Number:1
春の生暖かい風に吹かれた桜の木から桜の花びらが無数に散り、俺たちの歩く地べたに落ちていく。
椿学園の正門前。
俺は一人学園を見つめながら思う。
なんで俺はここにいるのか、なんで俺がここへ通わないと行けないのか。
正直退屈な毎日が目に見えていた。
けど、それはあくまでも一般人の俺の考えに過ぎず、進学率もかなり高いこの高校の常識というものは、一般人の俺には考えられないようなものだった。
「お、黄昏てるそこの銀髪!新入生か?」
「……だったら何?」
「いや、俺も新入生でさ、友達なろ?な?」
俺に気安く話しかけてきたのは赤色の髪をした無邪気な顔をしたクソ野郎。
しかも、生意気なことに俺より身長は高め。
普段の俺なら一発でこんなやつの内臓破裂させてやれるのに……生憎できなくなってしまったので放っておくことにする。
「あ、ちょ!友達!?!」
「………なる気は無い。」
「ええええ!?」
俺は孤独に生きると決めた。あの日から。
そして今回の新たな高校生活において友情関係を築く気もないし何に関しても関わる気は無い。
俺はスモーキングシルバー。
白縄のリーダー。その他の何でもない。
俺はスモーキングシルバーだ────
「ええ、新入生の皆様、ご入学おめでとうございます───」
入学式が始まり、一年生合計二百名弱が集められ、みんな適当に校長の話を聞く。
寝ているやつもいればスマホをいじっている奴もいる。
中には俺のような不良がいたりしたが、俺より弱いのは見ただけでわかったので特に興味はなかった。
しかし、この高校生活初日の入学式でとんでもない事が起きるなんて思いも寄らなかった───
「どうも、生徒会長の一ノ瀬 優馬です。今から本校のルールを大きく三つに分けて説明します。まず一つ目。本校では知力がすべてです。頭がいい者こそが上に立つ資格を持ち、それ以下のものは何も口出しすることは出来ない。そして知力が高いものは下のものに対して命令する権利が持たれる。」
生徒会長が学校のルール、つまり大まかな校則を説明し出すと一年生はざわつき始めた。
俺は至って冷静に生徒会長の話を聞いていたものの、かなり可笑しい内容だった。
「二つ目。先ほど知力が全てと言いましたが、知力を持たずして腕力などといった喧嘩向けの力を持つ者もいます。そこで、本校はルール無しの喧嘩で物事を決めることも認めています。もちろん、喧嘩が弱い知力を持つのは勉強で、知力が無く力があるものは喧嘩で物事を決めるのです。」
「は?マジで言ってんの?」
「おいおい嘘だろ?」
二つ目の説明で新入生は完全に混乱し始めた。
無理もない、どうやらこの学校は喧嘩や頭の良さで格付けされるらしいからな。
生憎、俺という人物は喧嘩も知力も自慢ではないがトップレベル。だからこの学校のルールに飲み込まれることは無いのだが……気になるのは喧嘩の方だ。
普通、何かを決める時はテストなの点で充分なはず。けど、頭が良くなくその代わりに力があるもののために今度は喧嘩というシステムで物事を決めることにしたのだろうけど……。
問題はルール無しという点だ。
これって殺してもありっていう捉え方にもなる……けど、それだけじゃない。
仮に素手対刃物だとしても文句は言えないという事だ。
それって………学校に何持ち込んでもいいってことになる。
そして、俺の思っていた疑問は全て次の瞬間吹き飛ばされた。
「三つ目。殺しも何もかもありだということも分かっただろう。しかし、バトルもしていないのに後ろから刺され死ぬというのはあまりにも酷すぎる。そこで、我々は校内にいる間バトル以外で死な無いことを保証する。」
その生徒会長の言葉でみんなは少しホッとした顔に変わったが、問題はそこではない。色々と生徒会長の言葉には疑問が多すぎる。
「だが、校内では椿家が作り出した数多くの武器『ハート』を地下施設で販売している。それはリアルマネーでも学園のテストで得たポイントでも購入可能。ハートでバトルをするか素手でバトルするかオリジナルの武器でバトルするかは君たち次第だ────」
