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ねぇ矢吹君、今、どこにいるの?
矢吹君……元気なんだよね。
全然、連絡くれないから心配したんだよ。
矢吹君から、初めて貰った誕生日プレゼント。
やっぱり嬉しい。
メッセージカードを探したけど、袋の中には何も入っていない。
でも……そんな所も……
矢吹君らしいな。
私の誕生日、どうして知ってるんだろう。私の友達から聞いたのかな。
すごく……懐かしくて……
すごく……嬉しくて……
ちょっと泣きそうだった。
このウルフの名前、決定しました。
【たかしくん】です!
うふ、まんまだよ。
そして、恵太からのプレゼント。
袋を振るとカラカラ音がする。
なんだろう?
超、楽しみ!
「な……なんだコレ?たこやきの……?ストラップ?」
恵太……?
趣味悪すぎだよ!
さすがに、携帯電話にも通勤バッグにもムリ!
私のこと、まだ幼稚園児だと思ってるの?
二十三歳のバースデープレゼントだよ。
ウケ狙わないでよね。
ストラップを指にぶら下げ、思わず苦笑い。恵太のプレゼントには、メッセージカードがついていた。
【優香、誕生日おめでとう!またいつか、優香に逢いにいに行くよ。俺、大阪に引っ越してよくわかったんだ。優香のことが、大、大、大好きだってこと。
毎日、優香のことばかり考えてる。そのストラップは俺とお揃いだからな。恵太】
あはっ……はっ……。
まさかの、お揃い?
マジですか?恵太さん?
さすがに……ださいよ。
仕方がない。
ウルフの【たかしくん】の手に、たこ焼きのストラップをぶら下げる。
やっぱり矢吹君が大好き。
ごめんね……恵太。
好きの種類が、ちょっとだけ違うんだ。
一緒にいると、心臓が口から飛び出しそうなくらい、ドキドキする矢吹君。
そして……
一緒にいると、気持ちが安らぎホッとできる恵太。
私の一番は……
どっちなんだろう。
二十三歳になった私。
いつまで経っても、子供染みている私。
誕生日プレゼントを見れば、わかるけど。二人とも私のことを、完全に子供扱いしている。
来月から、こんな私も社会人だ。
もっと素敵な女性になって、また二人に逢いたい。
そして……
もう一匹、いや、もう一人忘れてはならない人が……。
「かめなしさん」
「ミャア〜ァン」
かめなしさんは甘えた声で、ドアの隙間から顔を出した。
「さっきはごめんね。おいで」
かめなしさんが私の膝の上に、ピョンって飛び乗った。長い尻尾が左右にユラユラ揺れている。
「ミャ〜ァ〜ァン」
鼻に掛かった甘い声で、私の顔に擦り寄りペロペロと唇を舐める。これが人間なら、キスの嵐だよね。
「やだ、くすぐったいよ」
――『優香、俺に夢中にさせてやるよ』
「……えっ?」
ふと、懐かしい声が聞こえた気がした。
かめなしさんと視線が重なり、かめなしさんがニヤリと笑ったように見えた。
――ま、ま、まさか……ね!?
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