第13話



第13話〔脅威!進化したマグロン、絶体絶命の戦士達!!〕



愚蓮人との激しい戦闘があった次の日、氷山商事の門の前に風見と茂の姿があった。


その少し前、草村の家で作戦がたてられていた。


「いいか、作戦はこうだ。俺と茂が真正面から入る。もちろん戦闘になるだろうから、俺たちが暴れまわってる隙に、友生と憂樹が裏口から入って、ユーカを探せ。憂樹なら居るか居ないかわかるはずだ。友生は憂樹が無茶をしないように見張っててくれ、草村はここで俺たちのバックアップをよろしく。どうせお前のことだ、氷山商事の防犯カメラも見えるんだろ?

委員長は香ちゃんを連れて、親戚の家に居てくれ。」


「え!で、でも、私だけ何もしないのも…」


「香ちゃんを1人にするわけにはいかないだろ、それに委員長を危険な目に遭わせたくないんだ。

な、頼むよ、言うことを聞いてくれ。」


風見は懇願するような目で清美を見た。


「わかったわよ、香を親戚の家に預けて、私はここに戻って来てもいい?ここなら、安全なんでしょ。草村さんも居ることだし。」


「ああ、わかった、それならいいよ。

友生達も、ユーカが居ないとわかったら、すぐに逃げるんだぞ。」


「了解!」


憂樹と友生が、元気よく返事をした。



そして再び話は正門前に戻る。


「さて、そろそろ行くか。」


「ああ、何が出てくるか楽しみだ。」


風見は門の隣に付いてあったインターホンを押した。

すると、門の向こうから、守衛らしき人物がこちらに歩いてきて、風見達に、


「君達、何か用かね?今日は日曜日で、誰も居ないよ。」


と、優しい口調で話しかけてきた。

すると風見が、


「あ、すみません。こちらに俺の荷物が、届いているみたいなんですよ。」


「荷物?」


守衛は不思議そうな顔をした。


「どんな荷物なんだい?」


「このくらいの紙袋で、牛革が入ってるやつ。あ、あと一緒に発信器が入ってたんですよ。」


風見はそう言うと、守衛を睨み付けた。

すると守衛は、表情が変わり、


「少し待っててもらえるかな、工場の人に聞いてくるから。」


「なんだよ、さっきは誰も居ないって言ってたくせに。」


守衛は、茂の言葉に、ムッとした表情で、工場に入って行った。


すると、目の前の門が自動で開き始めた。


その光景を見た茂は、


「中に入って来いって事かな?」


「ああ、そうだろうな。」


「なんだよ、出迎えは無しなのか。」


「いや、工場の中にわんさと居るみたいだぜ、殺気がビンビン伝わって来る。」


TTユニットを持ってる風見と茂は、常人以上に五感が鋭くなっていた。


「本当だ、何人居るのか見当もつかないな。」


そう言いながら、2人は工場に向かって歩き出した。

と、同時に後ろの門が閉じ、工場の扉が開き始めた。しかし、誰も出てくる気配はなく、暗い闇だけがポッカリと口を開けていた。


「誰も出て来ないんだな。」


茂がその闇に向かって歩きながら言うと、


「ああ、やっぱり人目にはつきたくないんだろうな、一応優良企業みたいだしな。」


「じゃあ、一丁派手に暴れますか。」


そう言うと、2人はTTユニットを取り出し、変身ベルトを巻いた。

そして、


「超!!」

「絶!!」


「変身!!!!」

「変身!!!!」


そして2人は赤と黒の戦士になり、それぞれのベルトから団子を取り出し、


「ご当地の食材よ、俺達に力を分けてくれ!」


と、同時に叫び、団子を空に向かって投げた。

すると、風見が投げた団子は、海に向かって飛び、茂の投げた団子は、工場の中に入って行った。

