第9話 君はパイオニア~イタドリ

 高校で生物を教えるようになってから、あらためて意識し始めた植物が幾つかある。例えば、パイオニア植物もしくは先駆植物と呼ばれる草本植物について、かなり意識するようになった。どういう訳か、子供の頃に慣れ親しんだ雑草の類にはこのパイオニア植物に分類されるものが多いのである。

 母がスカンポ、と呼ぶ植物の本名はイタドリだ。イタドリと言われてもピンとこないが、スカンポならば即座にその姿が浮かぶ。まるで机の下にある足の存在を忘れたかのようにだらしなく足を広げた女子高生のごとく、大き目の葉が広がっていて、芽やら茎やらに赤い色が入っている。スカンポには申し訳ないのだが、どうにもこの植物の葉は明け透けというか、何も考えていないで広がっているような印象を持たせる。実際には、その広い葉で多くの光を受け止めているから、痩せた土地でも生きていけるのである。


 パイオニア植物は河原のような砂利だらけの土地にも根を張って生きていける植物である。あるいは富士山の宝永火口の辺りに広がる、水を貯えにくい土地などで、風に吹かれても抜けたり流れていったりしにくい植物である。イタドリの他には、秋のお月見でお馴染みのススキもパイオニア植物として知られている。


 痩せた土地に無限の可能性が広がる。そう思うと、もう少し希望を持って生きられる気がする。

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