Number:2



「それでは朝のホームルーム兼説明を始める。まず、私の名は池上 涼子。よろしく頼む。」



始まった。鬼畜学校の美人先生による学校の説明。

今更何が来ようとおそらく俺達はそこまで驚きはしないだろう。

ただ、何より俺が思うのはこの学校が普通でない以前に、これは政府が俺に対して仕掛けた試練、それか罠だ。

だから政府は俺に目をつけているに違いはない。

そこで俺のするべきことはただ一つ、何が何でもこの学園生活を乗り越えること、そして生活中にいかに政府から隠れるか、そして以下に政府を攻撃できるかだ。



「ではまず、この学園はテストの点、又は定期的に行われる闘技大会での順位でポイントが与えられる。多くのポイントを獲得するにはそれぞれどちらかの種目で上位の成績を収めなければならない。そして、そのポイントではこの学園にある武器や食料といった様々なものが購入可能。」



つまり、この学校は全てがポイント。

俺が目覚めたあそこは聞いたところによるとこの学園の宿にあたるマンション。

だから、あのマンションにいつまでもお世話になるためにはおそらくそのポイントとやらで支払い、金動揺として生きることが必要。

その上、食料も飲料も何もかもがポイントで買える。

魅夜 茜、よく考えれば俺にとっては有利すぎる生活なのかもしれない。

働かずしてポイントを稼ぐ。そして勉強せずしてポイントを稼ぐ。喧嘩をしてポイントを稼ぐ。

最高のゲームだ。



「そして、入学早々でいきなりかも知らないが、明日その闘技大会が行われる。各自いい成績は収められないが、今日、君たち生徒達には二十万ポイントが支給されるため、明日悪い成績をとってもあまり問題は無い。」



先生の続きの言葉、それを聞いたみんなは少し自分たちの担任に恐れを抱いた。



「……ただ、私の生徒だ。成績の悪かったやつは……私とみっちり特訓だ。」



なるほど。

などと思った俺だが、みんなは目を丸くして驚いていた。その訳は、先生の手にあった。

先生の手には大きな大剣が持たれていて、おそらく生徒全員はその大剣にビビっていたのだろう。

しかし、先生の持っていたあの大剣で体殴られたりだとか、切られたら間違いなく即死というか、お花畑すら見えなくなるよな。

とんでもない学校ということを俺もみんなも改めて実感した。



「さて、全てがポイントのこの学校なのだが、実は格闘技に関しては学校内でチームを三つ結成し、日本国内の大会に出てもらう。様々な大会が存在するが、そのチームは明日の試合で大まかなメンバーは決められるため、皆努力して挑んでくれたまえ。以上が説明だ。」



───先生の全ての説明が終わり、大まかな学校のルールなるものを理解した。

この学校で決闘を受ければ死の可能性は有り得る。それ以外での殺害は学校内では有り得ない。

そして、全てがポイント。闘技大会、そして学校で行われるテスト、両方でポイントを稼ぐことができるということ。

とにかく、この学校で生きるためには勉強、そして力が必要になってくる。



「では、今日はここまでだ、各自解散し宿へ戻れ。」

「「「はーい」」」



その後、俺たち生徒達には学校が支給した専用スマートフォンを手渡され、その中にはポイントの二十万ポイントが配布されていた。

どうやらアバターとコードネームを入力できるようだが、俺は適当にアバターを謎の煙にして名前はあかねにした。

もちろん、煙は俺の中でタバコの煙をイメージしている。

それ以外にはメールや電話機能、そしてポイントを見たりできるページのみ。

ゲームとかそういう無駄なシステムはなかった。

そして、その日の学校は終わり、俺は目を覚ました所、つまり自分の宿へ戻る。



「………今日は色々あったな。」



俺はこの日の夜、俺にとんでもない出来事が起こるなんて誰も予想していなかった。



「……うわっ、タバコ多いなぁやっぱり。」



政府から支給されたロベルグのタバコを一箱取り出し、俺はそれに火をつけ、自分に癒しを与えていた。

部屋の電気は暗めに設定し、小さな丸いテーブルの上にはロベルグのタバコとコーラを置いて、小さな宴をしていた。

しかし、一日の疲れのせいか、胸のあたりが物凄くモヤモヤしていた。



「むさ苦しいな……なんだこりゃ。」



銀色の肩まで伸びた髪の毛をピンク色のお気に入りのゴムで縛り、邪魔な髪を一点に集める。

しかし、胸の中で俺を襲うモヤモヤは消えず、俺の呼吸はどんどん苦しくなっていった。



「やばい……なんだよこれ……」



流石にやばいと思った俺は玄関から出て誰かに助けを呼ぼうとしたのだが、俺は玄関にたどり着く前に倒れる。



「ぐっ……ぬぁぁっ!?なんだよ……これっ!?」



完全に視界はボヤけ、体は暑くなり、胸は苦しくなり、呼吸はしにくくなる。

まるで死の寸前を味わっているかのようだった。

正直、俺自身も自分は死ぬのではないかと若干不安になった面はあったが、俺は足掻いた。



「……電話……学校の電話なら……あるはずだ……っ!!!」



俺は急いでポケットからスマートフォンを取り出し、学校に電話する。



「こちら椿学園事務室です。どちら様でしょうか?」

「たす……け…てっ」

「助け……お名前をお伺い───」

「一年D……組、魅夜…茜。」



俺はなんとか自分のクラスと名前をいうことが出来、精一杯の力を出し切ったところで、完全にリラックスしてしまい、電話越しの声は聞かず、ただただ体を休めていた。

これから先助けが来るまで意識を保っていられるかはわからない。

いつ意識が途切れてもおかしくはないが、それと同じにこれ以上動いたらかなり危険だ。

……けど、何故ここまでなってしまったのだろうか…………。



「………タバコ…?」



その一言から俺は今の状況の重大さに気がついてしまった。

部屋に大量のタバコ、灰皿の上に消したばかりのタバコ……冷蔵庫には数本の酒。

完全にやばい。見られたらやばい。百パーセント退学だ。

それにいつくるかは分からないが学校側にも連絡してしまった。

……この状況、かなりやばい。



「ウウッ……!?マジかよ……ぬぁ!?」



俺が最後の叫び声をあげた後、俺の意識は完全に途切れ、視界は真っ暗になってしまう────




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