第11話



第11話〔四つ巴の戦い?1番強いのは!?〕



「俺の名前は、冷凍怪人「マグロン」様だ!


「あれは?」

「マグロ?」

『冷凍マグロだな…』


風見と茂は、棒立ちのままマグロンを見た。


「な、なんだ!お前らのそのリアクションは!?

ハハ~ン、ビビって声も出ないってやつだな!」


「いや…何と言うか…その…」


風見が返事に困っていると、


「ダサい!!!!!」


憂樹が大声で叫んだ。そして続けざまに、


「やっとラスボスが出てきたのは認めるわ、もう、飽きて帰ろうかと思ってたから、でもね~、その格好もうちょっとどうにかならなかったの?

まんま、冷凍マグロそのものじゃない!どっかのテレビ局から借りて来たんだろうけど、マグロに手足が生えてるだけで、ハッキリ言ってキモいわ!手足だって人間の手足みたいじゃん。ヒレが進化したとかならわかるけど、5本指はないわ~…ないない!

で?名前が子供ウケするように可愛く「マグロン」て!ギャップ萌えを狙ったのかどうかわからないけど、主催者側の悪意さえ感じるわよ!

だいたい、どこ見て喋ってるの?真上向いてるじゃない!しかも目が両端って!ちゃんと風見達、見えてる?ねえ!見えてる?今、あたしと目が合ってるよね!

どう見てもマグロの着ぐるみを被った、二足歩行のただのマグロじゃん。

しかも自分で「様」って、可愛く行くのか、ワイルドで行くのか、方向性も決まってないじゃない!これだけ派手にお金掛けてボスキャラがこれじゃあね~、

ね~風見~!茂君~!まだ終わらないの~?店もほとんど閉まっちゃうし、マグロ見てたら「お寿司」が食べたくなってきた~!」


すると、マグロンが憂樹を指差し、


「おい!あの女はなんだ!人の事、あれやこれや言いたい放題言いやがって!

名前だって、俺が決めたんじゃない!勝手につけられたんだ。この姿だって、たまたま…くそ!!

ふん!まあいい、今日の所はこれで退いてやる。目的も達成したことだしな。」


「な、なんだと!?」


「出店がここだけと思うか?お前達が戦ってる間、他の店からもちゃんと奪いとっているんだよ。それにお前らじゃ、俺様には勝てない!今度会うときまで生かしておいてやる。」


すると茂が、


「この野郎!言わせておけばぺらぺらと!俺が、お前みたいなマグロに勝てないだと!?

このサンマーンで三枚におろしてやる。」


茂はサンマーンを振りかざしマグロンに斬りかかった。


「おりゃ~~!!」


パッキッ~ン!!!!


サンマーンの刃がマグロンに触れたと同時に、サンマーンが真っ二つに折れ、回転しながら清美達に向かって飛んで行った。


「キャ~!!!」


「危ない!!!!!!」


風見が一瞬で清美の前に立ち塞がり、飛んできた剣を掴んだ。


するとマグロンは、


「ん?今、なにかしたのか?俺様の体は絶対零度で急速冷凍されてある。

そんな柔い冷凍じゃキズひとつ付かないぜ。ハハハハハハハ!」


すると、憂樹も、


「おお~、これって観客参加型ヒーローショーなんだ。」


「くそ!サンマーンが、まったく通用しないとなると、このママカリソードもダメかもな…」


清美を助け、友生達の前に仁王立ちをし、マグロンを睨みながら、風見は呟いた。

すると、マグロンが、風見達を睨み付け、


「どうだ、これでわかっただろう!お前らに俺様は倒せない!俺様を倒せるのは、俺様ぐらいなもんだ!

俺様も女、子供の前で、正義の味方をいたぶる趣味はないんでな。

ただし、これ以上邪魔をするなら容赦はしない!覚悟しておくんだな!

おい!行くぞ!!」


風見はトーカにマグロンを倒す方法はないかを聞いた。


「トーカ…マグロンを倒す方法はないのか?」


『今の武器ではアイツを倒せない…今回は退いた方がいいと思う、こっちには彼女達もいるからね、しかし、絶対奴らはまた現れる、その時が勝負だ!』


マグロンが、戦闘員を引き連れ去ろうとすると、またも憂樹が叫んだ。


「ねえ!あんたがやられてないって事は、続きがあるの~!?エピソード2ってやつ~!?次も絶対来るからね~!

