第59話  醒めない夢

59.

~果歩が消えた日から 1 0




 「店長、奥さんお元気ですか? 」


 

 「何でここで妻の話題なんだ? まさか妻に言うとかって

脅すんじゃあないだろうな! そんなことしてみろっ、

お前の婚約者にも話すぞ! 」



 「脅かすってぇ~、脅かすって・・そんな怖い言い方

しなくてもぉ。


 あれっ? じゃあもしかして私脅かしたことになるの?

 えーっ、やだぁーっ! 」



 「・・? 」



 「実はぁ、私1ヶ月ほど前に奥さんに会いに

行ったんだぁ。

 あのぉ、何も聞いてないんですか? 」




 「まさか、オマエ・・」



 「脅してませんよ、脅してなんか・・いませんから。

 ただ、私は妊娠してるってことを聞いて貰いたかった

だけだから(ほんとは金をせびっちゃったけどね、テヘッ

それとちょっといじっちゃったけどもね。だってぇ~

腹が立ってたもんね、しようがないじゃん。)」



 あれっ、ひとつひとつの記憶を何となく辿って

いけば、あら何と・・私しっかり奥さんを脅してたかも。

怖いよ、友紀。

 

 思い出した、最初は脅したりするつもりなど

毛頭無かったのに奥さんが私の言うことを疑うもんだから

段々腹が立ってイライラしてきて、結構意地悪

言っちゃってたかもかも。


・・・



 俺は仲間の言葉に耳を疑った。

 

 果歩に会いに行っただとぉ~、

 妊娠したことを話しただとぉ~

 いけしゃあしゃあとそんな話を俺の前で平気でしゃべる

この女を眺めながら、果歩が家を無断で出て行った理由が

ようやく腑に落ちて、ある意味つき物が落ちた。


・・と同時に猛烈に怒りが湧いてきた。

 こんのぉ、クソ女めっ!!



 俺にバッサり振られた腹いせにやりやがったな。


 法も刑も関係ないとしたら、張り手を2、3発かまして

倒れ込んだところを思い切り蹴っ飛ばしてやりたい気分

だった。

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