第14話




第14話〔見えた!!反撃の光!ボレノの仇は俺がとる!!〕



テールブーメランを手にした、まぐ次郎は、茂めがけて降り下ろした。


『茂!!』

「茂~!!」



「ガキン!!」


テールブーメランが茂に当たる直前、シャケメランが飛んできて、茂の顔の前で交差し、地面に刺さった、しかし、そのお陰で、テールブーメランをブロックしたのだった。


「だ…だから危ないって…で、でも…やっぱり味方だったんだな…サンキュー、シャケメラン…」


茂はシャケメランを手に取り、テールブーメランを押し返そうとした。


「おおおおお~!!」


茂は渾身の力を入れ、テールブーメランを押し返した。しかし、


「ピキッ!」


シャケメランにヒビが入り、粉々に砕け散った。

まぐ次郎は、茂を見下ろしながら、


「ふん!ムダなあがきだ。

これでお前を守る物は無くなった。終わりだ!黒の戦士!!」


まぐ次郎は、もう一度テールブーメランを振り上げ、茂に向かって降り下ろそうとした、まさにその時!



「ママカリソード〔柔〕!!」


風見が、鞭タイプになったママカリソードを茂の足に絡み付かせ、思いきり引っ張った。


「うおおおお~!!」


風見は、足元まで飛んできた茂を抱き上げ、


「茂!大丈夫か!?」


「あ、ああ、な…なんとか生きてるよ…」


するとトーカが、


『大丈夫だ、翔。このスーツには体の修復機能も付いてる。でも、これだけ深い傷だとすぐには治せないな、しばらく動かない方がいい。』


「だとよ、茂。あとは任せて少し休め。」


「わ、悪いな翔…少しだけ休ませてもらう…ぜ…」


そう言い残し、茂は壁にもたれて目を閉じた。


翔は茂の側を離れ静かに立ち上り、まぐ次郎を睨み付けた。

するとまぐ次郎は、


「何をぐだぐだやってる、あの世に行く順番が替わっただけだ、後で黒い奴もキッチリ送ってやるよ。あの世で仲良くヒーローごっこでもやりな!」


まぐ次郎は、話し終わると同時に、テールブーメランを投げて来た。

しかし、風見も不意討ちならともかく、ブーメランが当たるような、ノロマでもない、ブーメランをかわしながら、「まぐ次郎」を倒す方法を考えていた。



その頃、友生達は《ユーカ》を捜し、工場内を歩いていた。戦闘員達が居なくなったとはいえ、戦闘員以外の愚連人が居るとも限らない、その為、監視カメラを傍受している草村と、連絡を取り合いながら捜していた。


「その廊下の突き当たりの部屋が怪しい、行ってみてくれるか?」


「うん、わかった。」


2人は静かになった廊下をゆっくりと進みながら、


「どう?憂樹、何か感じる?」


「ううん、《ユーカ》の感じはしない、でも…なんか……あ!」


「え!?なに?どうしたの憂樹?なにか感じたの?」


「ううん、ちょっとトイレに行きたくなって…」


「もう~、緊張感がないんだから憂樹は。」


「違うよ、緊張してるから行きたくなるんだよ。ほら、よく言うじゃない、「出せば成る、出さねばならぬ!何事も」ってさ。」


「…………、いったい何に成るんだか…、だってさ草村さん、近くトイレあるかな?」


「くくく…」


友生の耳に聞こえてきたのは、笑いを押し殺して苦しそうな草村の声だった。そして、


「アハハハハハ、やっぱり神成には叶わないな。アハハハハ、お腹痛い…ハァ…。ちょ、ちょっと待ってくれよ、さっき言った扉の手前の通路を右に曲がったところにトイレがあるな。」


「ありがとう、草村さん。憂樹、聞こえた?そこの角を曲がったところにトイレがあるんだって。」


「じゃあ、ちょっと行ってくるね。」


憂樹は小走りに駆け出し、トイレのある方向へ向かった。


友生は壁にもたれ、憂樹の帰りを待つと同時に、茂の事を考えていた。


「茂君、今頃ハチャメチャしてるんだろうな、フフフッ。 ねえ、草村さん、翔君達はどうなってるの?」


友生は風見達がどうなっているのか、草村に聞いてみた。


「ん?あ、ああ、かなり苦戦してるようだ、あのマグロ怪人が3匹になって帰ってきたからな。」


草村は、茂がやられて動けないことは言わなかった。うすうす友生の気持ちに気付いていた草村は、友生を動揺させまいと黙っていたのである。

その時、


「バタン!」


トイレのドアが閉まる音がし、足音が聞こえた。

友生は廊下の角を曲がり、憂樹を迎えに行った。


「もう、遅いよ~憂樹~…?え?」


友生は一瞬、何が起きたのかわからなかった。

角を曲がったところに居たのは、憂樹ではなく戦闘員だったからである。


「ん?なんだお前?どこから入った!?ここは立ち入り禁止のはず…」


「あ、あ…あ…」


恐怖のあまり、パニックになった友生は振り返りその場から逃げようとした。そして友生が後ろを向いた瞬間!


