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「九人も王女がいるのなら好都合だ。国王陛下、如何ですか?地球に転移させるくらいなら、エルフ王の王女と結婚させればよいではありませんか」


「ふむ。そうではあるが……」


 俺を差し置いて、ギダ殿下と国王が勝手に結婚相手を決めている。しかも、エルフの王女なら誰でもいいとは失礼極まりない。


「政略結婚は断る。俺は王位継承権を放棄する。地球に転移し、もうこの王国には戻らない」


「タカ王子、それはならぬ。万が一、ギダ殿下に何かあらば、そなたは王位継承者となるのだ」


「国王陛下、ギダ殿下はピンピンしてるよ。そんな心配は無用だ。俺を引き止めても無駄だから。俺は地球に好きな人がいるんだ。彼女以外、好きにはならない」


「地球人を好きになったと申すのか」


「地球人は俺達と同じ人間だ。俺達が戻るべき場所は、地球なんだ。国王陛下だって本当はわかってるんだろう。王家だと威張ってはいるが、先祖のヤブキは平民だったのだから」


「無礼者!少し頭を冷すがよい!タカ王子を捕らえ地下牢に投獄せよ!セガ公子も、ナギ王子もだ!」


 俺達は国家警察官に捕らわれ、ホワイトメイディ城の地下牢に投獄された。セガは柵を掴み叫び声を上げている。


「何すんだよ!国家警察が王族にこんなことをしてもいいと思ってんのか!」


 地下牢は幾つかの小部屋に仕切られている。警察官は地下牢の複数のドアを開けた。


「国王陛下のお許しが出た。牢から出られよ」


「国王陛下のお許しが?」


 地下牢からゾロゾロと足音がする。

 解放されたのは、捕らわれていたアリシアの両親とカメナシ一族だった。


「どうして解放されるのですか?ナイトの無罪が証明されたのですか?」


「そうではない。ギダ殿下がそなたの子女アリシア様とのご成婚を、国王陛下に宣言されたのです」


「……アリシアが、ギダ殿下と!?アリシアが投獄を免れたのは、ギダ殿下の専属メイドという理由ではなかったのか」


「ギダ殿下より、今後のことについてお話しがあるそうです」


 ナイトの父、ジャンの猫耳がピクピクと動き、俺達がいる牢に視線を向けた。


「……こ、これはタカ王子、どうして牢に……。セガ公子もナギ王子も何故このようなところに……。王族の方々をこのような目に合わせてしまうとは、全てナイトの責任です。ナイトはまだ……逃亡しているのですか」


「カメナシ、ナイトに責任はないんだ。俺達がみんなで地球に行くと決めたのだから。ナイトはまだ帰還していないが、元気にしているから心配するな」


「申し訳ございません。ナイトがタカ王子にご無礼を働いたのではございませぬか」



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