笑)とか、(笑)付けとけば何喋っても許されるとか思うなよ、マジキモっ!】
【思ってたのと違う、とか知らんわそんなん。そっちこそ鏡見てから出直せボケ】
【どんな男性がタイプ? って聞いてきたから、お金渡したら帰ってくれる人、って答えたった笑】
【ドライブ行ったら田舎に連れてかれて、いきなり自分のブツ出してオナリ始めた。犯されるかと思ったわ】
状況を想像するだけで怖気が走る。
可愛い女の子たちの口から迸る暴言に、ではない。
リアルの少女に対して、成人して責任ある立場についているであろう男性陣から放たれる、剥き出しの本性のエグさに、だ。
小説や潜入ルポを読んで、多少は現場を知った気になっていたのが甘かった。甘すぎた。
今や世界中から非難の目を向けられる、日本人男性の女性蔑視の酷すぎる現実が、想像を絶するほどに醜悪だったからだ。
もちろん、そんな酷い客ばかりではないだろう。
デート援の女の子たちは、その日のデートの写真などを投稿し、「こんな素敵なプレゼント貰っちゃいました」「本当に美味しかったです、ありがとうございます」と、他人に羨ましがられるような日だって、あるのだ。
あるけれど実態は、
【あ〜、「美味しそうにご飯食べてる君を見てるだけで幸せだよ」とか「何がほしいの? 何でも買ってあげるよ」って言ってくれるパパ、どっかに落ちてないかな、ていうかカネクレ】
こちらが本音となります。
そしてそんな女子高生たちが羨むのが、食事だけで5万貰ったとか、月契約10万の面接行ってきたとか、自慢げに語るパパ活女子というわけで。
あ〜う〜げ〜。
情報処理が追いつかなくて熱暴走で思考がおかしくなりそうです。
それでなくとも金銭感覚が麻痺し始めております。
こちらが50円の割引クーポン握りしめてファーストフードで胃袋を膨らましている間に、世間の皆様はその100倍以上の額を掌で転がして、愛だの恋だの割り切った、大人の関係ゲームに興じていらっしゃるわけなんです?
ちなみに、パパ活の男性側の意見もまた、何というか控えめに言って、頭沸いてる。
40代/180/70/会社経営/既婚/禁煙/敬語/紳士/非チビ/非ハゲ/非デブ。という自己紹介にわざわざ、食事のみの関係は考えていないです、と堂々の不倫宣言。
「有史以来、裏の顔同士で交流する手段は皆無だった、ツイッターは、裏の顔同士で交流する人類初の体験なのかも知れない」などと、自分の矮小な人生経験を人類史にまで広げて恥じない大きな心。
「自分の年収は自分の親しい人10人の年収の平均値に等しい」という出典不明の文言を元に、「パパ活において自分の10倍の年収のパパと付き合えば、君の年収が倍になると考えれば、パパ活のメリットは言うまでもない」という怪しげな宗教観。
果てには「婚姻届とは男性側が生涯に稼ぐであろう1~2億円というお金を女性に貢ぎ、家事と育児とセックスの見返りを受け取るという契約書なのです」と、思っているだけでも頭おかしいのにそれを公表してドヤ顔している厚顔無恥と来ている。
世の中には、そんなパパばかりが集う出会い系サービスもあるというのだから、狂った男って存外に多いのだな、と痛感するしかない。
けれども今までの社会人生活、まともな経営者なんてのに当たったことないから、経営者なんて皆、人間の屑だと思っていれば大体当たるのかもしれないけれど。
それはそれとして。
女子高生たちのコミュニティでは、やたらと男性アカウントの情報が乱れ飛ぶ。
良かった客の紹介であれば微笑ましいけれど、大抵は、地雷アカウントの晒しあいだ。
やれ、誰それに冷やかされた。
やれ、誰それにヤリ逃げされた。
やれ、誰それはお金くれなかった。
やれ、誰それは盗撮の常習犯。
まともな客の方が少ないんじゃないかと不安になるほどに、女子高生たちの晒しは日々、更新されていく。
その膨大な晒しの中に、情報垢と名乗る女性の注意喚起のツイートが、よく混じっていた。
【ツイッターの援垢では匿名をいい事に自分にない願望を事実のようにアピールする人が結構います。お金持ちアピールするは大してお金を持ってない人。医者、弁護士、会社社長などをアピールする人は社会的地位が無い人達だと思ってほぼ間違いないです】
なるほど、パパ活男子のプロフィール欄を見た後では示唆に富む指摘。
D《デート》Y《円》亜美と名乗るその女性は、かつてデート援で稼いでいたが今は卒業し、界隈で困っている女の子たちに健全で安全なデート援の方法を情報提供するために活動している、OBだという。
女子高生たちが噂しているCP=サイバーポリスの情報も、どうやら出所はそのアカウントらしい。
DY亜美の元には、日々デート援嬢の相談や悲鳴が舞い込んできており、彼女の経験に基づく的確なアドバイスに、女子高生たちは啓発され、学び、決して警察に捕まらないように、賢く活動をするのだという。
右も左も分からない女子高生たちに、優しく道を指し示す先導者。といえば聞こえがいいけれど、よくよくその発言を追ってみると、「女子高生が知らないオジサンとデートしてお金を貰っても犯罪じゃない」だの「困っている女の子から、合法的にお金を得る手段を奪ってはいけない。女の子にも事情があるのだから」と、やたらと似非売春行為を擁護する発言が目立つ。
たとえDY亜美さんが、たまたまデート援で成功し、いい思いをした女性だったとしよう。が、現実に彼女の元に寄せられる相談は、強姦、未払い、盗撮といった、犯罪に遭ってしまった少女達の悲鳴が多い。
それだけのリスクを冒してまで、デート援なる活動を、果たして奨励しても良いものだろうか? それともそう言った被害を防ぐためにこそ、DY亜美さんのような活動が必要なんだろうか?
