第48話 醒めない夢 

48.

~深山康文と果歩の結婚生活  (45)



 悪さをしておきながらこの女はどうして

私をなじってんのよ。

 自分のしてることを棚に上げてよく言うわよ。


 しかし、どうして仲間はこんな話を夫にではなく

私にしているのか。

 

 普通はまず付き合っている男に話すもんじゃないだろうか。

 腑に落ちない。


 どうして、どうして?

 考えたけれど、答えは出なかった。

  



 「あなたちょっと調子に乗りすぎなんじゃないの?

あなたの婚約者に全部ぶちまけてもいいのよ? 」




「いいですよぉ~~♪

じゃぁ私、婚約者との結婚止・め・て

あなたの旦那さんとヨリ戻して結婚するからン♪」




 「なっ・・」



 「ほらっ、グーの音も出ない。

 出来もしないこと、言わないほうがいいですよ。

 私がちょっと可愛く擦り寄ったらオーナーの

気持ちなんてすぐ私の方に向くんだから。

 私に無事結婚してもらわないと困るのは奥さんの

ほうでしょ? 」




 何を好き勝手言ってるのだろう、目の前の人でなしは。



 私はもう何も聞きたくなかった。


 「あんたなんか、地獄に落ちればいいのよ。

 地獄にお・ち・ろ。

 バカ女! 」



 考えてもなかった呪詛の言葉を女に吐き、私は店を出た。



 何か後方であのバカ女が叫んでたけど

知ったこっちゃない・・だわさ。



 私は急ぎ足で家に向かった。


 ははっ、お茶代も出さずに帰ってきちゃったよ。

 いい気味。



 夫の本心はどうであれ、あの日・・私が仲間と

別れてほしいと言った日、夫は別れると言った。



 心はやさぐれていたものの、 信じたい信じよう

そしてやり直せるものなら心機一転やり直そう

やり直してみたいという気持ちも少し芽生えていたのに。




 そんな小さな芽、気持ちが一辺で吹き飛んでしまった。



 他所に・・娘に異母兄弟ができるかもしれない?

 いや、あの女は産むなんて言ってなかったじゃない。


 だけど夫ともし結婚するのなら、産むのかもしれない。

 私の頭は混乱と怒りとで爆発しそうだった。



 帰って来る夫に何と問い詰めようか。


 子供のことを夫は知っているのか、まだ知らないのか

さえも判らない現状でどんな風に話し合いをすれば

いいのか、更に私の混乱は広がった。



 私をこんなにも苦しめる夫に嫌悪感が走る。

 気持ち悪かった。

 ただただ、気持ち悪かった。


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