異世界の狭間~ラッキーゾーン~

――き~! たつき~!


(……ここは……真っ暗だ……そうか……俺は死んだのか……って転生はどうなったんだ……)


――たつき~! たつき~!


(ん? 誰かの声が聞こえる……)


――たつき~! たつき~!


(なんか呼ばれてるけど、イントネーションがどこぞの仏みたいだ……)


――仏ではない! 私は異世界の神ラキだ!


(……ラッキー?)


――ラッキーじゃねぇよ! ラキだ! 異世界の神ラキ!


(異世界の神ラッキー……)


――ラキだっつってんの! 茶柱突き刺すぞ!


(!? 俺の心の声が聞こえてる!? 脳内に直接話しかけられてる……誰だ!)


――聞こえてるよ! もう死んでるから心の声とかそういうんじゃないんだけどね。


(あんた誰だ!)


――ってだから異世界の神……まあ、初めてのことだし、状況がよく掴めてないんだろうから仕方ない……改めて紹介させてもらおう。


――コホンっ……わた…私は……ちょっと待って! なんか改まるとちょっと緊張しちゃう……


(なんなんだこいつは……)


――おいお前! 聞こえてんだぞ! こいつとは何だ! 神に向かって! お前ほんと……まあいい……


――コホン……私は新……ちがっ……異世界の神ラキだ!


(異世界の神!? ラッキー!?)


――だからラッキーじゃねえっつぅの!


(異世界の神ラッキーよ! 俺をおもっきりチートな強キャラにして美少女にモテモテでハーレム作れる異世界に転生させてくれるんでしょ!? それだったらさ、こんなとこもういいから早く行かせろ!)


――うーん、やっぱお前あれだわ……人の話聞かないし、なんか偉そうだしダメだわ……


(サッサと行かせろ~! 早く行かせろ~! シバくぞ!)


――え~、ちょっと待ってちょっと待って~……君なんで神に向かってそんなこと言えるの~……も~、ちょっとこのお兄さん怖いよ~……


(あ、すんません……最後の言葉は無かったことに……なんかリズム的につい出ちゃって……)


――いや……最後の言葉だけじゃなくて……ちょっともう疲れたからさ~……いつものとこさっさと行ってもらうわ……自殺なのにせっかく異世界の狭間ってラッキーゾーンに入ったのにねえ……


(ん? 今ラッキーって……やっぱりラッキーって名前なんじゃないの!?)


――はいはい……もう、君は異世界の事が気になって気になってしょうがないんでしょ?


(はい! 気になります! いや~そりゃ気になるでしょ~、どんな世界か気になる気になる気……)


――はい、じゃあドーーーーーン!!

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