第50話 醒めない夢

50.

~果歩が消えた日から 1




 えっ、うそぉ~っ。



 私ったら……。

 娘の碧を連れてないことに気付いた。

 

 連れてた娘を忘れて横断歩道を渡るなんて、自分が……

自分の行動が信じられなかった。


  

 私は歩を止めていきなり向きを変えて駆け出した。


 向きを変えた時、ずっと遠くに知らない女性が

バギーの中の娘を覗き込んでいるのが視界に入った。




 ……と瞬間私の身体はポーンと高く宙に浮いていた。



 私はもうすっかり暗くなった夜空を見ていた。

 

 その時空を見ながら、あぁ私は地面にたたき付けられる

んだなぁと思った。


 娘を置き去りにしたまま、どうしよう。

 娘は無事夫の手に渡されるだろうか?



 誰か悪いヤツに連れて行かれはしまいか、それだけが

気掛かりだった。



 私はどうやらあまり大きく飛ばされなかったようで

コンビニの駐車場沿いに植えられているツツジの植木の上に

落下したのだった。



 次に気がついたのは病院の上だった。


 視線の先に見知らぬ女性に抱かれている娘が目に入った。



 あぁ、良かった……ほんとに。


 自動車事故に遭って病院に運ばれた自分の側に娘がいて

一緒にいられるなんて、なんて自分は運がいいのだろうと思った。



 他のことでは散々なのにね。

 目覚めたことに気付いた看護師が先生を呼んだ。


 先生からの質問が始まった。


そして側にいた娘を抱いている女性とも話すことになった。


その女性は既婚者で3人の子の母親だということだった。



 とても子供好きな人のようで私がコンビニで買い物を

している時から可愛い娘が気になって、ずっと私たちの様子を

見てたらしい。


 

 私の後から店を出たその女性は、バギーの中の娘を

置いたまま私がいきなり小走りに走り出したので娘のことが

気になって一緒にいてくれたのだとか。


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