「ビリッ!!」


「あ゛っ!!」


強い衝撃が体中に広がり、友生はその場に崩れ落ちた。



友生がそんな事になってるとは夢にも思ってない憂樹は、スッキリした顔でトイレから出て来た。


「ごめ~ん、友生、お待たせ~。」


しかし、憂樹の目に入ってきたのは、倒れている友生の襟首をつかみ、引き起こそうとしている、戦闘員の姿だった。


「友生!!!!!」


憂樹の声に気付いた戦闘員は振り向き、


「ん?もう1人居たのか。」


すると戦闘員は、警棒のような物を手に、ポンポンと反対の手のひらを叩きながら、ゆっくりと憂樹に近づいて来た。


憂樹は怖かったが、それよりも、友生がやられた事の怒りの方が何倍も勝っていた。

憂樹は辺りを見回し、すぐ足元にあった消火器を手に取り、無我夢中で振り回した。


「わぁ~!!!!!」


一瞬たじろいだ戦闘員だったが、すぐに冷静になり、少しづつ憂樹との距離を詰めて行った。すると、


スポッ!


「あ!」


「ガン!!」


「ゴン!!!」


あまりにも力任せに消火器を振り回したため、消火器は憂樹の手から離れ、壁に激突し、跳ね返った消火器が、戦闘員の頭に直撃した。


「ぐっ!…」


不意をつかれ、脳震盪を起こした戦闘員は、その場に倒れた。



「ハァハァハァ…」


憂樹は息を切らしながら、友生に駆け寄り、抱き起こした。


「友生!友生!!大丈夫?友生!!!」


おもいきり体を揺すられ、耳元で大声を出された友生は、意識を取り戻し、うっすらと目を開けた。


「あ…、憂樹……」


「よかった~!友生、死んじゃったのかと思ったよ~!!」


憂樹は泣きながら友生に抱きついた。まだもうろうとしていた友生だったが、憂樹の背中の向こうに、ちがう戦闘員の姿がハッキリとわかった。


「憂樹!!」


「ビリッ!!!!」


「デッ!!」


友生が叫んだと同時だった。憂樹の体に強い衝撃が走り、抱き合っていた友生にも衝撃が伝わり、2人重なるようにその場に倒れた。



憂樹と友生が、そんなことになってるとは夢にも思ってない風見は、まぐ次郎との戦いが続いていた。

いくらブーメランを投げても当たらない風見に対して、


「くそ!ちょこまかとすばしっこいヤツめ!!

おい、まぐ三郎!お前のブーメランも貸せ!」


「わかったよ、まぐ次郎兄さん。」


まぐ三郎は背中のブーメランをまぐ次郎に渡した。


「よし、これならどうだ!!」


まぐ次郎は2本同時にブーメランを投げた。

ブーメランは風見を取り囲むように回り、左右から攻撃して来た。


「くそ!」


風見は右からのブーメランをヒラリとかわしたが、すぐに左からブーメランが襲って来た。


「カキン!」


ギリギリのところで、ママカリソードで弾き返した。


すると、テールブーメランは軌道を変え、まぐ三郎に向かって飛んで行った。

予想だにしなかった展開に、まぐ三郎は慌てて避けようとしたが、


「スパッ!」


ブーメランは、まぐ三郎のヒレを切り裂き、まぐ次郎の手に戻った。


「あ、危ないよ!まぐ次郎兄さん。ちゃんと戦ってよ。」


「う、うるさい!ちゃんと避けろ!」


すると、その光景を見ていたトーカは、まぐ郎の言葉を思い出した。「俺様を倒せるのは、俺様だけだ。」


『翔!聞いてくれ、まぐ次郎を倒す方法が見つかったかもしれない。』


「ああ、俺も同じことを考えてたぜ。」


劣勢だった戦いに、「一筋の光」を見い出したまさにその時、風見とトーカの耳に、草村の悲痛ともとれる声が聞こえて来た。


「風見…すまない、上地と神成が捕まった…」


「なんだって!」

『なんだって!』


「どうやら、トイレでサボっていた戦闘員が居たらしいんだ。さすがにトイレにはカメラが付いて無かったんだ…。」


草村が喋り終えたちょうどその時、工場の扉が開き、後ろ手に縛られた友生と憂樹が2人の戦闘員に連れられて現れた。


「友生!憂樹!!」






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