そして風見の手には、昨日と同じ「ママカリ」が飛び込んできた。


「よし!ママカリソードだ!!」


そして、茂の足元にも昨日と同じように何かが回転しながら突き刺さった。


「うおっ!!あっぶね~!」


茂が地面に突き刺さった物体をよく見てみると、


「これは…冷凍シャケの切り身?」


それは巨大なシャケの切り身だった。しかし、少し湾曲し、皮の部分は鋭い刃が付いていた。


「トーカ、これは何だ?」


茂はトーカに武器の名前を聞いてみた。


『それはブーメランタイプの「シャケメラン」だ。もちろん、剣としても使えるぞ。』


「そうか、ブーメランか、こりゃいいや。」


茂がシャケメランを手に取り見てると、もうひとつ回転しながらシャケメランが飛んできて、茂の足元に突き刺さった。


「だから、危ないって!!この武器は味方だろ!?」


すると、トーカが、


『言い忘れてた、シャケメランは二刀流だ、2つを合わせれば、さらに大きなブーメランにもなるんだ。』


「二刀流か、宮本武蔵の気分だ。」


すると、風見は、


「じゃあ、俺は「佐々木小次郎」ってとこか。」


「ああ、最強タッグだな。」


2人は、扉の奥の暗い闇に吸い込まれるように入って行った。

そして、扉が閉まったと同時に、


「ガッシャ~ン!!!!」「バリバリバリ!!!!」


工場の窓という窓から愚蓮人が吹き飛ばされて来た。



その光景を隠れて見ていた友生と憂樹は、


「始まったみたいだね。」


「うん、でも風見がヒーローだなんて、いまだに信じられないわ。」


クスクスと笑う憂樹をなだめながらも、すべての戦闘員達が風見の所に集まるのを、じっと待ってる友生だった。そして友生は、憂樹のいつもと違う所に気が付いた。


「あれ?憂樹、その髪飾りって…」


「えへへ、気が付いた?小さい頃、あたしの家族と友生の家族が一緒に旅行に行った時、お揃いで買ったやつ。あたしのお守りなんだ。」


それは黄色い星の髪飾りだった。

すると、友生も懐かしそうに、


「あの頃は、ボクも髪を長くしたいって思ってたんだけどなぁ。でも大切に部屋にしまってあるよ。」


2人が昔話を話してる間にも、次々と戦闘員が隠れている友生達の前を走り抜けて行き、いつしか誰も通らなくなっていた。

友生は、辺りを見回しながらゆっくりと出て、建物のドアを静かに開けた。

そして中を覗き込むと、


「みんな、あっちに行ったみたい。ボクたちも行こう。」


そう言いながら、憂樹の手を取り工場の中に入って行った。



そのころ風見達は、次々と戦闘員達を倒していっていた。

すると、トーカが、


『気をつけろ!翔!茂!この電磁波長は「マグロン」だ!』


その言葉を聞いた翔は、動きを止め、工場の奥を睨んだ。


「今度こそぶっ倒してやる!」


茂も動きを止め、シャケメランを構えた。するとトーカが、


『いや、待て!?2つ?3つ?』


そして、戦闘員を押し退けて現れたのは、進化した「マグロン」だった。


「お前ら、俺様の忠告を無視しやがって、今度邪魔をしたら容赦しないって言ったよな。

望み通りぶっ潰してやるよ。」


すると茂も、


「今回の俺は前とは違う!今度の武器「シャケメラン」は、お前らの工場で冷凍したものだからな、固さが「サンマーン」とは全然違うんだ!今度こそぶった切ってやる!!」


するとマグロンは高らかに笑い声を上げ、


「アハハハ!進化してるのは、お前だけじゃないんだ!見ろ!この姿!顔は正面を向き、手足はヒレに戻した。これでダサいなんて言うやつは居なくなった!これが進化した「まぐ郎」だ!!」


