第53話 醒めない夢
53.
~果歩が消えた日から 4
いや駄目だわ、そんなの。
自分の気持ちがしんどいからって彼を共犯者にしようなんて、私ったら。
ここで最後の最後まで記憶を失くしたってことにすると
決めたのなら、自分ひとりでこの問題を抱えていかなきゃ。
彼を
目の前に飛び出して散々驚かせて、警察にも取り調べられるような目に
遭わせた上に、実は私が本当は記憶なんて失くしてないのに、自分の都合で
記憶失くしたことにしてることを知らせて、その上周りには内緒にしておいて下さいなんて……医師や警察官へ嘘を付かせることになるようなこと……
駄目駄目っ、果歩、駄目だよ。
よしっ、ばれたらしようがないじゃないの、一旦家に帰ればいい。
奇跡的にこのまま身元がばれなければ、娘とふたり生きていけるように
対策をたてて、なんとか切り抜けよう。
私は気持ちを固めた。
気持ちが揺れてる間、なんか……ずっといやぁ~な気持ちだった。
けれど迷いがふっきれたからか今は気持ちが落ち着いてきたのがわかる。
-
◇ ◇ ◇ ◇
「お邪魔します」
「遠慮しないで! ささっ、碧ちゃんと果歩さん疲れたでしょ?
こちらへどうぞ。
何か飲み物いれますね。
あっ、果歩さん碧ちゃんにはりんごジュースにしましょうか?
僕、結構ジュース系に拘りがあって果汁100%のものしか、
買わないんですよ。
小さい子にちょうどいいでしょ? 」
「すみません、運転してたから私なんかよりずっと
溝口さんのほうがお疲れでしょうに。
ありがとうございます。
それと碧にまで。
でもすごいですね。
果汁100%だなんて、子供を持つ母親から絶賛信頼度高くなりますよ?
健康に気をつけられてるんですね? 」
「ええ、そりゃうもう……なんて言ったら少し引かれそうですけど、
正直その通りなんです。
すごく気をつけてます。
ここ数年のうちに学生時代の友人、会社の上司、同僚と
驚くぐらい次から次へと難しい病気で亡くなってましてね。
自ずと自分の身体に気を遣うようになりました」
◇ ◇ ◇ ◇
溝口さんにコーヒーを淹れてもらってほっとさせてもらった。
碧は出してもらったりんごジュースで ごきげんだ。
溝口さんが『碧ちゃんの玩具になるものがないから
碧ちゃんつまんないよなぁ~』なんて言いながら
奥の部屋から将棋の碁盤と将棋を持ってきてくれて碧に貸してくれた。
あ~こらっ、碧ったら投げまくってるよ。
ンで溝口さんが碧の放り投げた駒拾ってるよぉ~
そんなだから碧がよけいはしゃいで投げまっくってるう~。
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