9 カヤ
「ねぇ、前より全然上手くなってんじゃない」
「カヤちゃんのいないうちに経験値を上げたからね」
「どうしても、そう呼びたいわけ」
「カヤの名を選んだのはカヤちゃんの方だよ」
「だって、他にはミズキとかサクラくらいしか選択肢がなかったじゃない」
結局あれから一月もせず、睦美とおれが関係する。おれの方は別に望んではいなかったが、睦美の方から求めたのだ。
「カヤちゃんの性格だと、ぜったい彼氏にバレると思うけど、いいの」
「会ったら、なんか懐かしくなっちゃってさ。あの頃、わたしたち若かったよねーって」
確かに肌の弾みは十代の頃より落ちている。が、そこにはそれなりの味わいがあり、おれは嬉しい。
「それにしても、裕太、じゃなかった、通泰(みちやす)は逞しくなったよね。祥子さん、じゃなかった、けやきさんに独り占めされてるのが悔しいわ」
通泰というのは子供のときに睦美が最初に好きになった男の子の名前らしい。彼女のそういう感覚は未だにおれには理解できない。
「あっ、そろそろイクかも」
感極まってきた睦美の腰の動きに合わせ、おれも自分の動きを速くする。やがて果て、ぼおっとした倦怠感を味わいながら、『なつめ』もあれば『あおい』もある、『マユミ』があれば『モモ』だってあるのに、と考えている。
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