それにあんた、けっこう男気があるんじゃん!やっぱり名前変えた方がいいって!

ん~…やっぱり日本男児的な名前がいいな、例えば「まぐ郎」とか!

うん!これいい!!あんた、次から「まぐ郎」にしなよ。

これだと兄弟を作っても「まぐ次郎」とか「まぐ三郎」とか名前を考えなくていいじゃん!」


それを聞いたマグロンは、


「フッ、「まぐ郎」か…考えとくよ…」


そう言いながら、闇の中に消えて行った。

憂樹はマグロンが消えた闇に向かって、


「きっとだよ!ちゃんと進化して帰って来いよ~!!」


手を振りながら、大声で叫んだ。

そして、マグロンに続いて歩いていた戦闘員に声をかけた。


「ご苦労様。凄い迫力だったよ。これ、よかったから持って帰って、美味しいんだよ。


憂樹は、落ちていた牛串の袋をポンポンとはたき、戦闘員に手渡した。

戦闘員は、戸惑いをみせたが、憂樹の笑顔に素直に受け取り、闇に消えた。


そこへ、変身ベルトを取り、生身の体に戻った茂が、駆け寄って来た。


「おい、大丈夫だったか?」


茂は1番に、友生に声をかけた。


「うん、大丈夫、大丈夫。でも、2人とも変身するなんてビックリしたよ!」


さらに目の前で変身を解いた風見が、清美に声をかけた。


「ケガはないか?委員長。」


「風見くん…これってどうゆう……私は大丈夫だけど、香が…」


清美は風見に詰め寄って、話を聞こうとした。すると友生が、


「あ、香ちゃんなら大丈夫だよ。ちょっと擦りむいただけみたいだったし、ちゃんと綺麗にしてカットバン貼ったから。もう痛くないよね、香ちゃん。」


友生が香の頭を撫でなから言うと、香は小さな声で、


「うん、ありがとう、お姉ちゃん。」


少し照れながら言った。

そして、清美も、


「ありがとう、上地さん、助かったわ。いつもカットバンとか持ってるの?」


すると友生は、


「カットバンだけじゃないよ、憂樹と一緒に出かける時は、一通りの薬を持ち歩くんだ。」


そう言うと、ポーチの中からいろんな薬を取り出した。


「これが、転んでケガした時のカットバンでしょ、これが、食べ過ぎた時の胃腸薬、これが変な物を食べてお腹壊した時の正露丸。あと、頭痛薬とか…」


「もう、いい、もう、いい、わかった。わかった。」


風見が話を止めた。すると憂樹が、


「友生は、あたしの主治医なのだ!」


ア然とする一同をよそに、茂が、


「おい、ジョーカー、ちゃんと紹介してくれよ。 」


「ああ、そうだったな、ていうか、お前ら知りあいだったのか?」


友生や憂樹と話をしてる茂に聞いた。


「あ、ああ、さっきちょこっとな。」


すると憂樹が、


「そうなの、凄いメガネが一緒でね、風見の事も知ってるって言うから、でね、こう見えて結構いいところあるんだよ、絡まれてるあたし達を助けてくれたんだ。」


「うんうん、わかった、お前はちょっと黙っとけ。」


風見が憂樹の口を指で押さえた。

そして、茂の紹介を始めた。


「こいつは、草木 茂、幼稚園からの幼馴染みなんだ、あと、草村の従弟な。で、こっちに居るのが高校の同級生だ。

この2人はもう知ってるみたいだな、上地友生と神成憂樹、で、こっちが委員長こと水川清美、その隣が妹の香ちゃん。

ところで、なんでお前がここに居るんだ、人混みは苦手じゃなかったっけ?しかも変身するし。」


風見は「変身」の所だけ茂の耳元でささやいた。


「ああ、育のヤツにな、牛串を買ってきてくれって頼まれて。

でここに来たら、お前が戦ってるだろ、面白そうだから突っ込んだ。」


それを聞いた憂樹が、


「そうそう、ビックリしたわよ、いきなり茂君がヒーローショーに飛び入り参加するし、と、思ったら、ヒーロー役だったし、ていうか、風見、いつからこんなアルバイトしてたの?主役だから、バイト料いいんでしょ、今度おごりなさいよ。」