「あかん、疲れてきた」
善悪の判断基準が、段々不明確になってきた。このままツイッター見てたら、人間不信に陥りそうだと、ある意味、気を抜いた時だった。
「私たちは『買われた』展?」
とあるイベントを紹介する新聞記事だった。
買う買わない、という単語に敏感になっていたからこそ、琴線に触れたのだろう。
軽い、本当に軽い気持ちで、リンクをクリックして記事を開く。
それが、社会のあらゆる悪を閉じ込めた、パンドラの箱とも知らずに。
――私が売春していたのは、小6の11月26日から始まり、2年間です。
――「こいつらに捕まったのが私でよかった」と思うようにしていました。
――”男性”は私を道具としか見ていなかった。
――「お金ないなら、稼いできてよ」友達がいなくなるのが怖かった私は従った。
――JKビジネスがきっかけで、お姉ちゃんに誘われて。
――体を差し出す代わりにおにぎり一つもらった。
――行くところがないとき、声をかけてくれるのは男の人だけだった。
頼れるのがそういう人しかいなかった。
何日も何も食べていなかったから、仕方なかった(15歳・中学生)
――買われる前の背景があることを知ってほしい。
家族や学校、施設で虐待されたり、ひどいことを言われたりしたことが繋がっている。
そうでもしないと、生きられなかった(20歳・高校生)
――私たちが、いま、ここに生きていることを知ってほしい。
このくそったれな社会の底辺で、生きるために仕方なく、体を売っている少女たちが、居た。
いや正確には、この21世紀、先進国である日本においても、だ。
長引く不況に、ブラック企業、過労死、サービス残業、非正規雇用、生活保護、失われた20年、超氷河期世代、年間3万人の自殺者、DV、シングルマザー、貧困家庭の急増。
世を憂い、嘆き、絶望するに足る暗いニュースには事欠かない。平成の御代になっても、貧困のために餓死した家族がいるほどだ。
だったら、想像もできるだろう?
生きるために、食べるために、ただ殴られずに眠れる場所を求めて、体を売る少女が存在する光景を。
そう、海外ではまだ、当たり前にいるのだ。
10歳で強姦されて母親になる少女が。
戦乱に巻き込まれて戦利品として連れ去られ、性奴隷兼花嫁の競りにかけられ、言葉も通じぬ夫に嫁がされる少女が。
恋も知らず、愛も与えられず、ただ労力として扱われて、文字も読めない少女が。
貧困ゆえに、無学なために、選択の自由もない生活から抜け出せない人々が。
日本だけ例外だと、いつから錯覚していた?
企業に属し、賃金を稼ぐ大人でさえ自らを人権の剥奪された奴隷だと嘆くような社会で、どうして、より立場の弱い女性と子供が、悲惨な現実に晒されていないと思うのか?
――私たちが、いま、ここに生きていることを知ってほしい。
知ってほしい。観てほしい。気づいてほしい。聞いてほしい。そして出来れば、手を差し伸べて欲しい。
たったそれだけの叫び。承認欲求など生ぬるい、赤子の絶叫にも似た生存欲求。
生きるために、売春せざるを得ない現状を。
家族も、学校も、社会も信じることが出来ず、町をさ迷う子供がいることを。
ただ、今を、死なない――それだけの戦場に、生身で放り出されている少女たちが居ると言うことを。
知って、しまった。
あぁ、ならば。
向き合わなければならない。
真剣に、目をそらさずに。
蒼ちゃんの必死さに。
【基本、貧困なので】
あの投稿の、真意に。
【容姿でこんなにも真剣に悩んでいるのにも関わらずそれを無神経にしょうもないだのくだらないだの罵り世の中は性格だから大丈夫っていう無意味な希望的観測リプライを飛ばしてくるけど結局は容姿がいい子にしか目を向けようとせず人の気持ちを理解しようとしない援助男のみんな~!】
援助を、乞う人がいるのなら。
【援垢女子とつながりたい】
それに応えられる為に、人は大人になるのじゃないだろうか?
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