第58話 醒めない夢

58.

~果歩が消えた日から 9


 


 「なんだよ、今頃妊娠って。

 婚約者の子じゃないのか? 」



 「たっちゃんとはHしてないしぃ~。結婚する前に

子供ができたら困るからって、してないんだよ」



 「ほんとか? 信じられないなぁ~。なのに俺と?

俺とあんだけあんなことやこんなことしてたお前が?

嘘付け! 

大人をそう簡単に騙せると思ったら大間違いだぞ」



「あーあ、そうですか、そうですか。

 じゃあ、生むしかないね。いいですよ、いぃ~いですよ

産んでやろうじゃないの。DND鑑定して店長からは

何も毟り取れそうじゃないから、ご義両親に話して

慰謝料やら養育費やら責任とってもらいましょうね。

 婚約破棄されると思うからこっちのほうの倍賞も

していただきますよ? 」


 ブンスカ怒って彼女は踵を返そうとした。


 ほんとにほんとなのか?


 騙されている可能性のほうが高いと思いつつも、万が一を

考えると恐ろしくて黙って帰すわけにもいかなかった。



 取り敢えずサイン押印して金は後日振り込むと

いうことにした。



 疲れたどうしようもなく疲れたそんな俺に仲間は

次の矢を放ってきたのだった。


 それは疲れた疲れたと呟いている次元の内容では

なかった。


・・・


 突然やって来た私に驚いてはいるものの店長の

最初の言動から奥さんから何か言われてたりする素振りが

一切見えない。


 私の言動に本当に今初めて聞いて驚いたっていう反応だ。

 ・・てことはぁ?

  奥さんは私の妊娠のこと話してなかった?

 もしかして、それどころか私と会ったことさえ話してない?

 

 どうなっちゃってんの・・って思った。



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