すると茂が、


「憂樹ちゃんも凄かったよ、ボスキャラと対等に張り合ってたじゃん。」


すると風見が思い出したように、


「そうだ、神成!「まぐ郎」ってなんだよ、本当に進化して、あんなのが何人も出てきたらどうすんだよ!」


「大丈夫だって!ヒーローショーはヒーローが勝つに決まってんだから。そうなんでしょ?」


すると茂が風見の肩を抱き、


「そうそう、今度こそ俺とジョーカーでぶっ飛ばしてやるって!」


すると清美が、


「ねえ?風見くん、ジョーカーって?」


同じく友生も、


「あ!それボクも気になってた、茂君が翔君の事、ジョーカーって呼んでるの。」


すると茂が風見を見ながら、


「え!?みんな知らないの?ジョーカーって言うのは、小学生の時のあだ名なんだ、こいつは…」


「あ~っと!昔話はあとでゆっくりとしよう。ほら草村も待ってるからな、まあ、この状況じゃ牛串は買えないけど仕方ないよな。警察も来てるし…」


風見は茂の話を遮り、帰ろうとした。すると清美が、


「あの…これ…よかったら持って行って。」


そう言いながら風見に買ってもらった牛串の袋を差し出した。


「え!?でも委員長…これ…」


風見はあの時の言葉を思い出していた。


「これは風見くんに初めて買ってもらった物だから、絶対渡さない!!!」


「いいのか?委員長?」


「うん、でもみんなの分はないけど、いいのかな?」


すると憂樹が、


「いいって、いいって、また風見に何か作ってもらえばいいんだから。」


すると清美は心の中で、


「え?風見くんの手づくりご飯!?」


「まあ、俺はいいけど、委員長は家に帰らないといけないだろ。」


すると清美はモジモジしながら、


「わ、私は別に…今日から家族で親戚の家に行く事になってて、両親はもう行ってるから、後で合流する事になってるんだけど、草村さんの家なら、泊まってもいいんじゃないかなぁ~って思う…」


「香ちゃんはどうするの?」


友生が清美に聞いた。


「う…ん、香だけ親戚のところに預けようかと…」


「ダメダメ、香ちゃんも一緒に行こうよ、ボクが一緒にいるからさ。」


「香がいいなら…」


友生は香の前に行き、


「香ちゃん、お姉ちゃんと一緒に寝ようか。」


すると香はチラッて清美を見て、清美がうなずくのを確認し、友生の手を握り、小さくうなづいた。


「え~!?あたしが友生と寝ようと思ったのに~!ぶ~ぶ~」


憂樹が、ぶ~ぶ~言った 。


「まあ、とりあえず草村の家に行くか、何か食べたいものがあったら言えよ、途中で食材を買って行くから。」


すると憂樹が、


「あたし!スパゲッティー!」


「お前、季節も何も関係ないんだな…」


「ボク、さっきの見てたらママカリが食べたくなったよ。」


友生が風見を見つめながら言うと、


「お~、さすが友生、俺も食べたいと思っていたんだ。」


「私はなんでも… あ、それから帰って着替え取ってこなくちゃ。」


清美が小さな声で言った。


「ジョーカー、ついて行ってやれよ。俺たち先に行ってるからさ。」


「あ、ああ、わかった…後で合流する。」


清美は風見が家まで来ることが、嬉しいやら恥ずかしいやらで、ドキドキしていた。


「よし、決まり!飲み物も買って行こうぜ!」


茂が先頭に立って歩き出した。


「でな、でな、こいつのあだ名がな……」


「だから、言うなって…」



そして、風見達がしゃべりながら帰っていたその頃、愚蓮人の秘密基地では、風見の予感通り、マグロンが更なる進化を遂げてる真っ最中であった。





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