すると、風見が呆れたように、


「名前まで変えたのか…でも、お前それじゃ武器が持ちにくくないか?それに歩きにくそうだし…」


「う、うるさい!大きなお世話だ!!武器なんか使う必要が無いんだよ、どのみちお前らの武器じゃ俺様には傷ひとつ付かないいんだからな。

それにだ、俺様の進化はこれだけじゃない!おい!お前ら出て来い!!」


まぐ郎の合図と共に、まぐ郎の後ろから、まぐ郎をさらに上回る大きな影が、2つ現れた。


「な、なんだと!?まぐ郎が3匹!?」


驚く風見達を見ながら、まぐ郎が、


「どうだ!お前らが2人なら、こっちは3匹だ!これでお前らの勝利は、万に一つも無くなった。とっとと、尻尾を巻いて帰るんだな!」


すると、まぐ郎の隣に居た1番大きなマグロが、


「チッ!エラソーに。おい!まぐ郎!少しだけ早く水揚げされたからって、兄貴ぶるんじゃね~よ。大きさも値段もこの「まぐ次郎」の方が上なんだからよ。おい、「まぐ三郎」も何か言ってやれ、お前なんか、まぐ郎の倍の値段がついたんだからよ。」


「い、いや、僕はそんなこと…一応、まぐ郎兄さんは僕たちより早く冷凍怪人になった先輩ですし…」


「何を言ってるまぐ三郎、ようは1番最初に釣られた間抜けだろ?」


その会話を聞いていた風見と茂は、


「なんだかおかしな事になってるみたいだな。」


「ああ、 おい!まぐ郎!そいつらお前の仲間じゃないのか!?」


するとまぐ郎は、


「な、仲間だ!一応…」


自信なさげに答えた。

すると、まぐ次郎は、


「まぐ郎兄さ~ん、お年寄りは座ってお茶でも飲んでいてくださいよ。

こんな虫ケラ、俺一人で十分ですから。」


「ふ、ふん!いいだろう、お手並み拝見といこうじゃないか。」


まぐ郎は、ゴロンと横になり、まぐ次郎の戦いを見た。


まぐ次郎は、翔と茂を挑発するかのように、


「ほら、どうした、かかってこいよ、お前ら伝説の戦士なんだろ?俺を3枚におろしてみろよ。」


「くそ、言いたい放題言いやがって!

望み通り3枚におろして、寿司ネタにして食ってやる! うおおおお~!!」


茂がまぐ次郎に向かって、突っ込んで行った。


「ガキン!ガキン!!」


茂のシャケメランが、まぐ次郎の体にヒットするが、傷ひとつ付かなかった。さらに、まぐ次郎のヒレは鋭い刃物のようななっており、シャケメランを身体で受けながら、ヒレで攻撃してきた。


「うわあぁぁぁぁぁ~!!」


茂は攻撃をまともに受け、後ろにふっ飛んだ。


「茂!!!!」


風見が叫ぶと同時に、まぐ次郎が、


「テールブーメラン!!」


背中に付けていた自分の尻尾を茂に向かって投げつけた。

しかし、尻尾は茂にかすりもせず、違う方向に飛んで行った。


「バーカ、どこに向かって投げてんだよ。」


茂が、ヨロヨロと立ちながら言うと、まぐ次郎は、


「ふん!言ったろ、俺はお前ら2人を相手にすると!」


投げた尻尾は、茂にではなく、風見に向かって飛んで行っていた。


「くっ!!」


不意をつかれた風見は、防御する暇もなく、ギリギリでかわすのが、精一杯だった。


その光景を見た茂は、「ふ~」っと胸を撫で下ろし、


「へっ、どうだ!そんなに簡単にやられる俺達じゃないぜ!」


茂が、まぐ次郎の方を向いた瞬間、


『危ない!!』

「茂!!避けろ!!!」


後ろから、トーカと風見が叫んだ。


風見をめがけて投げた「テールブーメラン」は、大きな弧を描き、茂の背中に向かっていたのである。

茂が2人の叫びに気付き振り向いた瞬間、


「ズバァー!!」


テールブーメランは茂の背中を大きく切り裂き、茂はまぐ次郎の足元まで吹っ飛んだ。


「茂!!!!!!!!」

『茂~!!!!!!』


まぐ次郎は、戻って来たテールブーメランを手に取ると、大きく振り上げ、


「まずは、ひと~り。」


茂めがけて、降り下ろした。




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