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――トラックが発車した……。
恵太の乗ったタクシーもゆっくりと発進する。男子がタクシーを追い掛けた。
恵太の乗ったタクシーが……
だんだん……だんだん……
小さくなって行くよ。
手を振っている恵太が……
だんだん……だんだん……
小さくなって行くよ……。
――私の目に……
涙が浮かんだ……。
その涙は……
ポロポロとこぼれ落ちる。
――恵太……
また逢おうね。
恵太……
今まで……
ありがとう。
――恵太
大好きだよ。
「ニャ~」
かめなしさんがそっと私に近付き、足をチョンチョンと触る。
抱き上げると、私の涙をペロペロと舐めた。
「……やだ。くすぐったいよ」
かめなしさんは止めることなく、ずっと涙を舐め続けている。
優しいね。
かめなしさん。
大切な人を二人も失ってしまったけれど、かめなしさんが傍にいてくれたら、頑張れる気がする。
私、少しは成長出来たかな。
◇
―二千十七年五月八日―
嬉しい知らせが届いた。
今まで何十社も受けて惨敗記録を更新し続けていた私が、ついに内定を貰ったのだ!
これもかめなしさんのお蔭だよ。
私がこの職種を選んだのは、かめなしさんとの不思議な体験をしたから。
あの体験がなかったら、この職業を選択することはなかっただろう。
―五月二十五日―
私の手元には三つの誕生日プレゼントが届いた。
ひとつは大阪から。
もうひとつは……名前は書かれているが、住所は書かれていない。
そして……もうひとつは、かめなしさんだよね。
「きゃああ-!かめなしさん!ヤモリの死骸を机の上に置かないでって、何度も言ってるでしょう」
「ニャ~」
かめなしさんはどや顔で『ふふん』と笑っているようにも見える。
「わかったよ。これは私への誕生日プレゼントなのね?でも、ヤモリはいらないから。気持ちだけ貰っとくよ」
かめなしさんはヤモリの死骸を咥え、恨めしそうに私をチラ見し、部屋を出て行く。
かめなしさんと直接話が出来ないのは、本当に不便だ。テレパシーでいいから、会話が出来たらいいのに。
机の上を綺麗に拭き、二つのプレゼントと睨めっこする。
どっちを先に開けようかな。
迷う、迷う。
でも、ごめんね、恵太。
やっぱり矢吹君のプレゼントから、開けちゃうんだ。
矢吹君のプレゼントは、ウルフのぬいぐるみ。どうしてウルフなんだろう。でも、ちょっと矢吹君に似ている気もする。
このウルフ……
もしかして……?
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