エピローグ
122
―二千十七年五月二十日―
―ホワイトメイディ王国 地下牢―
投獄され、幾日もの夜を明かした。
「タカ、脱獄しない?」
想定外の提案をしたのは、セガではなくナギだった。
「脱獄って、どうやんだよ。檻には鍵が掛かってるし、あの高窓は小さすぎて昆虫にでもならない限り柵を通り抜けるのは無理だ」
「わかってるよ。昆虫になればいいんだよね?」
セガは小バカにしたように笑った。
「魔術師じゃあるまいし、どうやって昆虫になるんだよ」
ナギはニコニコしている。
余裕の笑みだ。
「僕はエルフだよ。エルフには生まれつき魔力が備わっている。忘れたの?」
「ナギはエルフの落ちこぼれだと思ってた」
「それは能力を隠していただけ。魔力を使って何かを成し遂げても嬉しくないし、私利私欲のために魔力を使うことは、エルフの世界では禁じられているから控えてたんだ。でももう我慢できない」
「……ナギ、マジで俺達脱獄できるのか?」
「試してみる?」
ナギが「フーッ」と掌に息を吹き付けると、虹色のスティックが現れた。そのスティックを一振りすると、セガは一瞬でカマキリに変わる。
『すげぇ!?これなら脱獄出来るぞ!でも!みんなが脱獄したら、また追っ手が……』
「わかってる。タカとセガは地球に行っていいよ。僕はここに残る」
『そんなことをしたら、全責任を負わされ処刑されるかもしれないぞ!』
「僕はエルフ王の王子だよ。国王陛下が僕を処刑なんて出来ないよ。そんなことをすれば、エルフ王の怒りを買い、人族なんて魔力でひとたまりもない。破滅するだけだ。僕が投獄されていることは、エルフ王も知らないはずだよ」
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