第2章 少女と過ごす夏休み

 夏休み初日、起きるとすぐ向日葵畑へ向かう。

「あ、葉月ー!こっちだよ!」

昨日の少女、日向ひなたが元気に手を振っている。

簡単な自己紹介は昨日のうちに済ませた。

「おそーい!待ちすぎて熱中症になるかと思ったよ。」

「ごめんって!今日は…何するの?」

「うーん…何でも良いんだ、葉月と一緒なら。」

少し暗い声でそう返す日向。

そんな不思議な事を言う彼女の瞳に、うっすら影が差したような気がした。


「ほら、早く行こー!」

気づくと日向が自転車の後ろに腰かけていた。

「よーし、しっかり掴まっておけよー!」

僕は日向に腰を掴まれながら、懐かしの場所…小さい時に秘密基地として使っていた場所へ向かった。


 向日葵畑を抜けると森に入り、しばらく進むと少し開けた場所に出る。

中心に湖があり、夏でも涼しい小さな広場だ。

「わぁー、綺麗だし涼しいし…さっすが葉月!」

日向も喜んでくれている。

他の人から見れば犯罪者だろう…少女誘拐と思われてもおかしくない。

どのみち自転車事故を起こしているんだけど。


 何故か日向を見ていると、凄く懐かしく思う。

以前どこかで会ったことがあるような…。

でもこの数年間、小さい子と遊んだりお守りをした覚えもない。

きっと気のせいなのだろう。


 湖の周りで追いかけっこをした。

昔の自分に戻ったようで、とても楽しかった。

もしかしたら日向より楽しんでたのかも。

童心に帰るのも悪くない…そう思った。

翌日からこの広場で会う約束をして、その日は別れた。

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