こうして生徒会長の校内説明は終了した。
けど、多くの生徒がくらい顔をして下を向き、これからのことを考えていた。
たかが学校なのになぜデスゲームをしなければならないのかと多くの生徒は思ったはず。
だが、これには大きな解決策があった。それもとても簡単な解決策が。
知力の高いものはおそらく既に気がついていると思う。
「……待てよ?これってもめずにバトルしなければ安全な学園生活が遅れるってことなんじゃ!?」
「そ、そうだ!それだ!」
「あっぶねぇ、やっぱり学校だもんなぁそれは許してくれるだろぉ」
そう、たった一つではあるが至ってシンプルな解決策。
それはバトルをしないということ。
例えば残り一個の焼きそばパンを二人のものが買おうとしたその瞬間、バトルをやろうだのともめる。
しかし、そこでどちらかが譲れば最悪命は助かる。
だから、命欲しくばバトルを避ける、それがこの学校で学園生活をおくる唯一の方法なのかもしれない。
「お!友達ぃ!!!」
入学式が終わると次は各自の教室へ向かい、担任の先生から説明を受けるのだが、どうやら俺は面倒くさいやつに絡まれてしまったようだ。
「……お前は朝の。」
「何言ってんだよフレンド!今も朝だろ!」
殴りたくなるなこいつの顔面。
……けど、あんな残酷な説明があったのにも関わらず一年のみんなは何かと呑気に友達作りをしている。
とても残酷な話を聞いたとは思えない顔色だった。
「……お前はさっきの説明聞いてどう思う?」
「あぁ、さっきの説明?正直びっくりしたけど、みんな争う気ないし?」
「………どうだか。」
あくまでも感だが、そこまでこの進学率の高い高校の考え方は俺達が思いついた解決策なんて先に思いついていると思う。
そう簡単じゃないと思うんだよな。
「で、フレンド名前は?」
「はぁ……魅夜 茜だ。友達にはならない。」
「そう固くなんなって!俺は香我美 悠貴!宜しくな!」
「………俺先行ってるわ。」
ほんと、あのクソ男と同じクラスだけはマジで簡便だ。本当に面倒くさい。
などと思い、俺は渡された小さな紙に書かれていたクラスへ向かう。
一年D組。どうやら一クラス二十五名らしい。少ないな。
「……窓側の一番後ろか。ついてるな。」
一人でそう言いながら俺は乱れた制服を直さずして自分の席へ向かった。
恐らくこれで第一印象は最悪。人もよるとは思えないし、不良だって流石にナリヤンみたいな俺に手は出さないだろう。
なんて、俺の考え方は甘かった。
「え、あの人かっこよくない?」
「やった、ラッキー!イケメンだ!」
「あれ、私のだからよろしく〜」
「な、何いってんの?私のだよ!」
どうやら、銀髪というのはかなり目立つらしい。
にしても、かなり雰囲気が和んでいるというか、本当に先ほどの説明を聞いていたのか疑ってしまうくらいだ。
けどまぁ、現実逃避というのも奥の手、放っておくことにしよう。
「よぉし、お前ら席につけぇ」
「ぬぉ!?きょ、きょぬー!?」
「やばぇ!べっぴんや!」
教室に入ってきた教師は一瞬にして男子生徒たちの目を奪った。
まぁ、たしかにかなりの美人。黒い長い髪を一つ結び。さらに巨乳にあのくびれ、男子生徒は幸運だな。
ただ、俺の目が正しければあの女教師、いや、女凶器は足に小さな拳銃、そして、服の中には防弾チョッキ、腰裏には小さなナイフ。
かなりの武器を身に仕込んでいる。
「ん?どうした魅夜。」
「……いや、なんでもないっす。」
初っ端から目立った。
まぁいい、ともかく他の生徒が何もわかっていないのはよくわかったし、先生……というか学校側がマジなのは分かった。
政府がこの学校選んだ理由もよくわかった。
とりあえず最初は様子見だな。
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