第60話 醒めない夢

60.

~果歩が消えた日から 1 1



 「お前が原因だったんだなぁ、参った。

 やってくれたな!

 果歩は居なくなっちまったよ。娘連れて家を出て行った。

 あんまり突然のことで原因が判らなくてずっと悩んでた

ってのにぃ、お・ま・えが原因だったとはな」



 続きを話そうとした俺の言葉を遮り、嬉し気に仲間が

話を取った。


 「奥さん、私の話しなんて信じないって言ってたのにぃ。

 そっかぁ~、家出しちゃってたんだぁ。やっぱり私に

虚勢はってただけなんだ、ハハッ」



 「どうして果歩にそんな話をしたんだ? 話す必要なんか

ないだろう? 」



 「だって私たちが仲良くしてたの知っててもあなたの

側から離れようとしないから、何かムカついちゃって」



  「お前、頭大丈夫? だいじょうぶですか?

仲良くって、その理由はちゃんちゃらおかしいぞ。

 俺達が別れた後に言いに行ってるじゃないか。

 俺に対する腹いせを妻に向けるなんて最低なヤツだな

お前」


 俺はこんなに自己中で性格の悪い女に夢中になってた

っていうのか。仲間のあまりの言いように最低なヤツだな

と言った後、言葉が続かなかった。


 と、急に妻のことが気になりこのまま仲間との無為な

だけの遣り取りをする時間も惜しくなりサインをして

適当な金を渡した。果歩を探しに行かないと・・と思った。



 そう思ったけど、俺は行動に移さなかった。


 だって今まで出来る限りのことはやりつくして

いたから。

 ジタバタしてもおいそれとは見付かるまい。


 落ち着けぇ~、そしてやるべきことを遂行しろ!



 俺は言った。




 「最低なヤツだけど、俺の子供が出来たんだから・・

しようがないなっ。果歩も出てっていなくなったし

結婚しよか、俺達! 」




  「えぇーっ、ほんとに? 」




 単純な仲間は俺と結婚できることに泣いて喜んだ。

 俺と結婚できるのなら、婚約者とはすぐに

婚約破棄するとも言った。


 破棄するとどんだけお金が飛ぶのやら

俺には関係ねぇ、黙って見てるだけだな!





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る