【8】恋に恋して、愛に愛して? 摩訶不思議。
優香side
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――五月三日。
矢吹君が私の前から姿を消し、その寂しさが癒えないまま数日が経過した。
かめなしさんはいつものように、私の部屋で居眠りしてる。
いいな、猫は気楽で。
生まれ変われるなら、私も猫になりたいな。
猫耳とふわふわの尻尾が生えたら、今より可愛いかも。
鏡の前で、去年ハロウィンで使用した獣耳が付いたカチューシャを頭に付ける。
ていうか……
失恋のダメージが大きすぎて、笑えないよ。
こんな時は、恵太のくだらないオヤジギャグや、恵太のくだらないダジャレを聞いて、気分転換するしかないのかな。
暇人は私と恵太だけなんだから。
窓を開けボーッと空を眺めていたら、家の前で大きな声がした。
「優香!大変だよ!大変だよ!」
「美子、あれ?今日は水曜日だよ。銀行じゃないの?」
「何寝惚けてるの!今日は祝日だよ!」
「あっ、そっか。毎日祝日だから、わかんなかった」
「もう、優香は呑気なんだから!」
呑気じゃないよ。
あれから二つ採用試験受けたけど、撃沈したんだから。
残るは、あと一つ。
それに落ちたら、地方で就活しようかなと、本気で考えてる。
都内で内定もらえる気がしないから。
「美子、上がって」
「うん。お邪魔します!」
美子はドタドタと二階に駆け上がり、息を切らしている。冷静な美子がこんなに取り乱すなんて、よほどの大事件だ。
「どうしたの?美子?草野君と喧嘩したの?草野君に浮気されたとか?」
「違うよ!優香、知らないの?それとも、知ってて教えてくれなかったの?」
「一体何のこと?」
「もう、焦れったいな。恵太が引っ越すんだよ」
「……えっ?恵太が?やだ、あはは、美子冗談止めてよ。そんなこと恵太から一言も聞いてないし。恵太のおばさんもママも……」
「家のママも知らなかったんだよ。おばさん、恵太から口止めされてたらしいの」
「……嘘だよ」
「恵太の家に一緒に行こう。私、一人じゃ行きづらくて……」
「……う、うん!」
私は美子と二人で家を飛び出す。
バッチリメイクで大人っぽい黒ワンピを着ている美子とは異なり、私の髪はボサボサで、ピンクのスウェットの上下にキャラクターのサンダルだ。
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