第77話  醒めない夢

77.

~果歩が消えた日から 28



 不思議と何故かこの時まで届けを出すっていうことに

思いが及ばなかったけど、取っといて良かったよ。



 これで晴れて私はシングル。

 誰と恋愛しようと結婚しようと自由なのだ。



 夫が本気で離婚しようと思って私に離婚届を出した

わけじゃないことは明白で、その後この話を夫が持ち出す

事は無かった・・し、私からも・・無かったのだから。



 ただの憂さ晴らしに夫が書いた離婚届。

 ブラボ-! お陰でスムースに独身になれたわよ?



そして私は離婚届けを出したことを溝口さんと

母に報告し、それから6ヵ月と少し過ぎた頃

私は溝口果歩になった。



     ・・・



 そして十数年後、私は某スーパーとダ○キのある

駐車場で元夫と遭遇したのだった。



 私には信頼のおける溝口啓太という愛すべき夫と

ずっと私を支えてきてくれた愛する母がいる。


 そして碧が。




 元夫も頑固一徹で人の気持ちに添えない父親も

もうちっとも怖くないし、障壁でもない。


 Come on!



 そんな気持ちで何やらしゃべり倒している元夫を

私は見ていたのである。

 あんなに趣味のように浮気しまくっていた男は

着古した上着を着、顔色の余り良くない風貌で

普通にただ行き違っていたら元夫とは気がつかなかったかも。



 今の夫が駆け寄って来た時、ふたりの差があまりに

鮮明すぎて、元夫のとこを思わず哀れんでしまったほど。



 時は残酷なのだと思った。

 こんなにもひとりの人間の風貌や雰囲気、生活感を

変えてしまうものなんだなぁと。



 私は元夫にどんな風に映ったのだろう? 


 私もあの頃と比べたら老けたからねえ~、でも

声をかけてきたってことは、全く別人とまでは

変貌してないかな?


 話合いの場を設けることになったのだけれど

さてさて、どんなことになるのやら、少しワクテカして

いる自分がいる。

  

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