第10話
第10話〔ご当地アイテム、ママカリソード〕
「よし!じゃあ、やっちまうか!!」
背中合わせになった2人は、お互い真正面の戦闘員に向かって、突っ込んだ。
「うおおおおおお~!!」
「おりゃ~~~!!」
2人は次々と戦闘員をなぎ倒して行った。
しかし、減るどころか、少しずつ増えていった。そして戦闘員に囲まれ、再び背中合わせになった。
風見はひと息ついて、
「ふ~…まったくキリがないな。」
「ああ、どこから湧いて来るんだ?コイツら。」
「おい、トーカ、何か武器は無いのか?素手じゃラチが開かね~よ。」
『もちろんあるよ。ただ、何が出てくるかわからないんだけどね。』
「なんだそりゃ?まあ、ないよりマシか、で?どうすればいいんだ?」
『ベルトのユニットが扉になってるだろ、中に「お団子」があるから、それを空高く投げながらお願いするんだ。』
「お団子?お願い??なんかテレビのヒーローと違うな…」
『つべこべ言うな!武器が欲しいんだろ?
君達は、この世界にある食材達に生かされているんだから、その食材達に「お供え」をして、少しだけ力を分けてもらうんだ。
地域によってご当地食材があるように、食材によって武器が違うから、お願いしてみないと、どんな食材が、どんな武器になるのかは、やってみないとわからないんだよ。』
「わかった、とりあえずやってみる。」
『僕の言う通りに言って。
ご当地の食材達よ!』
「ご当地の食材達よ!」
『少しだけ、力を別けておくれ!』
「少しだけ、力を別けておくれ!」
『よし!今だ!お団子を空に投げろ!!』
風見は、空高く「お団子」を投げた。
空に舞ったお団子が輝きを放ち、近くの魚屋に飛び込んだ。すると、魚屋全体が光ったかと思うと、1匹の魚が、風見の手に飛び込んで来た。
「これは…ママカリか?」
風見には馴染みの魚だった。よく釣ってきては「南蛮漬け」にして食べていた魚だ。
「これが武器!?」
不思議そうにママカリを見つめていると、魚屋から新たに数十匹のママカリが飛んできた。
そして、飛んできたママカリが1匹目のママカリの尻尾にかじりついた。続けて飛んできたママカリが次々と尻尾にかじりつき、やがて立派な1本の剣になった。
『翔!これが〔ママカリソード〕だ!』
「剣か、なかなかいいじゃん。へへ、まさかママカリと一緒に戦う事になるとはな。なんか嬉しいぜ!」
その光景を羨ましく見ていた男が、すぐ後ろに居た。
「お、おい、育!俺にも武器をくれ!」
すると草村は、
「知らね~よ、武器の出し方なんて、とりあえず、また真似をしたらいいんじゃね?
風見はベルトから丸い物を出してたぞ、お前も何か入ってないか?」
茂はベルトを開けてみた、すると「冷凍団子」が入っていた。
「お!なんか入ってる!これを投げたらいいのか?」
茂は、冷凍団子を手に取り、空高く投げた。
「ご当地の食材よ、俺に力を別けておくれ!!」
すると冷凍団子は風見の時と同じ魚屋に飛び込んで行った。
そして、同じように光ったかと思うと、1本の光の矢が茂の足元に突き刺さった。
「うおっ!あぶね~!!」
茂は、思わず後退りした。よく見ると、大きな冷凍サンマのような険が突き刺さっていた。
『それは、冷凍ソードサンマーンだな。』
トーカが武器の名前を茂に教えた。
「まあ、無いよりマシか。」
茂は剣を手に取り構えた。それを見た風見は、
「お!?お前も武器があったのか!じゃあ、今度こそ終わらせて帰るぞ!
行くぞ!!レディ~GO!!!」
『あ!ダメだ!翔!!』
トーカが風見を止めようとしたが、間に合わなかった。
風見が剣と思い、降り下ろした武器は、いつの間にか「ヌンチャク」に変わっており、真ん中で折れ曲がり、自分の頭に当たった。
「痛て!?なんだこりゃ?!??」
『ママカリソードは変形タイプの武器なんだ。
「ヌンチャク」タイプの「剛」(ゴウ)
「ソード」タイプの「剣」(ツルギ)
「ムチ」タイプの「柔」(ジュウ)
「棍棒」タイプの「剛棍」(ゴウコン)
あと「柔」と「剛」(ジュウゴウ)で「三節棍」にもなるんだ。
それから、これだけは忘れないでくれ、ママカリソードが使えるのはママカリが住んでる近辺だけだ、つまり、瀬戸内海から離れてしまうと、ママカリソードは使えないからな、気を付けて欲しい。』
「よし!わかったぜ!とりあえず、ソードに戻すか、ツルギ!!」
すると深く噛みついていた両端のママカリは元の位置に戻り「ママカリソード」になった。
そして風見は、ママカリソードのいろんなバージョンを試すかのように、時には「棍棒」、またある時は、「ムチ」を使い、すべてのバージョンで戦った。
そして、またしても、その姿を羨ましく見てる男が居た。
「おい、育!俺のサンマーンも変形とかしないのか?」
「だから、知らないって言ってるだろ!トーカに聞いてみろ。」
茂は風見の背後に飛び移り、
「トーカさ~ん、俺のサンマーンは変形とかしないのかな~?」
やんわりと聞いてみた。
すると、トーカが
『サンマーンは冷凍アイテムだから、固くて変形しないよ。』
トーカの言葉にガッカリしたが、それと同時に苛立ちが起こった。
「同じヒーローなのに、なんであいつだけカッコイイんだ。」
そして、その苛立ちは戦闘員達に向けられた。
「邪魔だ~!!どけ~!!!」
その威力は凄まじく、ひと振りで何十人もの戦闘員が吹き飛んだ。
その光景を見た風見は、
「サンマーンの威力は凄いな。」
『いや、サンマーン自体は大した武器じゃない、茂の実力が凄いんだ。』
「なんにせよ、この調子なら、あと数分もしないうちに終わらせられるな。」
風見の言う通り、1分もしないうちに、戦闘員はたった数人になった。
そして、2人並び武器を構えると、
「あとはお前達だけだ!覚悟しろ!」
「今日のサンマーンは機嫌が悪い…触るとケガするぜ。」
2人が戦闘員に向かって走り出そうとすると、トーカが何かに気が付いた。
『ちょっと待て、翔!あいつらの後ろに、何か居る!』
2人は足を止め、再び武器を構えた。
たしかに、戦闘員の後ろには、戦闘員と違うシルエットの大きな何かが居た。
そして、そのシルエットは戦闘員を押し退け、一番前に出てきた。
「まさか、本当に伝説の赤の戦士が居たとはな。
俺の名前は、冷凍怪人「マグロン様」だ!」
「あれは?」
「マグロ?」
『冷凍マグロだな…』
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