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「無礼を働いたのは、国王陛下の方だ。地球にエルフの魔術師を送り込み、ナイトやナギに魔術をかけた。本当に申し訳ない」


 俺はカメナシに頭を下げる。

 カメナシが檻に近付き、隙間から指を入れ俺の頭に触れた。子供の頃、悪戯が過ぎるとカメナシに叱られたものだ。


「タカ王子、頭を上げて下さい。ナイトはタカ王子の執事でありながら、地球に転移することを止めることが出来なかった。これでは執事とは言えません。ナイトのせいで、タカ王子やセガ公子、ナギ王子をこのような場所に追いやるはめになるとは、どんなにお詫びをしても許されることではありません。私どもを処罰して下さい」


 深々と頭を下げるカメナシに、警察官が声を掛ける。


「カメナシさん、あなたを処罰することなど出来ません。さあ、国王陛下とギダ殿下がお待ちです」


「……はい。タカ王子をここから出して頂けるように、国王陛下にお願いして参ります。いま暫くお待ち下さい」


 警察官とカメナシ一族は地下牢を出て行く。セガはそれを見ながら、悔しそうに柵を蹴り飛ばす。


「……くそっ、何で俺達が地下牢に閉じ込められなきゃなんないんだよ」


「セガ、苛々してもどうにもならないよ」


「そうだよ、セガ。タカの言うとおりだ。地下牢なんて、初めてだよ。ジメジメして居心地は悪いけど、僕達は一人じゃない。あああ~!ほら、声が反響してまるでエコーが掛かってるみたいだよ」


 ナギは呑気に俺達の歌を口ずさむ。


「ほら、一緒に歌おうよ!タカ、セガ!」


「ナギは能天気でいいな。タカ、辛気臭いから、歌うか」


 セガはナギの歌にハモる。

 地下牢の上部には小さな窓があり、そこから微かに地上の光が差し込んでいる。


 薄暗い地下牢の中にこぼれ落ちる僅かな光が、まるでスポットライトのように俺達を照らす。


 この歌声が、地球に届くはずはないのに……


俺達は夢中で歌い続けた……。









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