第56話 醒めない夢

56.

~果歩が消えた日から 7



 仕事のことは自業自得だった。それでなくても

ゼロからのスタートで、いや果歩の金を使っての

スタートだったからマイナスからのスタートだな。

 

 なのに最初少しばかり上手くいったからっていい気に

なってどんどん仕事に向き合わなくなって、仲間との楽な

時間に逃げ込んで、果歩にも現場を・・たぶん

見られていたと思う、浮気の現場を見られたり、最低で

クズなことばかりしてた。



 出て行ったのはどうして今頃なんだ? って

そればっかり考え思いつめたけど、店を出店してからの

ことを冷静に振り返ってみたら、こんな状況

果歩でなくたって逃げ出すだろうよって思える

ようになった。


 皮肉だな、果歩。


 お前が出て行く前に仲間とは別れてたっていうのに。


 だからやっぱりどうして今なんだ、今出て行かなきゃ

ならなかったんだっていう気持ちがいつまでも

ループして俺を悩ませてるんだぜ。


 最初はもしかしたら事故かもとも考えたけど

警察の方に何も情報が入ってないとなると

逃げられた可能性が高い。

 


 情けなすぎる。しかしそれにしても果歩の唯一の

お宝の金は俺の店に全部投入してたんだ。


 金をほとんど持っていないのに、しかも碧まで

連れて出ていけるのか? おかしいよな。


 本当に果歩の意志で家を出て行ったのか、はたまた

事故にでもあったのか、2人が家からいなくなって

ああでもない、こうでもない、どういうことなんだと

同じことを毎日ぐるぐる考える日々が続いている。


 男子学生も3月の半ばで辞めて、仲間は彼女が

突然結婚を仄めかしてきたことで突然切って

店は俺ひとりで切り盛りすることになった。



 ほんとっ、笑うしかないなっ。店でもひとり

家でもひとり・・ボッチかよぉ~なさけねぇ~。(泣:)


 

 ほんとは違反だけど仮眠とる間は時々深夜過ぎにだけど

店を閉めてる時間がある。バレたら大問題だな、きっと。

しようがないだろ、寝なきゃ死んじまうって。


 早く人手をどうにかしないとな、それとも店が

潰れるほうが早いかっ!



 果歩が家から居なくなってひと月が経った頃

 そして何とか学生のバイトを入れることが出来た頃

 仲間がひょっ こり俺の前に現れた。


 なんで?





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