第57話  醒めない夢

57.

~果歩が消えた日から 8



 今更何で?


 不信に思ってる俺をよそに馴れ馴れしく親しげに

訝しむ俺に頓着すること無く仲間が話しかけてきた。



 俺は相手がどうこうではなく、誰であれこのような

態度をとる行為が大嫌いだ。


 ほらっ、あれだ。

 神経逆撫でするっていう行為。

 

 今仲間がしていることはそういうことだ。

 

 普通あれだけの喧嘩別れしといて、わずか2ヶ月もしない

うちに別れた相手に会いにくるか?

 しかも俺にバッサリと切られているのに。もしかして

刺しに来たとか?


 俺は仲間の手元や動作に注視して、何か彼女が

悪意の行動を起こさないか身構えた。死んでたまるかよ

こんな女のせいで。



 そんな緊迫している俺をよそに仲間が話し出した。




「ごきげんよう、店長♡

 お店なんとかもってるんですね。あたしもう潰れて

しまってたと思ってたから、よかったぁ~」



 何が潰れてしまってたら・・だ。お前のせいで

あれからてんてこ舞いだったんだぞ。


 


 「はいはい、ンでお嬢さん今日は一体どんなご用件? 」



 「サイン貰いに来たんだぁ~」



 「サイン? 判るように話せよ! 」


 このタァ~こっ。




 「店長の子ができちゃったんだよねぇ~。

友紀困っちゃう~」



 ゲッ!

 何を言い出すかといえば、このタコ女、ものすごい

こと言い出しましたよ。やめろぉ~そんな恐ろしい

こと。



 「あははっ、マジ笑えるぅ。

 何なんですか、固まっちゃって。

 怖いですか、私のこと? っていうか子供のこと。

 大丈夫ですってばぁ、責任とって父親になれなんて

言いませんからぁン。たぁだぁ~・・堕ろすのに店長の

サインと印鑑・・いるんで、会いに来たんですぅ。

 こんなこと堕ろすの手遅れになって婚約者にバレタら

大変ですよ? 店長も慰謝料取られますよ。そう考えたら

病院の手術代で済むなら安いもんですってば! ネ? 」




 軽ぅ~いノリで話す目の前のタコ女、殺しても

いいだろうか? 

 思わず存在しない誰かに聞いてたよ俺。クソっ!



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