第45話 醒めない夢
45.☑
~深山康文と果歩の結婚生活 (42)
「何々、本気ってさぁ。
結婚して……してしてって、言うんじゃないだろうな。
ヤメテっ、オレッちには妻も子もいるんだよぉ? 」
「オーナー、今言ったこと本気?
私のこと好きじゃないんだ? 」
ヤバイと思った。
完璧彼女、スイッチ入っちまってる。
「好きに決まってるだろ?
じゃなきゃ、あんなにたくさん愛し合ったりできないじゃん。
変な方向に本気になるなよ。
今までどおり仲良くしようぜ。
次のバイトが見つかったら、また今まで通りだから
少し我慢しよう、な? 」
「ごまかさないで! 」
そう言って彼女は引かなかった。
俺のやさしい説得も徒労に終わりそうな気配。
次の手はどうすべっかな。
「遊びじゃないって言うんなら、私と結婚してよ。
婚約者は捨てる、私、彼を捨てる。
捨ててオーナーと一緒になる」
流石の俺も不味いと思った。
彼女がただの独身者ならまだしも、結納も済ませた婚約者のいる身だぜ。
幼友達ってんだから親同士だって、普通の関係より
長い年月をかけた深い付き合いに違いない。
そんな相手を他に男ができたからって今更約束事を反故にしてみろよ。
それがどういうことを招くのかこの女は全く分かってないのだろう。
-
俺だって相手に訴えられる可能性が大いにある。
この店が上手くいってない上に、法外な慰謝料なんて
請求された日にゃ、俺の首が回らなくなる。
何の冗談だよ。
それにだ、婚約者がいるのにホイホイ他の男と遊べる
女なんかと結婚できるかよ。
遊びが好きなクセになんで結婚持ち出すんだよ
まったく、意味不明だぜ。
結婚相手に頭の悪い女は絶対イ・ヤ・だっ。
仲間は自分が俺の妻から慰謝料請求されるなんて……
そういう対象になるってことも全然分かってないのだろう。
遊ぶには可愛くて良かったが、結婚となると話は別だ。
康文は物腰は柔らかだったが、結局店の売り上げと彼女に
婚約者がいることを理由に、仕事もろとも冷たくばっさりと
彼女を打ち捨てた。
仲間友紀は毎日Love Love だった相手からこうも簡単に
切り捨てられるとは夢にも思ってなかったようで
帰り際、涙を一杯溜めた目で康文を睨み付けバタバタと
駆けて店を出て行った。
果歩が彼らの関係を心配しなくとも、あっさりとふたりの
関係は終わっていたのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
愛が憎しみに代わるのにそう時間はかからなかった。
康文をいつの間にか好きになっていた仲間は康文を憎んだ。
店を出た後もしばらく泣きながら仲間は走り続けた。
「あいつの家庭をめちゃくちゃにしてやるぅ」
そう心に誓いながら……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます