第44話 醒めない夢

44.

~深山康文と果歩の結婚生活  (41)


  

  「ねえ、もうすぐ菅田(スダ)くん辞めちゃうでしょ?」



 「あぁ。

 大学の勉強が忙しくなるとか言ってたな。

 けど、たぶんそういう理由じゃないわな。

 ははっ。


 あいつは真面目なヤツだからな、きっと俺たちのやってる

ことを知ってて(イ)ヤになったんだろうよ。


 俺がアイツの立場でもヤだね」



 「そんなこと言ってぇ~。

そしたらまた私たち当分できないンだよ?

 オーナーは私と仲良しできなくてもいいの? 」




 「いいことなくたって、店閉めて一日中盛ってる

わけにもいかないだろうよ。

 しばらく我慢しれっ!

 次の人材をまた捜すから」




 なんてことを仲間に言いながら、いくらなんでもなぁ

もういい加減遊びもほどほどにして、少しは仕事に身を

入れないとなぁ~と、流石に俺もちょっと店のことが

気になりだしていた。



 潰してしまっては、大変なことになる。

 俺の未来は閉ざされたも同然だ。


 踏ん張り時としては遅いくらいだが、なんとか今

まだ店は持ちこたえてるのだし、ここは一念発起頑張らない

とな。


 

 そして、なんでここで? と思ったが果歩の顔が一瞬

頭の中を過(よ)ぎった。

 ホントに不思議だった。



 果歩が俺と別れられるはずが無いと高を括っている

俺だが、その俺こそが果歩とはどんなことがあっても

別れるという選択肢を持ってないのかもしれないな、と

そんなこともふと頭に浮かんで、そんなことが浮かんだ

ことに妙に驚いた。



 な・・なんでこんな時にこんな事考えてるんだ?

俺は。



 俺と仲間は品出しして棚に陳列しながら話していた。

 


 「ねっ、さっきから何考えんの?

オーナーでも深刻に何かを考えることあるンだ? Haha」




 「俺だってたまにはなぁ・・って、大人を

からかうんじゃない」




「何よぉ~、私だって大人なんだからね。フン」




 「そだな、婚約者もいるんだもんな。

 もう結婚もぼちぼちなんじゃないのか?

 バイトばっかしてていいのか?

 そろそろ準備もあるだろう?」





 「何で今そんな話すんの?

 私はこんなにオーナーとのこと、考えてるのにぃ。

 ねっ、私ねオーナーとこれからもずっと一緒にいたい」




 「う~んっン...俺もぉ~♡♡」



 「ちゃかさないでっ!!本気なんだから」




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